第5話 皐月の夜は更け、月光は満ち…… Part5

〈2122年 5月7日 11:12PM 第一次星片争奪戦終了まで残り約1時間〉

―ソノミ―


 “多勢に無勢”とは、数刻前の私の置かれた立場を表わす言葉として、最も相応しい言葉であった。

 劇場。幻想世界を意識させる意匠デザインが施された大扉を開いた先――私を待ち構えていたのは妖精や小人、精霊たちなどではない。黒金の突撃銃を握りしめ、白の装甲服に身を包んだげに度し難い連中。


 彼らは――“世界の防衛者”を騙っている、狼藉者に他ならない。


 そもそもだ。彼らの親玉である国際秩序機関IOOはいったいこれまで何をしてきた?イベリス内戦に世界防衛軍WGを送り込み、異能力者を“人型兵器”だと呼ばれるきっかけを作った。そして反異能力者の声が高まれば、今度は異能力者を規制するための法を制定した。終いには奇跡の欠片星片の情報を秘匿し、こうして“世界の防衛者”様を日本へと送り込み、戦いをより激しいものにしている。


「はああアアアぁぁァァァッッッ!」


「うぐっ!?」


 私は国際秩序機関IOOが、世界防衛軍WGが嫌いだ。自分の方が正しいと思うから憎む――?違う。ただいけ好かないんだ。その一挙手一投足が。

 だから――斬るkill斬って殺して斬って殺して斬りまくる殺しまくる

 特定の個人への恨みではなく、組織全体への怒りが私を突き動かす。彼らをのうのうと生かしておけば、世界に明日はない。だから私は正義の使者として裁きを――なんてことは露も思ってはいない。


 私はただの人殺し。裏社会に身を置いて、依頼を受ければ誰であれ手にかける。そんな奴に、世界防衛軍WGを目の敵にするだけの大義はない。

 それに……あまりにも奴らは強大だ。国際秩序機関IOOがもはや国際連合体としての機能を超越し、独立した意思を形成する国家となっていることは言うまでもない。そのようにして国家国際秩序機関IOOを考えてみたとき、その軍事力は他の国より頭一つ飛び抜けている。   

 アメリカ、ロシア、中国。21世紀における軍事力トップ3の国が束になってかかったとしても、世界防衛軍WGに敵うかは怪しい。その理由は兵士の数ではない。国際秩序機関の大陸であるアトランティスの人口なんて、せいぜいアメリカの三分の一程度。

 では何故それほどまでに国際秩序機関IOO及び世界防衛軍WGが脅威なのか――それは、2175年にイギリスはエディンバラで行われた会合において、「全ての国家は核兵器を放棄し、残存する核兵器は全てアトランティスにおいて処分する」ことが決定されたからだ。

 果たして国際秩序機関IOOは実際に処分をしたか?そんなの――するわけがなかった、というのがクソったれな結末だ。


「うらぁァァァァァッッ!!」


「ぐはぁっ!?」


 数えるのも面倒な程に大量にいたはずの兵士共も、残すところあと3人。

 それでも、果敢に銃口を私に向けてくるのだから――その気概だけは認めてやる。

 きっさきを兵士たちの目に向けて構え、息を吸い込む。そして、ファンシーな模様が描かれた床を蹴り飛ばす。


「撃て、撃てぇッ!!」


 甲高い音が踊るバガガガガンッッッ、踊るガガガンッッッ。

 けれどそれは私にとっては恐怖の対象にはなりえない。そんなもの――ゴミにたかる蠅と同じだ。


「だアッ!!」


 刀を握る右手を右上に振り上げ、天を味方にして薙ぎ払う。


――銀閃。


 窓から差し込む青白い光が、銀の刀身で反射した。

 斬撃は空気を振るわし、無色透明そして剣呑な衝撃波を生み出す。

 故にそれは――剣圧と呼ぶに相応しい。


「ぐあああああっッッ!!」


 激浪は容赦などしない。薄い翅のはためきなどでは、抗うだけの力と成り得ない。

 無論――人の脆弱なる身体など、怪我をするだけではすまない。


「ふん!くだらんな。その程度の実力で戦場に来るなど、片腹痛いわ」


 倒れバタリ倒れバタリ倒れるバタリ。兵士たちは仲良く地面へと接吻をした。

 刀身に滴る血は錆の原因。空を切り、それを振り落としてから納刀キン。うむ、いつ聞いてもこの音は小気味良い。


 冴え島本社ビルを後にしてから、私たちはテウフェルの連中の力添えのお陰で、危なげなく遊園地内部へと侵入することが出来た。のではあるが……グラウの奴、いつの間にあんな連中と繋がりを築いていたんだ?相手はヨーロッパ最大のマフィアだぞ?よくもまぁあんなに親しげにしていられる。

