第81話【旅立ちの珍道中編その3】


『犬さんは私と一緒に朝食作りをします!!猿と鳥さん達はペアで部屋のお掃除と草花の水やりをお願いします!!豚さんは――――』


『うーん……』


 少しだけ困り顔をするミフィレンを、粒羅つぶらな瞳で見つめる鋼豚は、ジッとご主人の命令を待っている。


 先に頼まれた荒猿は軽やかに消鳥の背に乗り、広大な庭園の様な敷地を飛び回る。


 尾を振り小さな雨を降らしながら、均等に素早く水やりを行う。


 日課の雫を授かった花は、朝陽を浴びながら美しく咲き誇る。


 極小の雷雲かみなりぐもは、その横に生える雑草にピンポイントでいかづちを当ててさせていた。


 各々の特性を活かしながら朝の日課をこなしていく一方で、小難しく額にシワができる程に悩む顔。


 それと光線が出そうな程に光輝く粒羅な眼差しが、互いの意思を尊重しながら衝突していた。


『小さな豚さんのお仕事……固くて銀色の光沢が有って、元気に動き回る子に任せられる事は――――』


 何かを閃いたミフィレンは、目線を下げるようにしゃがみ、右手を差し出しながら言った。


『私が作る料理の助手さんをやってもらうね?……』


 それを聞いた鋼豚は『ブヒッ!!』と鳴き声を発しながら、足早に手のひらへと飛び乗ると、屋敷内へと入っていった。


【協会内廊下】


 アイナ一行は都の外へは出ずに、協会のへと、急ぎ足で一直線に向かっていた。


『失礼ですがアイナさん、【晦冥かいめい奈落ならく】へは、どうやって行くおつもりですか?……』


 先頭を冷静沈着に歩くアイナは、最後尾で質問するバルクスの顔を、一瞬だけ見るが直ぐに正面へと向き直りる。


 真後ろのセリエを指差し『あなたが教えてあげて』と合図を送った。


 セリエは真後ろにいるノーメンを見て、意気揚々と涼しい顔をして歩いている姿に、我ながら羨ましささえ覚えた。


 真っ白で無機質なマスクを着けていて、相変わらず表情の1つさえ見えないが、恐らくこう思っているだろう。


(俺が答えたかった!!くぅ~セリエめっ、本当に羨ましい奴だっ!!)と、多分だがこんな感じに考えているだろう。


 セリエは、後頭部で手を組み合わせながら、気だるそうに言った。


『やれやれ……おい、デカイの――――バルクスって言ったっけ?お前さんもいずれ協会所属になるなら、これから言うこと覚えとけよ?』


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