第18話

「はい、どうぞ」


その人はハーブティーを出してくれながら、

僕の事をジロジロと見ていた。


「やっぱり!あんた青高だったでしょ?」


青高というのは、

僕の通っていた青沢高校のことだった。


「そうですけど…」


「この前は色々と焦ってたから気付かなかったけれど、あんた知ってる。見た事ある」


「そう…ですか」


「みちも青高だったって、気付いてた?」


「えっ!?…今知りました」


「みちは高校の時から、あんたの話してた。

私は違う高校だったんだけど。でも、みちに連れられてライブ見にいったこともあるよ」


そんな事、みちさんは一言も言っていなかった。


「で?今日は何?ケンカ?」


「いや、そういう訳では…ただ仕事だって出たのに、休みだってことに気づいて」


「そうなんだ」

そう言って、その人はハーブティーをひと口飲んだ。



そして、突然


「あたし、みちの事好きだから。というより愛してる」


僕は飲もうと思って口に持って行ったカップを飲まずに置いた。


「みちにも言った。1か月ちょっと前に。

その直後だね、捨て猫を拾ったのは…」


そう言って僕の事を見た。


「捨て猫って言い方…」


「みちは戸惑ったんだと思う。ずーっと一緒にいた私からの言葉に。でもね、みちも私が好きなのよ。自惚れでも何でもなくて。」


「…どうしてそんな事がわかるんですか?」


「私は物心ついた頃から自分の気持ちに気づいていた。けれど、みちまで私の方に引きずり込むのは嫌だと思った。だから、恋人を作ったの。みち以外なら女でも男でも関係なかった。相手には困らなかったし。」


そうだろうなと思った。

それくらい、その人はキレイだった。


「でも、それを知ったみちはしばらく寝込んだ。寝込んだって具合が悪いって事じゃなくて目を覚まさなかった。3ヶ月間も」


3ヶ月!?


「その間、私も死にたかった。でも、万一みちが目を覚ました時の事を考えるとそれは出来なかった」



僕は毎度の如く、言葉が出なかった。










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