 園内は当然のことながら、白の世界防衛軍WG、青の毘沙門、黒のテラ・ノヴァの三つ巴の攻防が繰り広げられていた。が、そのようなものにいちいち構ってなどいられない。私たちは茂みに隠れこっそりこそこそ進んでいき……それぞれ目的地を目指し散らばっていった。

 私は劇場、グラウはサッカーアリーナ、ネルケは噴水前。別にこの配置に意味などはないのだが、果たして誰が本物の星片へと辿り着くだろうか。


 しかし……エントランスには、骨のある奴が一人たりともいなかったな。いや、異能力者が一人もいなかったと言う方が正確か。

 おそらくグラウの言う通り、星片を所持しているのは異能力者の兵士。そしてその異能力者は――この奇天烈な模様が描かれた扉の先、劇場の内部にいるはずだ。


「ふぅ………」


 深く息を吸い込み、肺に新鮮な空気を送り込む。

 きっとこの戦いが、第一次星片争奪戦における私の最後の戦いになる。

 有終の美……そう言えば私はこの言葉を、兄様と戦っている最中にも思い浮かべていたっけ。

 私は――グラウにネルケに、そしてゼンを……裏切った。己の目的のために、あいつらに毒を盛るような真似をした。だから私は、P&Lに居場所を失っても仕方がなかったというのに……グラウとネルケは私を許してくれた。

 あいつらには感謝してもしきれない。兄様を喪った私にとって、よすがと呼べる場所はもうあそこしかないんだ。だから私は、命を賭けてでもあいつらに報いる。この命は全て、あいつらに捧ぐと決めたのだ。

 それでお前も許してくれるだろうか……ゼン?


「……よし!」


 覚悟は出来た。

 いざ尋常に、中へと向かうとするか――


「――おおっ、どんなガタイの良い男が入ってくるかと思っていたけれど……まさかこんなに可愛い子猫ちゃんだったとはね」


「あぁん?」


「そう睨まないでくれよ。可愛い顔が台無しだぜ☆」


 極彩色に飾られた劇場内部。中心部には円形の舞台、そこを目指して客席は段差を下るように配置されている。

 客は人っ子一人おらず、がらんどうの様相を呈している。

 森閑。いっそのこと厳かさすら感じる。

 そのような空間において、静寂と言う名の秩序を乱す男が一人。

 顔は美形。黒のシルクハットに、青いコート。その背中には、何故かバックパックを背負っている。


 あぁ……ダメだ。人を第一印象だけで判断するのは良くないが……コイツは生理的に受け付けないタイプの男だ。

 そんな奴に舞台上から深々とお辞儀をされたところで、私はただ唖然とすることすら出来ない。


「なんだお前?私はお前の敵だぞ?」


「ふふふっ、君に敬意を示すよ子猫ちゃん。君が僕のものになってくれるなら――部下たちのことを水に流してあげよう。どうだい、悪くないだろ?」


 この私に“僕のもの”になれだ……?

 ああ――虫酸が走って仕方がない!


「ふざけるなッッ!!貴様の様な性根が腐った野郎に、私の心を売るつもりはない!!いいか、私はなぁ……ちょうどお前の真逆の様な男がタイプなんだよ。普段は冷静沈着、でも、仲間の窮地には熱くなって……自分を犠牲にしてまで、私のことを助けに来てくれるような奴が好きで仕方がないんだよっ!!」


 って、私は何を宣わっている!!?

