桐谷レイト君の災難
@Omega000
プロローグ
君は宇宙人や超能力者、変身ヒーローをいつまで信じていただろうか?
はっきり言おう、初めから信じていなかった。
いや、それを言うと嘘になるな。
幼い頃はもしかしたら地球のどこかにいるか、あるいは宇宙のどこかに居るかもしれないくらいに信じていたが、小学校高学年になる頃にはテレビに映るヒーローの中身は変身ポーズを取るイケメン俳優、または美人女優ではなく、どこの誰だか知らないオッサンだという事は分かっていたし、ぞくぞくとフォームチェンジをするのは玩具を売る為の戦略だと言う事に気が付いた。
中学を卒業し、高校生になった頃は、日曜の朝にはテレビを付ける事はなくなり、代わりに友達を呼んで、一日中ゲームに明け暮れていた。
ゲームにハマって居たとしても、ゲームの世界も現実にはないフィクションだと言う事は知っていた。
例えば、猟奇殺人が相次ぎ、調査してたいら奇妙な館に迷い込み、地下に研究施設で細菌兵器を作っていたとか、兄貴を探す為に掃除機を背負って幽霊屋敷を探索したり、お城の絵に入って星を集め、お姫様を助けたりと、色んなゲームをしていた。
そのせいか、人によってはその世界に行きたいとか、その世界の主人公になりたいという願望は少しあった。
だが、現実は厳しい。
もし俺が館に迷い込んでゾンビと戦う羽目になったらおそらく真っ先に死ぬだろうし、大蛇に噛まれ仲間が猛毒に侵されたとしてもどうする事も出来ない。
借りにもし、兄貴が心霊スポットで行方不明になっても探しに行こうという考えにはならない。
ゲームに明け暮れ、結局三流大学に入った俺はそんなことを考えるくらいに成長いていた。
だが、歳を重ねてもその妄想の世界から抜け出せない人もいる訳で、その世界に行きたい、主人公になりたいという強い願望が、ある技術を開発してしまう。
そう、VR(バーチャルリアリティー)だ。
丁度就活していた時にそれは世の中に現れはじめた。
その時、就活で忙しく、あまり関心がなかったが、就職した時の初給料で久々に戦争ゲームを買ったところ、変なゴーグルが付属し、試しに使ってみたら仰天した。
ゴーグルを付け、ゲーム機を起動すると驚くことに視覚と聴覚を刺激し、まるでそこに居るかの様な体験をした。
おそらくそこで幼い頃の好奇心を呼び戻す機会だったが、長年培われた現実は現実。フィクションはフィクションとひねくれた性格が、幼い頃の心が呼び戻すどころか1週間で飽きてしまい、結局売ってしまう始末になってしまった。
それから8年の歳月が経った頃。またVRと関わる事になる。人生とは不思議なものだ。
と、俺は夜十一時のオフィスでパソコンに向かいながら考えていると、俺の隣に上司がやってきて、封筒を渡してきた。
「桐谷、連休後来なくていいから」
これが俺にとって災難の始まりであった。
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