第108話【決意の修行編その9】
〝炎の精霊〟自らもニッシャがどれ程、修行し強くなろうが〝時の精霊〟には、決して勝てない事を知っている。
しかし、ドーマの意志を次の世代へ託すため、過酷な〝
時の計画を止める唯一の対抗手段として、散り散りとなった残りの精霊4体を仲間に率いれる事。
それには、個々に力を蓄えなければいけず、何れ訪れる〝
現段階で〝時の精霊〟の動向は未だに分かっておらず、最悪の場合は抵抗出来ぬ〝ニッシャの死体〟を奪われれば、世界の均衡は瞬く間に崩壊するだろう。
〝この世界を守る〟だとか〝必要とされる存在〟に全く興味を示さなかったニッシャ。
だが、今回の経験を活かし自身の価値観と命の重さを見直して欲しいと、一心同体の相棒〝炎の精霊〟は常々考えている。
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時は〝Ⅳ速〟への挑戦に戻り、開始から5分を経過した所で、業火は周囲を
先程まで緑が生い茂っていた景色は、見るに絶え難い焼け野原となり果て。
最初と何も変わらない姿を見たドーマは、おもむろに立ち上がると、ニッシャから預かった煙草が底を尽きたため、休憩を
『ニッシャ~?もう休め、今のお前では〝境界線を越える〟事も叶わぬぞ?――――ん?』
己の魔力により火の塊となったニッシャは、いつもの様に生意気な口調で返答をする事はなく、耳を澄ませば微かに聞こえる寝息――――
導く答えはと言うと……構えたまま静かに眠っているだけだった。
『ニッシャの奴……あれほど言ったのに
呆れたドーマは、尻もちをつきながらニッシャが起きるのを、悠久の時の様な空間でひたすらに待つことにした。
【屋敷内-調理場】
〝晦冥の奈落〟への出発前アイナは、ミフィレンに調理場の使い方と、屋敷内のスケジュールを渡していた。
朝食担当のミフィレンは、両手一杯に紙を伸ばすと、大きな声を出して読み上げた。
『え~っと……食材を想像しながらテーブルを軽く叩いたら、任意の食材が出てきます。一回で〝お肉〟二回で〝魚〟三回で〝野菜〟くれぐれも出しすぎには、気を付けてね!!――――か……よ~し豚さん、犬さん早速作るからね……えっ!?』
身長1M程のミフィレンが見た光景は、
そこには、次々と山積みになりながら現れる食材の頂きは、見上げる程の高い天井付近に達していた。
『わ~……しゅご~い――――お肉た~くさんだぁ』
優しい性格のせいで怒ることは出来ず、呆気らかんとしている今のミフィレンには、その一言しか絞り出せなかった。
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