あの日のきのう

野森ちえこ

はじまり

今日につないだもの

 物語に救われ、物語に生かされた。


 もういいや。

 もうやめよう。

 もうおわりでいい。


 そう思ったとき。

 ふと思い出すのは、家族の顔でも友だちの顔でもなく。


 読みかけの小説だったり。

 完結していないマンガだったり。

 やりかけのゲームだったり。

 もうすぐ公開される映画だったり。


 ――あれを見てからにしようか。

 ――あれを読んでからにしようか。


 おわりにするのは、いつでもできる。


 歪んでいようが、捻れていようが。

 そんな思いが『今日』に命をつないできた。



 いつしか、物語を演じ。

 いつしか、物語を綴り。



 わたしは今、ここにいる。



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