第3話 もう二度と金貸さない
私の乏しい人生の中の三大イベントの一つ。うち一つは2話目で書いた合同誌イベント(文章が気に入らなかったんで未公開)なんで、そんなにすごいイベントではないんだけども。
私は大学時代に付き合った男子がいましてね。世間知らずで処女な私にいろいろ濃い経験をさせてくれた自称ヤリチン10歳上のモヤシ男。人付き合いが超絶上手い人で話し上手で聞き上手で当時私含め私の友人は全員そいつに恋してたんだわ。
1話目で書いたように親友に乗り換えた挙句(その親友も私がそう思ってただけで私の目の前で私ウザイを連発するような子なんだけど、その時私はそれになぜか気づかず)高校生とデキ婚した奴なんだけど、私が仕事で精神を病むくらいしんどかった時に頼ってしまってから、また付き合いが始まった。
あん時はほんとひどかったわ。しんどかった私が相談したのがきっかけで悪いのは全部私なんだけど、その後ぽつぽつと連絡がくるようになって、その度にどっか知らん山奥に連れて行かれてたんだわ。帰りも深夜になるし。私は一回目で満足してもういいやな感じだったんだけど、毎回ここで降ろされたら死ぬと思って何もできんかった。
そのうち、金貸してって言われてなあ。最初は金額は忘れたけど万単位だったと思う。ちょっと不安に思いつつまたどっか山奥に連れてかれたらかなわんと思って貸した。
その後から、連絡がくるたび金を要求されるようになった。二回目の時そいつの先輩の車を担保にすると言われて安心したんだが、なぜか当然のようになしになってた。
それと同時期くらいに、大学時代の友人と久々に会ってつい口を滑らせてそのことを相談してしまった。その子は大学時代にストーカー被害に合っててその経験から縁を切る提案をしてきた。今思えばそれに従ってたらよかったのに当時の私はまだ奴を信じてたし、その時点でも相当な額貸してたから、そのアドバイスを無視してしまった。それどころかその友人に嫌悪感を抱いた。本当馬鹿だったなあ私。その子と連絡する勇気も未だ出ないわ。
そのうち奴から連絡がこなくなった。慌てた私は聞いてた住所に金返せな手紙を送ったんだが、それがいけなかった。付き合いはまた始まり、さらに金を貸すことになる。
当時の私は本当世間知らずで責任感が強かった。私は一応世間的に言う高給取りだったんで、余裕があるのに私が助けないとこの人どうなる?と思い込み、金返すという言葉を信じどんどん貸してた。奴がやつれていくのも見てた。自分しか助けられないと思ってた。
そのうち、奴の知り合いという得体の知れないオヤジも加わり、そのオヤジにも金をせびられ、恐ろしくて貸してしまった。(オヤジは奴がのちに締めたんで一回で終わった。金返ってきてない)
次一円でも返さなかったらもう貸さない、と言ったことがある。でも奴は返さないうちに連絡してきた。私は貸さないと言ったよね、と勇気を出して言った。奴どう言ったと思う?「お前は俺を銀行強盗にしたいのか?」一時間ほど説教された。私は泣きじゃくってた。
そいつからの連絡が恐ろしかった。でも受けないともっと恐ろしいことが起こると思って言いなりになってた。
ちょっと面白いエピソードがある。当時奴がアルバイトしてた職場で金が消えたことがあったそうだ。俺取ってないのに職場の人たちに疑われて二進も三進も行かないから、その金職場に入れないと気が済まないということで、私にその金を出させた。もう今思い出しても笑えるわ。なんやねんあいつ。職場で金消えたというのも私から金出させるための方言じゃね?
結局、ある時奴が「俺の友人ヤクザの知り合いなんだよね」とか言ってきたので、縁を切るために動き始めた。本当私気づくの遅かった。奴の言うこと脅し以外の何者でもないよね。そうだよね?まあ奴にとっては、いつも通りの俺すごい的な自慢話だったんだろうけど。
その時までは本当に奴を信じてた。お金も返ってくると思ってた。返してくれると思ってたし友人に戻れると思ってた。「俺の友人ヤクザの知り合いなんだよね」それで全部壊れた。恐怖以外何もなかった。
電話番号変えた。引っ越しした。それで私がお前を拒絶してるという意思を示したかった。突発的に番号変えてしまってから引っ越しに動いたから、その間一ヶ月ほどあった。電話が繋がらないことに気づいた奴にうちに乗り込まれたらどうしようと生きた心地がしなかった。あの一ヶ月の恐怖は忘れられないし、当時の大家さんに迷惑をかけてしまったのに逆に心配されたのも忘れられない。いい大家さんだったのに。いい部屋だったのに。
職場は変えなかった。奴のせいで当時気に入ってた職場まで変えさせられるのは我慢ならなかった。
一応奴にも矜持が残ってた。一度私の存在を確かめるような意味不明な電話が職場にかかってきたがそれ以外当分連絡がなかったから。女子の声だったので、おそらく奴の奥方様だったと思われる。まあどうでもいいんだけど。
奴に貸した金は恥ずかしすぎて額言えない。奴と私と私のお母さんだけ知ってる。いや、奴は多分もう忘れてるだろうな。貸してた当時からいくらなのか私に聞いてきたくらいだから。もしかしたら死んでるかもしれない。
それきり私は金を人に貸してない。貸すくらいならあげる。その精神で生きてる。
金貸してと言ってくるような親しい知り合いもいないんだけども。
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