ワームバトルゲーム
猫3☆works リスッポ
第1話序章
ひとつ、ふたつ、キリキリという音がする、何というか無機質な、その聞き覚えのある音は金属の擦れる音、1ヶ月前に児童公園の壊れて撤去されたブランコ、それに数人の高校生が乗った時最後に出していた音だ。その悲鳴のような軋む音が遠くの方で聞こえた気がした。いや今問題なのは俺の前にある闇だ、その闇はどこまでも深く遠くそれはどれだけ眼をこらしていてもいつこうに何も見えてはこない。俺は目の前に自分の手を掲げた、自分の手であるそれも、指を握っても開いてみてもその感触さえも闇に沈み朧げに消えていく。その暗闇の中ではそこにある筈の指先さえも見えやしなかった。
今頃になって後悔に心が一杯になりびくついていた、緊張で呼吸が荒くなり、自分の心臓の音とともに頭の中で反響し耳の中でこだまして不安を増幅させる。
ここはどこだ・見えない闇の中を・・感じるのは嗅覚だけ・・・小さく息を吸い込んだ、鼻腔に感じるのはそこらじゅう酸っぱいような湿っぽいようなカビくさいような生臭いような判らない臭いが漂う。足元も妙に不確かで。
俺はここに誘った友人に悪態をつきたくなった、いや本当に声に出ていた「ちいっ、あいつ自分で誘っておいたくせに先に帰りやがって。」
突然の閃光が周囲を覆い俺の目は何も見えなくなった、耳も同時に鳴り響いた爆音で何も聞こえない。
懸命に両手で耳を塞ぐ、数分だろうかその音に慣れていくと爆音の正体がようやく聞こえてきた、その音の正体が喚き散らている
「ヘイ!俺はDJカモン様だぜテメエらオスもメスも全滅しやがれ!、ボンクラのテメエら上から下から涎垂れ流してお待ちかねのメインエベント、いいかテメエられ前座も前戯も無しで始めんぞ!3人ぶち殺してると噂の挑戦者の拾い食い王「わたぽん」VS敵は生かしてかえなせねえ不滅の王者チャンピオン「ざけんじゃねこ」のワーム・バトル試合開始だああ、ガッツリいきやがれこのやろうファイトだああ!。」
金メッキでビカビカ光るマイクを振り回し緑色のツインテールに野球帽のオヤジが叫ぶ。
大音量のBGMで観客を下品に煽りDJオヤジが叫んでる、しばしばする眼がようやく明るさに慣れてきた、さっきからぼんやりと見えてきた人影がはっきりしてきた、女の人が場内を下着のような黒い薄手の布切れ一枚を身につけて、って「お腹にタオル巻いてるだけじゃないか!」その格好で3人のラウンドガールが駆け踊ってる、身長とか顔とか髪型も見る暇なく別の場所に視線が持ってかれる・・「うっ」俺の下半身の一部が緊張する。彼女達が足を振り上げるたび会場内に雄叫びが上がる、「痛っ」後頭部に何か当たった、振り向くと男も女も上半身裸になって上着を振り回しているのが頭でも顔をでもビシバシ当たってくる。
やっぱり卒業式が終わったからって高校生の俺がきていい場所じゃないのはわかってる。混乱している間にキラキラバズーカ、カクテルライトと煙幕に彩られた対戦は始まった。
視界が真っ赤に染まった。
以下訂正中
勝敗だけは一瞬でついたように見えた、がそれで終わりではなかった。
俺は当時それを生で見ていた、高校の卒業前というのに未だ進学も就職も決まらず落ち込んでいたのだが、人生の見通しが立たないままにその時大々的に募集していたワーム・バトルの選手に応募するかどうか迷っていて、決心するために観戦していたのだが、その試合会場で生き残ったのは奇跡だったかもしれない。
eスポーツで飽き足らなくなった者たちが考えた世界的なゲーム「ワーム・バトル」その興業はあらゆる産業、瀕死の放送業界、そして主体になっていたのはバイオ産業でありそれらによって数年がかりで盛り上げたものがこの時、ほんの数分で灰塵となり世間から消え失せた、会場の人間は保安部の人間を含めて生き残ったのは僅かであり、「事故」の原因は判明せず、ゲームは公式には永久中止となった。
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