音楽と、不安
青山えむ
第1話 ふりだし
どれだけ辛い事に耐えればいいの⁉
栗田
時は四月。
何故こうなったかというと……。
栗田絢未、二十五歳。会社員。趣味でバンド結成、キーボードを担当。
この日、バンド界隈で先輩にあたる菊池
菊池氏の返答は次の通り。
「よそ見してんじゃねーよ! バンドやれ」
フラれた上に怒られた。拒絶、否定、引導、全てを渡された気分だ。
今日は地元バンドが集まってイベントを開催している。
私も菊池さんも出演者じゃないので、タイミング的に丁度いいかと思って、想いを告げた。
結果は先の通り……。
しかも今日は、私の大嫌いな女もこのライブに来ている。彼氏持ちのくせに菊池さんによくちょっかいを出している。早速いた。
「菊池さ~ん、今日も素敵ですね。そう思いませんか? 絢未さん!」私に話を振るな。しかもどさくさに紛れて、菊池さんにすり寄っている。
「絢未さん、どうしたんですか? 何だか元気無いみたいですが」やめろ。こいつ、私が菊池さんに好意を寄せているのを解っていて、わざとらしい流れに持っていくと見せかけて、こうして菊池さんに触れていく。嫌味な奴だ。
もしかして、さっきの告白も聞いていたんじゃないかと思う位、気に障る目と声と存在だ。
その日の夜、SNSに、菊池さんとあの嫌味な女のツーショットが投稿されていた。
投稿者は勿論、女の方だ。
最初の一文に戻る。
色々と、あまりに辛いので、イベントの途中で帰ってきた。
どうして私だけこんな目に遭うの?
●〇
―家族の中に一人でも好きな人がいるなら、それだけで貴方の人生は良いもの。
そうじゃなかったら?
家を出て、一人で生活してみればいい。それだけで、家族の大切さが知れるというもの。
無理? それならどうするか、一緒に考えてみましょう。絢未さんを例にしてー
●○
絢未はパソコンでSNSを見ている。スマホの小さい画面だとどうも見づらい。
休日の朝は、パソコンのチェックから始まる。今日も珈琲を片手に、SNSやメールのチェックをしている。
いつもの頁を見ていると、見慣れない広告が目に入った。
―君も小説を書こうーそんな広告だった。
「小説かぁ……私も書いてみようかな」思ったのが先か、呟いたのが先か解らなかった。
私は、後悔ばかりしている。そのくせ、ふと思いついたちょっと抒情的な感情を表す単語が頭に浮かんだら、なんとなく納得して、その単語に自己陶酔している。これも一種のカタルシスかと、思っていた。
単語に納得をするなら、文章でカタルシスを作れるかもしれない。そうして、私と同じように後悔ばかりしている人達を、一瞬でも癒す事が出来るかもしれない。
小説を書く、実践するかもしれない。
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