第38話【子育て日記二日目】(組み手編その1)


 部屋の隅っこで胡座あぐらをかきながら、煙草を吸う私の目の前には、可愛らしい子ども達の声や純白の天使の様なきらめく笑顔、床に落ちる雫のようにほとばしる汗、それに……躍動やくどうし波打つ様々な筋肉質の男達が、数えられるだけでも数十と50M四方の道場に暑苦しく、「セイッ!!ハッ!!」とか、これまたむさ苦しく型を小一時間もやっているのを、私は見ていない。


 あくまでも生活の中心は、「見知らぬ男」より「いとし子ミフィレン」が主役であり、他の有象無象うぞうむぞうには興味が湧かないし、ぶっちゃけどうでも良いと思っている。


 アウトガーデンに居たときよりも日々の生活が充実している気がするし、そして何よりも、ミフィレンに友だちが出来たことが何より喜ばしくて本人も嬉しいと思う。



【屋敷内道場】


「あら、随分と大人しくなったわね。少しは成長したのかしら?」嫌みなのか喧嘩売っているのか分からないが、同じく壁に寄り掛かりながら、子ども達を見ているアイナが鼻で笑うように話しかけてきた。

(コイツ絶対、私の事バカにしてるな……いつか絶対ぶん殴ってやるからな)


 後頭部で指を組み合わせ、気だるそうにガラス張りの天井へ煙を吹き付けると、射し込む光と煙がなんとも言えない雰囲気を造り出し、お世辞でも満面の笑顔とは言えない引きつった表情で隣の小人に話しかける。


「んで?単刀直入たんとうちょくにゅうに言うと道場ここへ連れてきて、何ヤらしたいわけ?」


 小人は、吸いかけの煙草を奪い一気に吸いあげ、勢い良く吐きつけると視界が真っ白になり、私の体を覆うほどの煙が現れ全体を包み込む。


「あー、またこのパターンね……」毎度お馴染みの暗転ならぬ目隠しをされると、煙が晴れた先にいたのは家主の弟子達の姿があり無数の男達が居るなか、突如現れた私に気づいた一人の屈強な半裸男が、鍛え上げられた大胸筋を震わせながら話しかけてきた。


「どうしたんだいお姉さん?フンッ!!ソイヤッ!!」


 何て汚いもの男の筋肉を見せつけるんだよと思いながらアイナの方へ振り向くと、ウィンクをしながらパンチを乱れ打つポーズをしている。

 要約するとあれだな……数十はいる男達と組み手ストレス発散しろって事だよな?こう言っちゃ何だが、部隊長まで昇り詰めた私の格闘術を舐めないでほしいな。


 胡座あぐらを解き、立ち上がると女性にしては、背の高い180cmもあるニッシャだが、それを上回る190cmと大柄な男ら、純白で汚れを知らないような歯を剥き出しにしながら笑顔でこう言った。


「お姉さん強そうだね?ちょっと練習に付き合ってくれる?」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます