いつだってあなたが私を強くする
泥んことかげ
想像を創造へ、小さな命の物語
第1章【小さな出会いと大きな役目】
第1話【出会いと子育て】
人里離れた山奥にある森――――
この森は〝
私の名はニッシャ。
並の魔法使いでは勝てない生物――――つまり、危険度level-Ⅰ~Ⅱの魔法生物しかいない
街の人間達は、生まれつき朱髪の私の事を〝呪われた〟子だって指を差しながら笑ってたんだ。
髪だけじゃなく成長にするにつれて、瞳も朱色に染まり、生まれつき魔力のない私は、いつしか一人で生きるようになった。
街のどこにいても、私の居場所なんてなく、もしかして生まれてきたこと自体が……なんて考えた時期もあり、そんな生活に嫌気がさした頃この森にやって来た。
はじめは、死にたいとか私だって何か出来るって事を、誰かに認めてほしかったのかもな。
危険だがそれでいいと思うし、スリルと冒険は人生において、必要だって誰かが言ってたっけ。
この世には、必要な命とそうでない命があるとかなんとか――――
「うん、でさ……長~い、前口上はいいとして――――こんな物騒な森で一人過ごしていたのだけど……なぜこうなった~!!」
その叫びは小さな
体長1000mm級の小さな少女の髪の毛を右手の炎魔法を器用に使いドライヤーがわりに乾かしながら叫ぶ。
あれはそう、いつも通り修行しようとだな――――
☆★☆★☆
私はいつも決まった場所で修行する。
そこには滝があり、そこで打たれながら瞑想するのが好きでさ、不思議とそこでは生物同士の争いはない。
森で只1つの水辺にはあらゆる生物がくるが、その場所に通じるものには暗黙の了解があり、いつもどおり水で顔を洗い、いつもの様に滝に打たれ……
ん?眼の錯覚かな?
「なにかいる気が……」
滝壺の付近に金色のもじゃもじゃの物体がいるのが、長い間この森にいるがこんな生物は見たことなかった。
森での最高危険度〝危険度level-Ⅱ〟の可能性を考えニッシャは戦闘態勢に入った。
だが、突然変異による〝level-Ⅲ〟の可能性も視野に入れる。
それは今もこの森のなかにいると思うが、こんな小さな生物は見たことなくなにか特別な気配さえ感じている。
視線をもじゃもじゃの生物に真っ直ぐ捉え右手を差し向け、しばらく見ていると小さな手やら、足等が覗いており、人の様に見えてきた。
「子ども?」
構えを解き片膝を地面につけ、両の手を広げると、くるくると時計回りに回りながら向かってくる。
目の前で止まり、私は、大量のもじゃもじゃを掻き分けると、その生物は寝息を立てているのが伝わり間違いなく人の子だった。
どの様な夢を見ているのかわからないが恐らく食べ物の夢だろう。
よだれは、頬を伝い滝に垂らしており、優しく抱き寄せ、他の生物に襲われぬ様に静かに隠れ家へと向かう。
帰り道で寝顔を覗くとその子は優しく微笑んでいる気がし、それがたまらなく可愛くて仕方がなかったんだ。
隠れ家に着くと抱き抱えながら器用に指をならし簡易式の魔法で入り口から奥まで順に灯る。
灯りがユラユラと洞窟内を照らす
ここには必要最低限の物資しかない
獲物を狩った際の作業机やその皮で作った寝具。
そんなのばかりで骨を組んで作った簡易的な椅子に座らせると、幼子の濡れた体を拭き取りながら語りかける。
「お前名前は何て言うんだ?」
喋れないのか無言になる
「……」
少しだけきまずくなって、お互いに黙ってしまった。少しだけ間が空く。
「ん~、まだ喋れない年頃なのかな~、人と話すのなんて久しぶりだからな~」
もじゃもじゃは私の手からこぼれ落ちるように地面に倒れる。
「おいおい!、どうした?お前……熱あるじゃねえか!」
その後私は必死で看病をした。
慣れないことを沢山したもんだ。
着ていた服は、濡れてたから乾かして
代わりの物作ってやったり、慣れない料理も作った。
自分以外に作るのなんて初めてかもな。
夜は森中の生き物が活発になるから、朝方取りに行ったり、熱が早く冷めるように、滝に水を取りにも行った。
「目……覚めたか?」
顔を覗きニッコリと笑いかける。
「お姉ちゃん誰?」
