第24話(語られる真実)
アールは気が付くと、またもや天地東西南北が判らない真っ白な世界に居た。神々しい光が近付いてきて、人型になる。神様だ。
「稲葉アール。また殺られちゃったようじゃな」
「モコロか?」
「フッフッフ。ワシは破壊神モコロじゃ」
「破壊神!?」
「冗談じゃ」
「ふざけないでくれ」
「済まぬ。稲葉アール、お前に天恵を授けよう。もう話してもいいだろう」
モコロという神様は静かに語り始める。
「まず、お前に記憶がないのは、お前ががAIだからじゃ。稲葉リュウという令和時代に活躍したサッカー選手の行動パターンがインストールされている。稲葉リュウは24歳の時、スランプに陥り、自殺した」
「やっぱり、俺は人間じゃないのか」
「それだけではないぞ。帝釈天アールタイプという宇宙船のAI船長でもある」
「その宇宙船はどこに向かってるんだ? 火星か?」
「いや、もっと。かなり遠い惑星〝ガンマスF1〟じゃ。地球から120光年も離れており、コールドスリープで300万人もの人々を運んでいる」
「何のために? 宇宙旅行か?」
「いや、テラフォーミングじゃ。地球は既に人間が住める環境ではなくなっている。残された者共は冬でも気温50℃の世界に取り残され、地獄に喘いでおる」
「地球温暖化か」
「そうじゃ。そこで世界各国が知恵を絞り、数機の宇宙船を建造した」
「300万人と言ったな。どうやって選別したんだ?」
「18歳から50歳までの健康な男女で、様々な能力に秀でた者と平均的な者を選び、宇宙船に乗せた。帝釈天アールタイプは日本人をメーンに集められておる」
「なるほど…………。案内AIによると、時が近づいてきていると言っていた」
「それはな、〝ルクソール・オンラインはコールドスリープから徐々に覚醒させるウォームアップ〟だからじゃ」
「じゃあ、テラフォーミングする星の近くまで来ている?」
「その通りじゃ。後一年ほどで着陸する予定じゃ」
「でもさ。その星と地球の環境は同じなの? 微生物とか」
「大丈夫じゃ。アメリカの先行隊が、地球環境に則した環境に細やかな改造をする手筈じゃよ」
「大体分かった。つまりルクソール・オンラインの皆はダイになっても死なないんだな?」
「ああ。死んではいない。しかし、あまりにも早くウォームアップを終えると、脳にかなりの負荷がかかる。それは、AIである、お前も同じじゃ」
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