かのじょ

修行中故名無し

かのじょ

「アメってね、カミサマのナミダなんだよ!」

雨音の中に、懐かしい声が響く。

水色の傘を差す、彼女。

表情は見れない。


昔から、僕たちはこの屋上で遊んでいる。

思い入れの深い、特別な場所だ。

雨の日は、ずぶ濡れになるからいつもは来ないが、気がつくと生まれ育った町を見下ろしていた。


雨、強くなってきたな。

神様も、泣きたくなることがあんのか。


僕は神様なんて信じてないし、好きじゃない。

でも、彼女が言う神様だけは信じられる気がしていた。

きっと彼女は、天国に逝けるんだろうな。

僕と違って悪い行いもしてないし。


目を細め、町の細部に視線を落とす。

この17年間の記憶が蘇る。

友達とバカやったり、遅刻しそうになって走ったり。

何より、ここで彼女と町を眺めながら話した事実。

この事実があるからこそ、僕はこの場所が好きだ。


10年前に両親が旅立った病院の屋上だけれど、それ以上に彼女との記憶が強い。

生きる道を示してくれた彼女は、かけがえのない存在であり、唯一の支えだった。



カミサマのナミダを頬に伝わらせながら、目を閉じる。

そして、一歩を踏み出す。

先刻逝った、彼女、に会うために。


神様、彼女にもう一度会わせて。

信じてるから。

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かのじょ 修行中故名無し @uukk9612

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