 まるで思考をせず、脊髄で口にしてしまったような……そうか。私は頭で考えもせず、好きな所並べられるぐらいには――あいつ・・・に、惚れているんだな。


「う~ん、僕が嫌いな様な人種がタイプなんだね……それじゃあさ――星片をあげると言ったら、少しは気持ちも揺らいでくれるかな?君の目的は、どうせこれなんだろ?」


 そう言って男が左ポケットから取り出したのは、紫色の菱形の結晶。

 それが何なのかは一目瞭然――星片だ。

 あれでラウゼはずる賢い所があるから、研究部門を追い出されてからも今の今まで研究データを保存していた。そのお陰で星片の実物の写真を私たちは見る機会に恵まれたわけだが……ふむ。似ているとまでは言える。しかし、最大の特徴である濁りまでは、この距離では確認することが出来ないな。


「確かに、私の目的はそれだ。だがな、優男。私は物で釣れるほど安い女ではないぞ?」


「ふふっ!そうかい!!それならば――良かったよ!僕はね、従順な女の子なんかより、気の強い女の子が好きなんだよ!何故だと思う?屈服させたくなるからだよっ!!」


 目をこれでもかと見開き、熱のこもった声で聞いてもないことをべらべらと――反吐が出る。

 でも、気の強い女か……若干傷つくな。私、そんな傍からはそんな風に見えるのか?淑やかに生きようとしてきたのに、何処かで道を踏み外してしまったのだろうか。

 問題なのは、あいつ・・・がどう思うかだ。今の性格では、やっぱり可愛げがないのだろうか?でも、私はネルケみたいに素直に自分の気持ちを表現するのが苦手だし……ううん!何を弱気になっているんだ私は!あいつ・・・ともっと親密な関係になりたいのなら、そんなことを悩んでなんていられないだろう!!


「それでさ、子猫ちゃん。君が僕の気持ちを受け容れてくれないというのなら……僕も手段を選べなくなる」


「異能力も厭わない、と?」


「その通りさっ!僕は強いよ……そして手加減が苦手なんだ。もしかしたら君を殺しちゃうかもしれない。だから、子猫ちゃんの美しい名前を先に聞かせてもらえないだろうか?」


 こんな男に名前を教える義理なんてない。いっそ、即興で作った偽名を叫ぶのもありかもしれない。

 だが、どうせ私の名前を知ったところで、お前の未来は変らない。

 ならば――冥土の土産に教えてやるよ!


「ふんっ!知らざぁ言って聞かせやしょう――P&Lが一刀、御都苑巳とは私のことだッッ!!」


 左手で鞘を掴み、右手で柄を撫で――強く握りしめる。


「苑巳ちゃんかぁ……綺麗な名前だ………でも、物騒な子猫ちゃんだ」


 人をイヤらしく舐めるように上下に見てきやがって……簡単に死ねると思うなよ?


「さぁ、苑巳ちゃん。君が従順になるまで、痛めつけてあげるよ!!」


 やがて短い沈黙が訪れる。

 私は目を瞑り、男を葬るまでの段取りを思い描く。

 劇場はそれほど大きいわけではない。男と私との距離は、目算20メートル程度。高低差を利用すれば、一気に私の得意とする間合いを取ることが出来るだろう。


 そこまで考えれば――あとは、行動に移すだけだ!


「ふぅっ……だアっッッ!!」


 軋む床を蹴り飛ばし、段差を勢いに身を任せ駆け抜けていく。

 さて、かなり無防備な突撃だと自覚しているが……お前はどう仕掛けてくる?


「子猫ちゃん、君の好きにはさせないさ!」


 男は背中へと右手を回し、何かを取り出したと思えば――複数の銃身、提げ手に、三脚。いかにも鈍重そうな見た目をしたそれの名前は――機関銃マシンガン


「お食べよッッ!!」


 男は右手で握把グリップを、左手で提げ手を握り、三脚を地面へと固定しないままそれを私へと向け、多数の銃身がキュウリキュルリと音を立てながら回転を始めた。そしてほんの数秒後――鼓膜をつんざくような轟音を伴いながら、脅威の弾幕が私目掛けて襲い来る。


「ちいっ!?」


 ガドリング銃。詳しくは知らないが、1秒に100発近くの銃弾が吐き出されると聞いたことがある。そんなものをまともに食らえば、生身の人間なら痛みを感じる前に死んでしまう。

