　――――〝屋敷内大広間〟――――

　アイナは聞かれたくない話が有ったため、弟子達は先に食べさせ、通常の背丈の3席と子ども用の席、計4席を魔法で用意した。

　両手で頬杖を付き膨れた表情で今か今かと、待ちわびながら痺れを切らしながて独り言を呟いていた。

「バルクス達、随分と遅いわね……今日で、ミフィちゃんとしばらく会えないし――――まぁ、こればっかりはしょうがないわよね」

　おでこに皺（しわ）を寄せ唇を尖らせると、幼い悪戯（ﾁｬｲﾙﾄﾞ･ﾐｽﾁﾌ）を使い、ラシメイナの離乳食を適温にしつつ、口元まで運ぶ作業を繰り返している。

　普段は百人超で食事をするこの部屋も、赤子とアイナだけだと過剰に広すぎるため、イライラよりも少しだけ寂しい気持ちがあった。

　待てど暮らせど戻る気配はなく、離乳食も終盤のデザートに差し掛かったその時だった――――

　出入り口の扉が勢い良く開くと、大きな音が部屋中に響き渡る。

　それに驚いたラシメイナがリンゴを吐き出しながら泣いてしまい、慌てて抱き寄せ上下に揺らすようにあやす。

　だが、一度機嫌を損（そこ）ねた赤子は、グズるだけで中々笑顔は戻らない。

　だが、それでも懸命にあやし続け、赤子を見るときは天使の様な笑顔で微笑み、正面に現れた来（・）客（・）に（・）は（・）鬼神の如き険相で睨むを交互に繰り返す。

　たまに順番を間違えて、恐ろしい形相（ぎょうそう）をラシメイナに向けると余計に泣き出す始末だった。

　予想外の事に慌てふためくアイナを他所に、原因が自分達のせい事とは露（つゆ）知らず。

　突然現れた全身黒フードの二組の小柄な人影は、軽快な口調で喋り出した。

｢いきなり呼び出されたと思ったら、アイナちゃんも子持ちになったの？どこもかしこもベビーブームだね。｣

　泣き声が耳元で響いてるおかげで、男の声が一切耳に入らないアイナは、冗談を無視して大声で話しかける。

｢お婆ちゃんから聞いたわよ！！。貴方達も晦冥（かいめい）の奈落（ならく）に行くんですって！？｣

　その態度は対抗意識の現れたなのか、両手を腰に当て負けじと腹から大声を出し、隣にいる相方が驚くほどの声量で返答をする。

｢あー行くよ！！まぁ、俺達は任務って言っても人探しって感じだけどね｣

　互いに低身長を誇る2人の間で、会話を繰り返す度（たび）に、驚いた赤子の泣き声と徐々にお互いの声が大きくなる。

　それはもはや、騒音と呼ぶに相応（ふさわ）しい程の三重奏となっていた。

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