【駆逐艦】Destroyer

菊月【睦月型駆逐艦 九番艦】

KIKUZUKI【MUTSUKI-class Destroyer 9th】




起工日 大正14年/1925年6月15日

進水日 大正15年/1926年5月15日

竣工日 大正15年/1926年11月20日

退役日(放棄) 昭和17年/1942年5月5日(ツラギ港擱座)


建造 舞鶴海軍工廠

基準排水量 1,315t

垂線間長 97.54m

全幅 9.16m

最大速度 37.25ノット

馬力 38,500馬力

主砲 45口径12cm単装砲 4基4門

魚雷 61cm三連装魚雷発射管 2基6門

機銃 7.7mm単装機銃 2基2挺

缶・主機 ロ号艦本式缶 4基

艦本式ギアードタービン 2基2軸




【現在も海上で姿を確認できる唯一の帝国海軍艦 菊月】


【菊月】は竣工当初は「第三十一号駆逐艦」と呼ばれ、昭和3年/1928年8月1日に【菊月】と改称されます。

【菊月】は最後に大正時代に竣工した駆逐艦となります。


太平洋戦争では【卯月・夕月】とともに第一航空戦隊・第二航空艦隊所属で第二三駆逐隊を編成し、二航戦の護衛や「トンボ釣り」を行っていました。

しかし「真珠湾攻撃」の時は、海軍が口酸っぱく要求されている航続距離不足のため参加できず、残念ながら第二三駆逐隊は「グアム島攻略作戦」の護衛へ回されています。

この作戦に参加したのは第二三駆逐隊の他には、【曙】、【敷設艦 津軽】、【特設水上機母艦 聖川丸】。

さらに第六戦隊の「古鷹型・青葉型」2隻ずつという内容で、メンツを見る限りも主力とは言えない面々が回らされた作戦でした。

作戦は無事成功し、その後はラバウル方面、ラエとサラモアの攻略、そして「アドミラルティ攻略作戦」の支援任務に就きました。


昭和17年/1942年4月下旬、第二三駆逐隊はポートモレスビー作戦のためにツラギ島占領を命ぜられ、【敷設艦 沖島】を護衛してラバウルへと進出しました。

幸いツラギ島はオーストラリア軍守備隊が撤退しており、占領に向かった第一九戦隊は被害なく5月3日に占領は成功しました。

しかしこの動きを暗号解読によって事前に察知していたアメリカは、すぐに刺客を差し向けます。

【米ヨークタウン級航空母艦 ヨークタウン】です。

本来であれば【米レキシントン級航空母艦 レキシントン】も一緒に向かうはずだったのですが、給油中だったために【ヨークタウン】が先行してツラギ島へと猛進します。


5月4日早朝、【菊月・夕月】は【敷設艦 沖島】へ横付けし、補給を受けていました。

ところがその補給作業中、出鼻をくじくために派遣された【ヨークタウン】から飛び立った艦載機が3隻に襲いかかります。

【菊月】は【沖島】から離れて攻撃を回避しようとしますが、対応する間もなく、横付けした状態で四番主砲の後ろに爆弾を受けてしまいました。

被弾の被害は大きかったものの、まだ動くことができた【菊月】は何とか【沖島】から離れ、対空戦闘の準備に入ります。

しかし当時の日本の船は対空装備が疎かで、【菊月】がこれらに対抗する術はほぼありませんでした。


【沖島】から離れた直後に、今度は「TBD デヴァステーター」8機が【菊月】らに殺到。

【菊月】は回避する間もなく右舷機関室に魚雷を受けてしまいます。


足をやられた【菊月】は航行不能となり、沈没を避けるために【特設駆潜艇 第三利丸】によって隣のガウツ島ハラボ水上機基地まで避難曳航され、擱座します。

同じく空襲に巻き込まれたものの、幸い航行可能だった【沖島】は、【菊月】の乗員を乗せてラバウルへと避難しました。

しかし【菊月】は被雷による浸水が酷く、じわじわと沈下が進み、やがて沈没してしまいます。

乗組員も避難していたことから、【菊月】の旅路はここで終わってしまいました。


やがて昭和17年/1942年8月から始まった「ガダルカナル島の戦い」において、米軍は死闘の末にガダルカナル島の奪還を達成します。

この時にアメリカは浅瀬に沈んでいた【菊月】を発見しており、アメリカは敵国の駆逐艦の構造を丸裸にするべく、【菊月】の調査を決定。

浮揚させた後は、通称「トウキョウベイ」と呼ばれる現在の沈没箇所付近まで移動し、【工作艦 プロメテウス】の手によって修復を受けます。

そのあとは装備から構造まで徹底的な調査がなされました。


調査が終了すると、【菊月】は、復旧使用ができないように砲身の切り込み、切断、スクリューの切除などの処置が施された後、沈められることもなくその場に放棄されてしまいます。

この時、【菊月】を日本の駆逐艦として誤認させるように囮に使えないかという案もあったようですが、恐らく戦況が有利に傾いたことから、この案は採用されることはありませんでした。


やがて戦争は集結し、さらに70年の年月が流れましたが、【菊月】は風化や腐食によって無残な姿になりながらも、まだ一部を海上にとどめています。

彼女は特設艦や病院船を除き、いわゆる戦闘用の艦では唯一海上に現存する駆逐艦となっています。

しかし昨今の海面上昇問題や、何十年も風雨と海水、潮風にさらされているため、今はほとんどが海中に沈んでしまっています。


そんな中、2016年現在、「菊月保存会」の方々の活動により、この【菊月】の四番主砲の砲身を引き上げ、母港となる舞鶴への常設設置のための取り組みを進めていらっしゃいます。


「一般社団法人 菊月保存会」


そして2019年6月9日、「駆逐艦菊月会」が、会が作成された復元図を無料公開されることを公表されました。

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