 このまま男目掛けて突き進めば、私は穴ぼこになるだけだ。仕方ない。今は身をなんとしても生きることに注力するしかない。


「くうっ!?」


 だが――そう簡単に弾幕から逃れられるわけもない。

 大きく伸ばした足を引き戻し、咄嗟に向きを変えたが、完全回避など間に合うわけがなかった。

 焼かれるような、意識を遠ざけるような激痛が、身体の至る所で犇めき合い共鳴を始める。しかしここで痛みに屈してしまえば――私の命はない。


「ぐっ!?はぁっ、はあっ、はあぁっ………!」


 激痛に喘ぐ身体に意思という名の鞭を打ち、半ば倒れるように客席の背後へと身を隠す。

 ガガガガガガガッッッ。未だ弾丸の合唱は続き、座席は削られていく。

 一定の所に留まっていれば、座席もろとも私は吹き飛ばされる。だから這うように、遠くへ、遠くへ……っと、ようやくか。


「弾切れか。残念だなぁ~~」


 機関銃マシンガンの弱点。それは、あまりのスピードで弾を撃ち出すものだから、弾薬の消費が激しい。

 運が良かった。無尽蔵に撃たれていたら、いずれ私は逃げ場をなくしてしまっていただろうから。


「ちぃっ………」


 手甲、脚絆など、あの猛威の前には無力であった。

 身体の至る所の血肉が、銃弾により抉り取られていった。溢れ出した鮮血が、漆黒の上衣と蒼黒のスカートを深紅に染め上げていく。ソックスも、もはや元が紫色であったことすらわからない状況。

 でも――それだけではない。左足の太ももに、二発ほどの銃弾が食い込んでいる。

 幸いそれほど深くはない。これくらいなら今すぐ取り除いて――


『ソノミ。もしも刃物が突き刺さったり、銃弾に貫かれたりしても、それを即座に引き抜くような真似は避けろよ?』

『どうしてだよ、グラウ?異物が身体に入っていたら気持ち悪いだろうが』

『まぁ、確かにな。でも、せめて引き抜くというのであれば、気絶しても良いような状況でにしておけ。それで、そのまま放置した方が良い理由だが……それ自体が栓になっているからだ』

『栓を抜けば、勢いよく血が溢れ出す?』

『その通りだ。それとソノミ、お願いだから無茶はしないでくれよ?いつでも俺が駆けつけるわけではないのだから』

『ふん……心得ておく。その……ありがとうな』

『礼には及ばない。俺はソノミの先輩なんだからな』

 

 もう……懐かしい記憶だ。

 あれはグラウと出会って間もない頃。私が一人突っ走って、敵に挟み撃ちをされ……不覚にも銃弾をもろに喰らったことがあった。

 私はその場に倒れ、終わりを悟った。でも直ぐにグラウが駆けつけ、瞬く間に敵を撃ち抜いていった。

私が気絶から目を覚ますと、グラウは私の身体を貫いた銃弾を全て取り除き、包帯を巻いてくれていた。そして、『銃弾を抜くな』とか言っていたっけ。

 ふっ……私はお前に助けられてばかりだな、グラウ。ありがとう、お前の言いつけに従うとするよ。


「それでも……」


 銃弾は身体にとって異物。痛いのはそうだが、それよりも気持ち悪さの方が勝る。


「さて、子猫ちゃん。そろそろ隠れるのは終わりだよ」


 再び始まった地響きのような音――装填が完了し、再び銃身が回転を始めたようだ。

 身体が気怠くて堪らない。意思を強く持たねば、簡単に気絶してしまうことだろう。

 長くは持ちそうにない。それならば――こちらから決めにいくしかないだろう。


「さぁ、時間だ――!」


 轟音が開始された。

 だから、私は――!


鬼化きかッッ!」


 腰の紐を引きちぎり、痛みをねじ伏せるようありったけの声で叫んだ。

 青き閃光が私の身体に駆け巡り――蒼天の甲冑が私を包んだ。


「今のは……ッ!子猫ちゃん!?」


 男は瞠目し、口をぽかんと開けたまま。

 私が怖いか?私は青鬼、誰にも愛されることを許されない存在。

 でも、今は――あいつ・・・からは愛されたいと思うんだ。


「ふぅ……はぁァァァァッッッ!」


 今度は逃げも隠れもしない。男へと一直線に駆け抜ける。


「近づかせるわけないよねっ!」


 硝煙が上がり、弾雨が降り注ぐ。

 鬱陶しい銃弾――全て叩き落としてやるッ!


