依子
ヤドリギ
第1話
依子は幼い頃より気性の荒い娘であった。
それこそ髪一つ結うのにもああでもない。こうでもない。と、我儘を言い常に使用人たちの手を煩わせた。
ある時は使用人の扉の閉める音が気に入らないと顔に向かいグラスを投げつけた事さえあった。
その時の怪我は顔を4針も縫うほどの大きなもので、その使用人は他の働き口も見つからず屋敷で依子に怯えながらも働き続けている。
しかしながら依子にはそれが許される風格や知性とでも言い表したら良いのだろうか。
とにかく、普通ならざらぬ雰囲気を纏う娘であった。それ故、彼女は孤独だった。
ある時、依子は母に言ったことがある。
「ねぇ、わたしきっとこの世の者じゃないわ。」
普通の親子ならば何を馬鹿な事を言っているのだと嗜めるであろうが依子の言葉には説得力があった。
母は、
「あら、そうね。そうかもしれないわね。」
と、答えるのである。依子の母もまた依子が恐ろしかったのだ。
当たり前のことだとは思うが依子には人間の友達はいなかった。
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