　そんな大人達の考えは露知らず。

　少しだけ気分が晴れ、新しい小さな友達はミフィレンの手で毛繕いをし、愛嬌たっぷりに微笑み掛ける。

　しかし、その光景をよく思っていない者がいる。

「グルルッー！！ワンワンッ！！」と頭の上で吠える炎犬（えんけん）が突如現れた。

　挙げ句の果てにご主人様に気に入られている、憎き荒猿（あえん）を敵視している様子。

　そんな視線など眼中にない荒猿（あえん）は、ミフィレンの肩に乗り移ると愛らしく頬ずりをし始める。

　時折、炎犬（えんけん）を横目で見ては鼻で笑う仕草をする。

　怒りで小さな体が燃え上がりそうになるが、そこは我慢し吠えるだけに留めようとした。

　――――が、やはり怒りの炎は煮えきらず、荒猿（あえん）に思いっきり飛び掛かる炎犬（えんけん）。

　戦いの舞台をミフィレンの体から床へ移した。

　二匹が小さな体でじゃれているのを他所に、ノーメンもセリエやニッシャに負けじと、宙へ造形魔法を繰り出す。

　徐にアイナの方へ振り返り、マスク越しの目で訴え掛ける。

　「俺のも動かしてくれ！！」と言いたげな顔をしている――――気がする……とアイナは感じ取った。

「お前もか……」と心の中で呟き、小さく溜め息をついたアイナは仕方がなく魔法をかける。

　火を吐く炎犬（えんけん）と風を吹き付ける荒猿（あえん）の喧嘩を制止させようと、空から奇襲を仕掛ける生物が、天井付近を飛び回り、それぞれの魔法を消（・）失（・）さ（・）せ（・）た（・）。

　その名は、〝消（しょう）鳥（ちょう）〟――――

　と呼び、手の平サイズであり、魔力を帯びた対象を狭い範囲で、尚且つ小さい要領の分だけ消すことが出来る。

　邪魔された挙げ句、悠然（ゆうぜん）と頭上高く飛び回るそ（・）れ（・）に怒り心頭の猿と犬。

　だが、気付かぬ間に側（そば）でしゃがみ込みながら、その様子を見ているミフィレン。

　主人に心配をかけたくないのか精一杯の作り笑いと、無理な仲良しアピールで嫌そうに抱き合う二匹の姿は本当に滑稽だった。

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