コミュ障になった俺とコミュ障だった彼女の不可解な生活

孔明丞相

プロローグ『運命の歯車』

第0話 プロローグ

 俺の好みの女性のタイプは、出るところは出て締まるところは締まっていて思わず男子の誰もが釘付けになってしまうようなムチッとした身体の持ち主だ。しかし、外見からは語れないものがある。それは性格だ。

 俺の理想としては、沢山話しかけてきてくれる子がいい。あまり、人と会話なく生活してきた俺にとって、自分から、というのは結構なハードルだ。

 しかしそんな自分に都合のいいような女なんてこの世界にいないことなど100年前から知っている。勿論、数字はアバウトだが。

 俺の理想を叶えてくれるのは小説の登場人物だけだ。美少女たくたん、豊満な2つの双丘。俺は転移者か転生者になりたい!!まぁ、そんな事、現実には100%ありえない。小説の内だから面白いのである。転移した者の家族とか考えたら憐れみも何も無い。「お気の毒に…。」としか言い様がない。本当に御愁傷様としか言えないのである。

 そんな高望みをしている俺の現実での日常はある出来事を通して終わりを迎え、変わった。


 ☆☆☆ ☆ ☆ ☆ ☆


 それはある一通の手紙だった。その時の俺は小学5年生であった。俺は何を血迷ったのか部活に所属していた。それも金管バンド部、まぁ中学校で言うところの吹奏楽部だ。女子と男子の割合は20対1ほどで今の俺からしてみれば何故そんな部活に好んで入ったのか皆目見当もつかない。

 所属していた部活は強く、大会にも沢山出場して勝ち抜いて行った。その帰りのバスの中であった。


「はい、お手紙。」


「え?……あ、どうも。」


 男で俺の先輩が誰かが書いた手紙を俺に渡してきた。先輩の顔は実に野次馬と呼ぶのにふさわしいニヤついた笑みをしていた。俺はこの時に自分に何が起こったのかをよく考えるべきだったのだ。

 とはいえ、人間誰しも混乱はする。俺はその混乱具合が人より異常なだけ。

 内容としては友達からでいいので付き合ってくれ、という解読に数十分を要する不可解な手紙だった。差出人は瑞山美玖。当時の俺は同じパートの子、ぐらいにしか思っていなかった。そして、友達からなのだろうか、付き合うのだろうかと頭を悩ませ、まぁどっちでもいいや。俺独り身だし。相手が嫌いになったら向こうから別れを切り出してくるに違いない、と軽い考えなのか、5年生にしてはしっかりしているのかわからない考えを持って了承の返事を書いた。この返事によって俺と彼女の不可解な生活が幕を開けた。




 蛇足かもしれないが付け加えておくと……。

 俺の書いた返事は野次馬先輩に回収された。先輩は彼女の書いた手紙の内容を知っているらしく俺の書いた手紙を持ってソワソワしていた。妙に肩に力が入っていませんかっ?!

 そうこうしているうちにサービスエリアに到着。先輩は風のように、恐らくだが彼女達がいるバスへと走っていった。今回の場所でサービスエリアに止まるのは最後だ。だから急いだのだろうか。




 後の彼女に聞くと、彼女はくすり、と懐かしい思い出に浸った眼をした後に頬を膨らませた。


「あの時は、私より他の人の方が舞い上がっちゃって。私は逆に安心して……ううん、なんでもない。」


 とても気になったが顔が赤いので何も言うまい。そして彼女を見て、絶対に返事をする時に考えたことは冥土に土産として持って帰ろうと決めた。

 バスが学校に到着し、解散となって何かあるのかと思った俺だったが何も起こらなかった。

 そしてその彼女は現在進行形でも彼女である。

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