第8話・事情Description!

「私、澤田由美。君は?」




「俺は風見明。よろしく。」




 遅まきながら自己紹介。相手に名乗らせる前にまず自分から名乗るとはこの女子、意外と礼儀正しい。見た目で人を判断して正直すまんかった。




「で、風見君はどうして変身できるの?こないだ来たあいつらは何?それからっ」




 うん、分かる。知りたいよね、事情。分かる。




 まくしたてようとする澤田さんを手で制し、俺は事情を説明する。




 俺の人格は19年後の未来からやって来たという事。


 その未来では先日現れたエクスキューショナーズによって人類が悲惨な目に遭っているという事。


 そして未来ではもう逆転の目が無い事。


 だから俺が過去へとやってきてまだ力の強くないエクスキューショナーズを叩こうとしている事。




 説明できる事は全て説明することにした。別に全部言わなくたって良かったのかもしれないが、知っておいても別にいいだろう。それにその未来が彼女の身に降りかかることは無い。




「え、怖。未来やばいじゃん。皆死んじゃうの?」




 あぁしまった、不必要に怖がらせてしまった。どうもいけないな、かいつまんで話せばよかった。彼女にとってはまだ来ていない未来だし、俺が阻止する未来でもある。確約は無いけど。




「いや、その心配はないよ。澤田さんだって俺が怪人を倒す所を見ただろ?今のエクスキューショナーズは俺の敵じゃない。今の内に倒してしまいさえすれば、未来は安心なんだよ。」




 一先ず耳触りのいい言葉で濁しておく。いやまぁ有言実行しますけどね?




「え、ていうかさぁ。19年後の未来から来たって言ったよね?今から19年後だから、風見君って実は34歳?え、風見・・・先輩?」




 気持ちは分かるんだけどその理屈はおかしいようなおかしくない様ななんだよなぁ。実際精神年齢は34歳で合ってるんだけど、肉体は15歳の風見明。ついでに言うと同じく年を取っていれば澤田さんも19年後には34歳で俺と同い年な訳で。でも今は15歳な訳で。




「うん、まぁ・・・年の話は止めようか、ややこしいし。」




 精神的には両親の方に年齢が近いが、気にしたら負けだろう。




 傾いた夕陽は時期に沈み夜の帳が下りるだろう。エクスキューショナーズが出なくても夜道は危ない。そろそろ帰った方が無難だな。




「ま、もうそろそろ日も沈むし、今日の所は帰りましょうか。」




「うん、そうだね。また話、聞かせてね。」




 二人で屋上を後にして家路に着く。女子と一緒に夕暮れの道を歩いて帰る、なんて少しロマンチックだなとも思うけど、まさかこんな形で帰る事になるとはなぁ。




 帰りの道すがら、会話の内容は高校生らしい普通の内容だ。


 話を聞くと澤田さんはあまり勉強が好きでない様子。まぁ勉強が好きだと言うのもあまりいないかも知れないけれど。


 試験前にやばかったら少し付き合って勉強を教えるってのもいいかもしれないな。そんな事を考えながら話しながら、平和な帰宅と相成った。




 自宅




 夕飯前には帰る様にしているが、本当はもう少し早く帰って支度も手伝いたい所ではある。しかし放課後はどうしても残っていなくてはならない。難しい所だ。


 一応勉強頑張ってるから許してほしい。




 しかし澤田由美さん、か。正体は一応ばれてしまったが、相手が澤田さんで良かった。


 なんか、好きっぽかったしな、ヒーロー。意外とそう言うのが好きな女子なのかな?男子なら結構いると思うけど、女子でって言うのは珍しいかも知れない。




 しかし、出鼻を挫いたとは言え大人しく引き下がるとは思えない。エクスキューショナーズは遠からずまた何かしでかすはずだ。怪人を強化してくるか、それとも戦闘員を増やしてくるか。いずれにせよ何処かで暴れだすだろう。




 油断はできない。俺が転身した以上、未来の歯車はすでに違う方向に向かっているのだから。そしてそれは良くも、悪くもだ。奴等がどういった動きに出るか、次の襲撃が肝になる。

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