「だアァッッ!」


 虚空を斬り裂き――太刀風は凄風となり、向かい来る全ての銃弾が吹き飛んでいく。


「はあっ!?……ちっ、弾切れっ!?」


 天は私に味方したか。もう、弾幕を張って迎撃されることはない。

 道は開けた。威風堂々、このまま――!


斬るkillッッ!」


 階段から舞台へと飛び移り、男まで後3メートル。

 ここまで来れば、後は刀を振り下ろすだけ――


「っと、このまま終われないよねッッ!」


「っ!?」


 男は機関銃マシンガンを放棄し、バックパックに右手を突っ込み取り出したのは――細長い散弾銃ショットガン

 あぁ、なるほど。そういうことか。ようやくお前の異能力が何なのかわかったよ。機関銃マシンガンなんて巨大な銃に加えて散弾銃ショットガンなんて、普通バックパックに収納しきれるわけがない。

 だから、お前の異能力は――バックパックに右手を入れれば、望んだ銃を取り出すことが出来る。そんなところだろ?

 そのチョイスは良い。確かに散弾銃ショットガンは至近距離で絶大な威力をもつからな。それを喰らえば、私は肉片に変わるだろう


 だが悪いな。もう――


「遅いッッ!」


 この間合いで、私が引けを取るわけがないんだよ――手首を回転させ刀の向きを変え、先ずは男の右肩に振り下ろすッッ!


「ぐふっ!?」


 血飛沫が上がり、右腕が宙を舞う。

 これでお前の敗北は確定した。でも、私を“子猫ちゃん”などと呼び、散々怒らせたからには――その命でもって償ってもらおう!


斬るkillッ!」


 刀を頭上に振り上げ、情け容赦手加減一つせず――男を両断する。

 二つに分かれた男は断末魔をあげる間もなく、自分に起きたことを理解していないまま絶命した。

 返り血が、私をより一層赤く染め上げていく。これでは……青鬼なのか怪しい姿だな。


「ん?」


 コロンと、男のポケットから転がったのは――星片と思しき結晶。

 それを拾い上げ、非常灯の光に翳してみるが……ちっ。


「偽物だな」


 こいつ、「星片をあげよう」とかほざいていたくせに、結局偽物なのかよ。最低な法螺吹き野郎が……。地獄でたっぷり反省するんだな。

 私が外れを引いたと言うことは、グラウとネルケのどちらかが本物を引いたということだ。集合地点はグラウの向かったサッカーアリーナ。そこに行けば結果がわかる。


 でもそれは――銃弾を引き抜いた後になるが。


「ふう……第一次星片争奪戦、ね………」


 これはあくまで第二星片を巡る争奪戦。第三、第四、第五星片と、後三回争奪戦は残されている。

 その度に、私たちは数多くの敵と相対し、いつだってそう簡単に勝てるわけではない。この身にいくつもの傷を負い、多くの血を流すことになるのだろう。

 それでも、あいつら……ネルケは今回限りか。だから、グラウと一緒なら――


「兄様……どうか、天より私を見守っていてください。苑巳は、御都家の名に恥じぬ大輪の花を咲かせて見せましょう」


※※※※※

小話 ソノミの自己紹介


ソノミ:自己紹介をしろだ……?いったい誰のためにだよ?


ネルケ:流石にわたしもそろそろ目測が付いてきたわよ。例えばソノミのバストサイ――もごごっ!?


ソノミ:黙れよネルケ……斬られたいのか?


グラウ:(二人が何を言っているかよくわからない。凄く疎外感を感じる……)コホン!えっと、自己紹介は外の世界に向けてだ。それで納得してくれるか?


ソノミ:……やっても良いが、あまりにも遅すぎないか?こういうのは、もっと早くやるものだろ?


グラウ:……その点に関しては、何も言い返すことが出来ない。その時の気分で小話をやってきた作者の責任だな


ソノミ:そうかよ。はぁ……自己紹介、か。私は御都苑巳。年齢は19。性別は女。


グラウ:いや、その程度の基本情報は改めて言わなくても良いぞ?


ソノミ:……ちっ、面倒だな。武器は刀。異能力は鬼化。これで良いだろ?


ネルケ:ソノミ――――まぁっ~~~~たくダメっ!!何よその投げやりな自己紹介わ!まったく可愛げが一切感じられないわ!!


ソノミ:あぁん?!ならばお前が手本を見せろよ!!


