あの日のきのう

友だち

 小学校がおやすみの日。友だちと遊びに行く約束をしていた。活発なユミちゃんとおとなしいサキちゃん。


 友だちだと思ってた。ううん、ちがうね。友だちだったらいいなって思ってたんだ。声をかけてもらってうれしかったから。そうだったらいいなって思ってた。


 目的地最寄りの地下鉄のホームで。待ち合わせの時間が十分過ぎて。三十分過ぎて。一時間が過ぎて。


 どうしてかな。ああ、やっぱりって思ったんだ。


 なにかあったのか――なんて心配しなかった。

 どうしてこないの――なんて怒ったりしなかった。

 なんできてくれないの――なんて泣いたりしなかった。


 やっぱりね、って、そう思っただけだった。そうだよね。だってあたしはクラスの嫌われものだもの。だいたい、近所に住んでいるのに現地の駅集合なんて不自然だよね。


 それでも、期待してたのかな。つぎの電車でくるかもしれないって思うと、ベンチから立ちあがれなくて。二時間が過ぎて、三時間が過ぎて――五時間、待った。




 翌日。約束なんて最初からなかったことのように。ユミちゃんとサキちゃんはふたりで遊びにいった話をたのしそうに教えてくれた。


 友だちなら――約束したでしょって怒れるのかな。

 友だちなら――どうしてきてくれなかったのって泣けるのかな。


 バラバラと。

 ガラガラと。


 なにかが崩れていく音を聞きながら。

 愛想笑いを浮かべて、ふたりの話を聞くしかなかったあたしは。

 次の日から、学校に行けなくなったんだ。



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