掲示板回 告知を出した日に受け取ったメールは何であったか
MMOでいうタンクとは、敵からのヘイトを集めることで、敵の攻撃を集中的に受ける役割のキャラクターのことだ。
一般的なタンクは『盾タンク』とか『壁タンク』等と呼ばれ、防御力や体力を高めて敵の攻撃を食らいつつ、味方に集中的に回復してもらうことで戦闘を成立させる。
メリットは、なんと言ってもその安定感。運や乱数に作用されにくく、回復が続く限り安定した戦闘を継続できる。特に格下や護衛の際に無類の強さを発揮できる。
デメリットとしては、回復がダメージ量を上回っていないと成立しないこと。特に仲間が範囲攻撃に巻き込まれて回復が分散するとピンチだし、回復量を上回る敵が出現した場合はお手上げだ。
ステータスとしては高い
一方、ヘイトを集めて攻撃を受ける役割は同じだが、敵の攻撃を避けることで戦闘を成立させるキャラクターを『避けタンク』と呼ぶ。
メリットは自分一人でタンクとしての役割を完結できること。また、一般的には盾タンクより攻撃力が高く、回復役も不要となるので戦闘時間も短縮できる。格上の相手であっても、理論上は当たらなければ負けはないこと等もメリットだろう。あと、敵の攻撃を避けるので防具の修理代も不要です。
こう書くと盾タンクよりメリットが多いが、その分デメリットも大きい。避けタンクは回避力を高めるために重い装備は身に付けず、一般的には紙のように装甲が薄い。そのため格下の相手であっても、避けそこなえばあっさり死ぬので、安定感に欠けるのだ。
また攻撃を回避するため常に動き回るので、味方からも補助しにくく、さらに味方とぶつかったり範囲攻撃に味方を巻き込んだりしやすい。というか、広範囲魔術を使われると避けようがなくてあっさり死ぬことも多い。
ただいずれのデメリットも、本人の動きが極めて良ければ、デメリット足りえない。総じてプレイヤーの力量がダイレクトに表れるプレイスタイル、それが避けタンクというものだ。
こちらはステータスとして、ひたすら
ぼく?
世にも珍しい『受けタンク』だよ!(自称)
世間的に第三のタンク種別として認識されておらず、ぼく以外にそういう戦い方をしている人を見たことないよ!
あと、受けタンクって言うと、盾タンクのことと思われるからそこも注意して下さい。
違うんです、別物なんです。でもちょうどいい名前が浮かばなかったんです。
ダンジョンの地下で笑い転げ、ある意味クルスさんが瀕死になった後。
黄光銅を差し出してクルスさんを勧誘したけれど、答えは求めなかった。今あの場では、言わせなかった。
まずはしばらく、ご一緒して欲しいと。その中で、ゆっくりと、自分の目的と手段を見つめて欲しいとお願いして、お互い合意の上で返事は保留。
その後は気持ちを切り替えて、二人で少し真剣に狩りモードに突入だ。
クルスさんが前衛を受け持ち、避けタンクとして立ち回ってもらうことでタートルオーレとの戦闘時間を短縮。
途中、ぼくの余計な一言のせいで笑いの発作がぶり返し数分間使い物にならなくなるという
遺跡を移動中も思ったけど、クルスさんの動きって本当に洗練されてて綺麗だ。これだけうまい避けタンクと組んだのは、ブレイブクレストでは初めてでございます。
ぼく? だから受けタンクだって言ってんだろぉ、美しさとか回避とか求めんなよぉ。泣くぞ!
―――こほん。気を取り直し。
ダンジョン内に出現する敵の数はある程度決まっていて、一度倒した後は復活までしばらくかかる。なので地下を回り終わったところで今日の狩りは終了だ。
一度のお出かけでそれなりに黄光銅を集めることはできたが、採掘スキルが必要だし、現地で復活を待つのは現実的ではない。
それを考えれば大勢でここに来てもあまり意味はないかな。黄光銅の採掘も、誰かしら担当を決めて定期的に回りたいところです。
そんな風にクルスさんと意見交換をしながら帰りの馬車に乗り、フリークブルグへと向かう。
ゆっくりと二人で出かけたからか、話しぶりから少しだけ気を許してくれた気がして、嬉しい限りでございます。
午後は少しやりたい事があるそうで、また夜か明日か、時間が合う時にと挨拶してパーティを解散した。
クルスさんと別れ、拠点に戻ってログアウト。
VRシステムを外し、寝転がって天井を見上げたままに大きく息を吐く。
時刻はもうすぐ13時。4時間以上、みっちり
大きく身体を伸ばしてから起き上がる。掲示板に書き込んでからお昼ご飯にしよう。
軽く身体をほぐし、トイレなども済ませてから、改めて―――掲示板に書き込むために、VRシステムを装着し、再びベッドに横になった。
いや、椅子に座って見るためのディスプレイもあるにはあるんだが、入力デバイスを使うためにはやっぱりVRシステムに繋がないといけないんだよね。
入力デバイスがあるのに、小さい携帯端末でぽちぽちやって文字入力するのも面倒だし。
結局、ゲームや大学みたいにログインしない活動であっても、VRシステムを使うことに変わりないのだ。
日常生活のほぼ全てがネットワークと接続されており、つまりは寝転がってVRシステムを利用するわけで。
だからこそ、小学校から大学、専門学校や予備校まで、全ての教育機関で必ず『健康』の授業日が設けられている。
会社によっては、就職後も月一であったりするらしいです。
そんなとりとめないことをつらつらと考えつつ、ブレイブクレストのIDで公式サイトにログインする。
