第30話 ダブルカップリング(おまけ)
「全く。男子ってばすぐああやって人を連れて行く」
「まぁまぁ抑えて。麗律」
潤平達がトイレの間の美玖と真鐘である。2人の出会いは潤平が思っているほど深くは無い。中学3年の2学期後半からなのでまだ1年経ってはいない。
トイレとはいえこの遊園理に女子2人だけというのは少しばかりよろしくないような……。
「お2人さん。俺らと回らね?どう?」
やはり、現れたのは手首や首元、耳にまでアクセサリーを付けた金髪の男が一人。
「何でもおごってやるよ」
此方は赤髪の革手袋を身に着けた男。要するにナンパ男たちである。
「麗律…」
美玖は麗律の後ろへと隠れる。そもそもこういうのは彼氏である潤平の役のはずだが生憎とここには居ない。偶然ではなく狙ってきたようだ。
「大丈夫」
自分の服をギュッと怯えながら握る美玖にそっと声をかけておく。こんな可愛い美玖を渡すわけにはいかない。
「なぁ。俺らと回ろうって。悪いことは無いだろ?」
ナンパをさらにかけてくる金髪じゃらじゃら男。麗律はその時に怒りがわいてくるのを感じた。何としても守りきるという使命感もあった。
大事な大事な美玖。その美玖が怯えているのにどっかの誰かさんもここには居ない。
居るのは自分。美玖。そして目の前の害虫《ナンパ男達》。
「ナンパですか?」
第一声。出来るだけ抑えて。
「ん~まぁそう言えなくもないかな。でも俺ら…」
「……ですけど」
第二声。そろそろ限界がきそう。止まらなくなるーー
「はい?」「俺らなら何でも買える……」
「それしか言えないのか!」
第三声。もう麗律は止まらない。止められない。
「ナンパとか、マジでキモくてありえないですよ?あはははは……頭から水をぶっかけて上げましょうか?それとも下半身のそれ、もいであげましょうか?」
男たちはすっと顔を青ざめさせる。当然だ。息子死刑宣告はつらい。
「ド阿保のクソ共が」
ナンパ男達もようやく悟ったようだ。自分たちがどんな種類の人間に声を掛けたのかを。美玖だけならもしかすればあったのかもしれないがまぁ何とも言えない。はっきり言ってざまぁない。
「ひぃぃぃぃぃぃぃっ!!」「もぐ……し、死ぬ」
完璧にご立腹の麗律には慈悲という言葉は存在しない。すべての限りをつくして向かっていく。
「さぁ、どれがいいですか?」
すごんだ声と顔から一変して優しく包み込むような笑顔に。スマイル……。恐ろしいスマイルが顕在した。
「い、嫌だ……。もがれたくない」
「ごめんなさい。い、命だけは助けて!」
これではどちらが悪かわからないではないか。
「分かったらさっさと行け。……ザコが」
わっと逃げ出す男2人。己の息子を差し出すことは流石に無理だったようだ。
「ありがとう麗律ぅ。怖かった」
美玖の眼から水が流れ出す。安心の涙。麗律はその涙を指で、ひろってらりながらこの娘は絶対に守ると1人、心に誓うのであった。
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