ネルケ:当然わたしもやるわよ。でもそれは次回って決まっているの。だから……わたしが良い感じの質問をするから、それに答えていってね。それじゃあいくわよ――


ソノミ:やるとはまだ言っていないだろうが――!


ネルケ:好きな食べ物は?


ソノミ:……っ、納豆。ひきわりではなく、ちゃんとした粒のやつ。大粒より小粒の方が好きだ


ネルケ:好きな動物は?


ソノミ:うん……狐あたりかな


ネルケ:その理由は?


ソノミ:あの耳とキリッとした表情が好き。そしてもふりたくなる尻尾とか最高だろ


ネルケ:それじゃあ特技は?あっ、当然「刀」とかいう無骨過ぎるのはなしね


ソノミ:なんで制限かけられなければならないっ!でも……強いて言うなら家事全般とかじゃダメか?


グラウ:ソノミなら、“料理”と答えても良いんじゃないか?ソノミの料理の腕前は、俺の胃袋を鷲づかみにするぐらいだからな


ソノミ:お前……だから、そういう恥ずかしいことを面と向かって言うなよ、バカ……


グラウ:?


ネルケ:(わたしの前でグラウといちゃつき出すなんて、ソノミも良い度胸しているわね!)むぅ……それじゃあ最後に一言、何かどうぞ!


ソノミ:一言……私はまだまだ未熟。しかしそんな私の刀が役に立つというのなら、全身全霊をもって敵を斬り捨てよう。私の新たな生きる意味をくれた、グラウのた――げふんっ!


ネルケ:じぃ~~~~っ!


ソノミ:なんでもないからな、ネルケ!グラウ、さっさと終わらせろ!!


グラウ:(最後、なんて言おうとしたんだ……?)それじゃあ次回は、ネルケの自己紹介だな。お楽しみに



▽御都 苑巳(みと そのみ)

〇基本情報

年齢:19歳

身長:155cm

武器:刀

異能力:鬼化

〇詳細

 本作のメインヒロインの一人。一人称は私。仲間からはソノミと呼ばれている。

 美形の顔立ちをしているが、まだ年相応のあどけなさを残している。瞳の色はサファイアの青で、少しつり目。唇はベージュの色。髪色は濡れ羽色で、ロングの髪を青い蝶々の柄の簪でポニーテールに結い上げている。

 “和琴を撥で弾いたような雅を感じさせる”ような声の持ち主。香水は付けていないが、白檀の香りがほんのり漂う。

 華奢。ネルケからは身体の一部分をイジられることがたまにある(小話)。

 着用しているのは、黒い生地に背中に青鬼の刺繍が施されたノースリーブ上衣。蒼黒の着物地のミニスカート。紫色のニーハイソックス。左腰には刀を、右腰には青鬼の面を括り付けている。

 防御のための装備は手甲と脚絆程度。これは機動性を確保し、身軽に動き回る戦闘スタイルを反映したためである。

 異能力は鬼化。腰に括り付けた青鬼の面を顔に宛がい、「鬼化きか」と叫ぶことが発動条件。発動後は青い光が彼女に降り注ぎ、蒼天の甲冑を装備することになる。機動性は少し損なわれるものの、甲冑は大抵の攻撃を防いでしまう他、彼女自身の腕力も格段に向上させる。

 グラウ曰く、“無愛想”であったが、兄に関する一件により大分性格が変化した。仲間との心の隔たりは消え、かなり友好的な性格となる。

〇余談(相当はっちゃけているので、注意です……)

・兄様は“アニサマ”ではなく“にいさま”。

・P&Lのツッコミ担当?

・リメイク前は肌の一つも見せない真っ黒な装甲服を着ていた。でも、それじゃあ可愛げがないじゃないですか。

・刀×制服の王道的な衣装にしようとしたけれど、年齢がね……

・一応「知らざぁ言って聞かせやしょう」が彼女の決め口上になるはず。

・こんな話をして消されないか不安だけれど、現状のソノミの雰囲気を表わすような曲と言えば、“天野月(子)”さんの『劔』

・げには実はという意味の古語ですね。

・髪の色は黒じゃないよ。濡れ羽色だよ!

・簪でどうやってポニーテールにしてるか?クルンとしているんだと思います。

・ネルケから何処をイジられているかって?そんなのおっぱ……おや、誰かが来たようだ――

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る