公式で提供されている掲示板を利用するには、ブレイブクレストのログイン情報が必要となり、いまどきの掲示板らしく匿名性は一切ない。
書き込むにはキャラクター情報も必須となるが、イベントを主催する側としては名前を伏せる気は特にないので問題なし。
むしろログイン情報がありキャラクターの素性を公開することで、詐欺や不正、誹謗中傷の抑止になっているので歓迎すべきことだと思う。
というわけで、早速お目当ての掲示板を探す。
……探すのは、王女様が拘っていたおっぱいスレではない。いや、そもそもがおっぱいスレではなく、通常の話題の中で唐突におっぱいおっぱいと三十七連呼する変態が出没しただけらしいのだが、ともあれ見たいのは
七夕の準備のため、まず開いたのは取引掲示板だ。
売りの掲示板内を『花火』で検索して一件もヒットしないことを確認してから、買いの掲示板に書き込む。
―――――――――
取引掲示板【買います】 part116
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・
172 : ライナズィア
[件名] 求ム 花火師または打ち上げ花火
打ち上げ花火を探しております。花火自体の販売でも、作れる方のご協力でも、どちらでも構いません。
材料の採取なども可能な限り手伝わせていただきます。価格なども全く不明なため、相談させて下さい。
ご連絡、どうぞよろしくお願いします。
―――――――――
周りが全て、物品と性能と金額ががちがちに書かれた、自動販売機のような募集の中。随分と不明瞭で浮いた書込みになったなぁ。
まあ仕方ない。費用感も材料も、何も分からないのだから。と言うか打ち上げ花火を作成したという話を聞いたことがないんだから。
……爆弾があるんだから、花火も可能だと思うんだけどなぁ。それとも、やっぱり全然違うものなのかね?
現状、花火については掲示板に書き込んで反応を待つしかない。
取引掲示板を閉じ、次は目的別の掲示板の中でユーザーイベントのスレを開く。
―――――――――
ユーザーイベント掲示板 part36
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498 : ライナズィア
【スタッフ募集】
7/7 ユーザーイベント『七夕祭り』を開催します☆
七夕祭りの際に協力して下さるスタッフを募集中です。
暇人物好き祭り好き、一緒に皆でイベントを楽しみませんか?
詳細は、公式のイベント告知 <こちら> をご参照下さい。
七夕の夜に訪れる『奇跡』
スタッフとして、特等席でご覧になりませんか?
―――――――――
書込みを終えたのでお昼にしようっと。
いつも通り一人分の食事を、手抜きかつ手際よく用意する。
今日は……チャーハンにしよう。
適当に冷蔵庫の残り物を具材に放り込み、たまにはお好み焼きソースで味付け。
ついでに青のりと鰹節を掛け、お好み焼き風チャーハンの出来上がり。
食べてる間に書き込みはしない。なのでVRシステムをつける必要はなく、食事中はディスプレイの方を起動。
適当な掲示板の内容を
そうだな。
今書き込んだことだし、ユーザーイベントスレの雰囲気や状況を大ざっぱに確認しておこう。
告知を出したのが6月21日だから、6月始めくらいから見てみるか。
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ユーザーイベント掲示板 part36
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・
363 : リクイグアナ
最近ここも過疎ってる
364 : パインパン
先月の聖歌戦隊も、イベントの盛り上がりとしてはいまいちだったよな
ユーザーイベント=売名定期っぽくなってるからじゃね?
365 : リクイグアナ
おお戦士達よ! どこにいってしまったのだ!
366 : はっくしゃく
ベルンシア温泉おいしいっす
367 : パインパン
飲むなよw
368 : ジェントルし
女湯はおいしかったです。二重の意味で
369 : リクイグアナ
ヘンタイダー!!
370 : パインパン
おまわりさんこいつです
371 : じんぼ
>368 通報しました
372 : リクイグアナ
↑↑ここまでユーザーイベントに関する話題なし
過疎かなしす(´・ω・`)
―――――――――
ものすごく雑談スレ化してるなぁ。書込み数も、平均して二日で1件程度。
公式が定期的にイベントやアップデートを入れてくるし、大がかりなユーザーイベントなんかしてる暇がないっていうのも頷ける話なんだけどねぇ。
さて、日付的にそろそろ公式サイトに登録した頃なんだが―――
―――――――――
373 : ちづる
公式に目新しいユーザーイベントの投稿がありますね
―――――――――
「ぶふぅぅぅーーっ!?」
ちょっと待てぇぇっ!
おいちづる、あいつ何しれっと書き込んでんだ!?
いや確かに、メールを送信した後に公式に登録したけれど。したけれども!
ユーザーイベントするとか何も言ってないのに、当然のようにこっちが正式に投稿した直後に宣伝してくれてんじゃねーよ!
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