屋上

屋上

 

 高砂という茶色の髪をした夜未の友人が、中学校の屋上の鍵を持っていて、落ち込んだ彼を誘って最上階にのぼった。高砂がどのようにして鍵を手に入れていたのかは謎であった。鍵穴に鍵を差し込んで屋外に出た彼らは、まちを一望することができた。遠景に臨める動物園に併設する遊園地に、鉛筆タワーと渾名された建物があって、それを視界にぼんやりと留めながら高砂と夜未は欄干に凭れ掛かっていた。

「落ち着いた?」

「なんとも言えないな。」息を吐いた。「いまでもそこにいる気がする。」

「そうか。」

「あいつの笑顔とか、いっしょにいて、愛おしかったことをよく覚えてるよ。」

広く澄んだ空を見上げている。

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