「私は、ここに住んでる、ニッシャって者だ、偶然あんたを見つけたんだ」
脅かさないように、うつ伏せになり、頬を両手で支え語りかけた
灯りは私達を優しく包み影を壁に映していた。
「これ、お姉ちゃんがやってくれたの?ありがと……」
暖かい食べ物や森の生き物で作った毛皮の毛布に目をやると恥ずかしそうに体を埋めた。
「こらこら、隠れるんじゃないよ」
その姿が可愛くて、愛しくて毛皮を剥ぐともじゃもじゃ頭を両の手で掻き乱した。
少女とニッシャの笑い声が洞窟内に響き渡る。
看病のかいあってかそれから数日が経ち、少女はみるみる内に元気になり隠れ家の外で話しかける。
「あんた、良く見ると結構可愛い顔してるじゃん!!」
もじゃもじゃの髪は頭の後ろで結び、長い髪の毛は腰の辺りまである。
初めは、わたあめの様なその髪も、綺麗にしてあげれば真っ直ぐ可愛らしいもんだ。
髪が眼にかかりそうな藍色と蒼色の瞳で私を見ると、照れているのか無言で私の足元へ近づき抱きつき顔を埋め、上から覗くと金色の髪の毛が左右へユラユラ揺れていた。
「こいつ凄い照れ屋だな」
ニッシャは何かを思いついた
「そういや、あんた名前なんて言うんだ?あの時は体崩してて聞けなかったけど……」
少女は顔を私の方へ向け見上げるような形になる。
日射しが眩しいのか、半目の様な状態で話しかけてきた。
「レン……私、ミフィレン。あなたは?」
少女の目線まで屈み頭を右手で撫でる。
「私は、ニッシャ、よろしくな!ミフィレン!」
少女を抱き上げ、歩きだす
「私のお気に入りの場所に連れて行ってやるよ」
そこは、滝から少し離れた場所にある
花や小さな生き物達が集まる公園の様な場所であった。
滝の水で花は彩り豊かに咲いている。
ここには猛獣達が入り、食べるようなものがないため比較的綺麗であった。
「こんな晴れている天気なら、物騒な猛獣もこないから安心だな」
ニッシャは花を幾本摘み、器用に組み上げ花の冠をミフィレンの頭に乗せる
何も娯楽がないここでは、なにかと器用になるもんだ。
他人に物を作るなんて初めてだった。
「これは、私からのプレゼントだ。似合ってるぞミフィレン!」
びっくりしたのか、少しだけ考えてるのか動きが止まりようやく口を動かすと
「ありがとう、嬉しい……」
ニッコリと笑顔を見せてくれた。
「あんたが笑顔だと私も元気になるよ。ありがとう!」
しばらくミフィレンと花や小さな虫達と戯れる
まるでこの世界に二人しかいないようだった。
本当の親子のように笑顔が絶えなかった。
時間はあっという間に過ぎ、陽が陰ってきた。
「暗くなると危険だからそろそろ戻ろうか!」
ミフィレンを抱き抱え足早に帰路に着く。
しばらくして私は、ミフィレンの風邪が移ったのか体調を崩してしまった。
自分がされたように、小さいながら精一杯看病をしてくれた。
「ごめんな。ミフィレン、今度は私が助けられる番だな……」
ニッシャは毛皮に包まれながら常備していた食料を口にする。
「ニッシャ、元気ない、しんぱい……」
ミフィレンはシュンと元気がなさそうだった
「大丈夫、直ぐ治るからさ」
私はミフィレンを安心させたくて寝ながら抱き寄せ頭を撫でながら安堵と安心感で眠ってしまった
幾時間経ったかわからないが気づくとミフィレンは目の前からいなくなっていた
灯りだけがゆらゆらと私だけを照らしていた。
洞窟内、周囲を探すが見当たらない。
もう陽が暮れて、森中の猛獣が行動する時間だった
私は考えて考えて考えた。
危険をかえりみず、花畑に向かい一直線に走ったが、思考が追い付かない。
足も手も自分の体じゃないみたいに重い気がしたがそれでも走った。
運良く猛獣達には会わなくて済み、着く手前に叫び声が聞こえ、私は声の方へ向かう
ミフィレンが怖がっているのか頭を抱え、小さくうずくまっていた
辺りには黒いモヤの様なものが見える。
暗くて気づかなかったが視線の先には何かがいた。
唸り声のような音をたてこちらを威嚇している。
〔超大型熊〕=【危険度level-Ⅱ】
(立てばゆうに6Mを越すその体躯と獰猛な性格。あらゆる魔法使いを喰らい、魔法協会から追われ森にやって来たとされる)
熊のすぐ鼻の先にはうずくまるミフィレン。
私はなにも考えずに熊の顔に向かい勢い良く蹴りを浴びせるがそれで怯まないのが〝危険度level-Ⅱ〟である。
「逃げろ!」私が、そう叫ぶと、泣いた顔を拭き取りながら走りだすが少女の小さな体は、思った以上に進まない。
熊は、何を思ったのか一直線にミフィレンの方へ突進する。
ニッシャは、ミフィレンを抱きながら避けたが一撃をもらってしまう。
間一髪の所で直撃は免れたが180cmもあるニッシャの身長で背中の9割に受けてしまった、ミフィレンを守ろうとしゃがみこみ抱き寄せた。
背中の感覚がない。流れ出る血は、背中を伝い地面に落ちる。
意識が朦朧とするなか、この子だけは守りたいと本能が語りかけていた。
今思い返せば不思議な感覚だ
絶対大丈夫だって気がしたから。
ニッシャは言葉が通じないと分かっているが暗がりのなにかの方へ必死に語りかける。
「あんたは、ただ自分の子を守っただけだもんな。ごめんな、怖い思いさせちまって」
そっと少女を抱き、手が震える。
「だけどな、同じ親なら子を守るのは当然だろ?頼むよ、私は誰も傷付けたくないんだ……」
必死の説得が通じたのか、熊の荒い息は次第に静かになり、落ち着きを取り戻したのか足元にいた小さな小熊の体を毛繕いすると、ゆっくりと背を向け親子2匹で歩いて行った。
私を元気付けるために花を摘んだミフィレンが偶然にも熊の子に出会ってしまい、親熊が花の匂いを別の猛獣だと勘違いし威嚇をしたみたいだった
森はゲリラ的な雨が降るが、先程までの喧騒は何だったのか?。
全ては雨で洗い流され、獣達はそれぞれの住み処に戻ったようだ。
泣く少女を抱くニッシャ、雨で涙が流れより一層強く抱き締める。
その叫びは、雨でかき消され力なく頭を撫でながら。
「大丈夫だったか?私はもう平気だからもう泣くな。フフフ、優しいなお前って。
心配するな、もう風邪なんてどっかいっちゃったよ。たとえ何処にいてもなにがあっても必ず私が守ってやるからな……」
ニッシャはそう言ってミフィレンが持つ小さな一輪の花を持つと、笑いながら抱き上げ自分達の帰る家へと向かう。
――――〝森の入り口付近〟――――
森では天候が荒れやすく、まるで侵入者を拒むように吹き荒れている風で対象を押し返していた。
ローブを頭から羽織る二人組は、目の前に現れた生物によって阻まれていた。
身長差は凸凹となっており、横の男が小さく見えるほど背の高い男は生物達を見下ろしていた。
〔|
(天候が悪化すると住み処からでてくる、体長はおよそ、30cm程と森の中では小柄だが、主に群れで行動し体内で作り出される電力により、強力な脚力と尾を持ち大型魔法生物をも一撃で倒す。体内の電力により危険度が変動するⅠ~Ⅱ)
森の小さな生物は侵入者を、拒むように連なっており、呆れ口調で小柄が横にいる大男に話しかける。
「やれやれこんな、入り口付近にもいるとは、一体中では何が起こってるのやら……ねぇ?ノーメンさん?」
「……」
聞こえているのか、いないのか、無言だった
無愛想な顔ではなく、事実顔は真っ白なお面で隠れていて表情は読めない。
「ん?ねぇ?ノーメンさん?聞いてる?おーい!」
小柄は、一方的に話し掛けるが相手にされていないようで、それを見兼ね、先に仕掛けたのは兎達の方だった。
強力な前足で一羽が二人組へ突進きたが突然空から小さな雷が一羽を直撃する。
雷を体内で発電する兎にとって雷など...許容を越えたその小さな体は醜く無様に膨れ、激しい風に乗って飛ばされていった。
驚いた仲間の兎たちは、一斉に飛びかかってきたがほんの一瞬だった。
兎は二人組へたどり着く前に、忽然と姿を消す、大柄は兎をまるで一筆書の様に指で空をなぞっただけだった。
「おや?兎さん達はどこへやら?」
クスクスと笑う小柄を他所にノソノソと大柄は先に進む。
「では行きますか」
大柄を追いかける小柄の二人組は森の奥へ消えていった
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