絶対
絶対
下校途中、ポーと夜未が公園を通りかかると、女の子が「かごめかごめ」の状態で他の女子達にいじめられていて、夜未が助けて、慰めた。その水葉という娘は、当時付き合っていた彼とうまくいきすぎていて、クラスメイトから妬まれていたということだった。夜未は「そういうのは恋人同士のあいだだけでやらなきゃね。」と水葉に教えた。
水葉と夜未はよく連れ添って歩いた。校庭に沿って延びて行く並木道だ。その舗道は頻繁にランナーが走って行く通りだったので、水葉が転んだり、走ってくる人達にぶつかったりしないように、彼は車道側をとって歩いた。
街に出掛けることもあった。水葉が服を体にあてがって、夜未は彼女に似合う方を選んであげた。
遊園地でもあそんだ。東京の下町に位置するこぢんまりとしたところである。幼いこどもたちの声が空に響いている。アトラクションに乗るのを待っているあいだにも人びとは会話を楽しんでいた。そんな雰囲気が彼女らは大好きだった。
よく観た映画の内容は、なんでもよかったんだろう。
夏の終わりから、楽しい季節がやって来た。秋が深まるにつれて空は高くなって透きとおってゆくし、冬はクリスマスがまっていた。寒くなってきた頃は、コートの襟に首を埋め互いのポケットに手を突っ込んで、「おでんでも食べるかあ。」と言ってあったかいのを一緒に食べた。それから店々からながれてくるシンコペーションのついたクリスマスソングを聴きながら街を歩いた。
あえて寒い海にも行った。海岸を歩いてゆく中、夜未はふと、水葉ににっこり笑った。水葉はマフラーに口を埋めた。水葉も夜未の目を見た。
「キスするならグロスやめたのに。」
彼女は手を差し出していたが、彼はそのまま歩みを進めた。
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