第16話(ダイ)
アールはスマートモンキーを背中に乗せ、有志10人とともに国道19号から南へ走る。時速400キロメートルで山を越え、川を越え、中央道をぶった切り。
数分で母船を目視できた。全長40メートルほどのUFOが2機ある。
「カーマインや皆は、右のUFOを頼む。俺とスマートモンキーは左のUFOを落とす」
「分かった。ロボットが居る。気を付けてくれ」
アールはレールガンを構えて撃つ。ズキューン! ドーン! 小さい母船とはいえ、一撃で落とせない。小型UFOの代わりに、大量の人型ロボットが、レーザー光線で弾幕を張り、母船のハッチを守っている。
「アールの旦那、あっしはファマスで裏を見ときやす。正面に集中してくだせえ」
「任せたぞ」
アールはスマートモンキーにファマスをパスする。
「ミッサァイル、ミッサァイル。ロボットがミサイルを撃ってきたでさあ。避けてくだせえ」
「ああ」
アールは母船とロボット群にレールガンを撃ち分けながら、正面から高速で飛んで来るミサイルに対し、左に開いて誘き寄せてから右に動き、回避する。
スマートモンキーは裏からファマスをフルオートで撃ち、ロボットを破壊していく。
「スマートモンキー。ロボットをいくら倒しても、次々と母船のハッチから降りてくる。枯渇することはあるのか?」
「無限でさあ。レイピアがあれば近距離の敵を一気に削れるでさあが、スーパーファンタジアをプレーしないと手に入らねえでさあ…………おや~? アールの旦那。武器をソート、ソート。レイピアを持ってますぜ」
「また都合の良いバグか。課金じゃないだろうな?」
「レイピアはスーパーファンタジア内で1000万円課金すれば手に入りやすが、どうやら、アールの旦那はチートのようでさあ」
「有難い」
アールはレールガンをアイテムボックスに仕舞い、レイピアを右手に装備する。トリガーを引くと、無数のレーザー光線が広範囲に渡る。ロボットの至近距離で放つと、一瞬にして数十機が蒸発した。
アールは、そのまま、ロボットの大隊を蒸発させる。母船がハッチを開けて、ロボットを追加放出しようとした時に、アールはハイジャンプして、ハッチにレイピアをぶち込む。ガガガガーー! ドカーン!
ーーその頃、カーマイン達は苦戦していた。アサルトライフルでは母船を落とせない。カーマインは左にあった母船が傾き、墜落するところを見た。
「アール。こっちのヘルプを頼む。ロボットはだいたい片付けた。しかし、母船が硬い」
「了解」
アールレールガンに持ち替え、右の母船へ急いで行く。そこは、サーキットだった。母船のハッチからコースにロボットが降下してくる。接地する前に、有志がアサルトライフルで破壊する。アールはその隙を逃さず、レールガンの弾丸を母船のハッチにぶち込む。ズキューン! ドカーン! ゴゴゴゴーー! 有志が多少なりとも、削ってくれてたから、一撃で落とせた。
「待避ー!」
ギルドの有志は安全な所まで待避する。
「ここも……デジャブ、既視感…………記憶」
「アールの旦那。ここは、YZサーキットでさあ。来たことあるんでさあかね」
「YZ……。取り敢えず、フィールドに戻ろう」
「近くのコンビニは山1つ越えた所でさあ」
「皆! コンビニへ向かえ! ひとまず、休憩だ!」
カーマインが号令をかけると、散り散りに去っていく。
バーン! 銃声が聞こえた。アールの腹からブロックノイズが入った電子の血が流れ出す。背中から撃たれた。
「痛い…………ハワードか!?」
「アールの旦那!」
「僕だよ。アールさん」
アールは振り向くと、杉山が立っていた。片手に拳銃を握り締めて。バーン! バーン! バーン! 杉山は更に、アールに銃弾を浴びせる。
「杉山ー! 何を考えてる!?」
「レールガンさえあれば、レールガンさえあれば。僕だって活躍出来るし、一番乗りでログアウト出来る。悪いけど、死んでもらう」
「カーマイン! 聞こえるか!?」
「ああ。ギルド専用ボイスチャットで聞こえた。今、そっちに向かってる」
杉山はレールガンを回収して全速力で逃げた。
「俺……死ぬのかな? スマートモンキー」
「アールの旦那~。残念ですが、助かる傷じゃありやせん」
スマートモンキーは泣いてるようだ。
カーマインが、アールの元に着いた時には絶命していた。
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