第二十三話『ある意味不名誉な称号』

光差し込む通路を抜けて、円形に整地された闘技場に入った私。


ここで最後の戦いが始まるんだよね!


楽しみでしょうがないよ〜。


そんな事思ってたら、前から出てきたのは私と同じくらいの身長なのに出るとこ出てる…ごほんっ!


光を浴びて煌く透き通った白銀の髪を腰下まで降ろして、純白のローブに水色の飾りや刺繍が入った姿の女の子だったの。


いけないいけない、ちゃんと挨拶しないとだよね。


「あ、初めまして。フウです!よろしくお願いします!」


「ん。ファセリア。負けない」


お互い自己紹介が終わったと同時に、試合開始の鐘が鳴ったの。


その瞬間、だったの。


「…ニブルヘイム」


ファセリアが何かぼそっと言ったなって思った瞬間、空気が極限まで冷やされて、なんか結晶降ってきたし、闘技場全体は凍って一瞬にして白銀の世界に変わっちゃったの。


これがアヤカから聞いてた凍結っていう状態異常なのかな?


まあ私の場合状態異常軽減付いてるから動けなくはならなかったんだろうけど、寒いとかそんなレベルを通り越してもう瞬間冷凍されてるみたいに全身痛いしじわじわHP減ってくし…


まあでもHP自動回復も付いてるからほんとに少しずつしか減ってかないんだけどね。


「これ。平気なんだ。びっくり」


「は、ははは…」


こんなのどうやって勝つの!?


アヤカも今まで通りじゃ勝てないってこういう事!?


なんて呑気に私が考えてたら。


「…ヘル・バレー」


その瞬間地面が割れて巨大な谷が出来て、そのまま私も落下。


やばっ、どうにかしなきゃ!


バレーって事は谷だよね、って事は飛翔で浮けば完璧!


体制も立て直せて、これから登るぞって時に息つく暇もなく立て続けに攻撃をしてきたの。


「…アバランシェ。…コラプス・クリフ」


「きゃーーー!」


もー!次から次へとなんなのもう!


雪崩のおまけに崖壊すってやめて欲しいよね。


やばいなー、HP半分くらいまで一気に削られた…


これは確かにステータスとスキルでゴリ押ししても勝てないよねー。


飛翔は空飛ぶでしょ?跳躍は蹴って加速するでしょ?重力操作と空間操作を組み合わせてどうにかするしか無いよね…


とりあえずアヤカに使ったやつ一通り使うしか無いか!


戦いながら考えるしか無いよね!


「これも平気。びっくり。あなた面白い」


「あんまり嬉しく無いけど、ありがとう!」


お礼を言いながら空間魔法と釜の懺悔区を兼ね合わせて死角から不意打ちさせる技を命中させたんだけど…


今のでHP半分減っちゃうの!?


「不覚。あなたも。回避だけ。違うのね。あの子の。言う通りだわ」


「あの子ってアヤカの事?」


「そう。あの子も楽しかった。けど。あなたの方が。面白いわ」


「アヤカそんなこと言ってたんだ…」


「そろそろ。もう決着。つけるわ」


そう言って、多重詠唱って言うんだっけ?なんか物凄い数詠唱始めたの。


氷で出来た塊に弓に槍に剣に…ざっと百は超えてそうなんだけど…


「いくよ。トラッキング・ダンス」


ファセリアがそう呟いた瞬間全部が私目掛けて一直線に飛んできたの。


逃げても逃げても追いかけ回してくる百を超える氷。


こんなの無理だって〜…


ん?一直線に飛んでくるんだよね?


障害物あったらどうなるんだろ?


試しにやってみよっと!


鎌を地面に向かって本気でえーい!


私が鎌を当てた所を中心に円形状に大地が割れてそのままの勢いで破れたい地面の破片が宙を舞ったの。


そのまますかさず重力魔法で操れば…


出来た!名付けて即席ロックブラスト!


これを私の前に集めて巨大な岩を作ってっと。


岩ができた瞬間私は目を疑う光景を目の当たりにしちゃったの。


貫通してきちゃったよ!?


まあでもこれでわかったね。避けてくるんじゃなくって一直線に追尾してくるってこと!


って事はつまり…


そのまま私は再び破壊された地面の破片を縫うように転移を繰り返してファセリアの背後に気付かれない様に転移することに成功したの。


本当は一回で転移できればいいんだけど、まだまだレベルが上がってないからね…


よし!


ファセリアの近くまで転移できたし、次はファセリアの周りをランダムに全方位転移を素早く繰り返したら…


できた!これで私向かって飛んでくる氷の武器がファセリアの周り全方位埋め尽くしたね!


「これは。少し。想定外かも」


これでどうだ!って思ったんだけど…


私の逃げ道まで無くなっちゃったよ!


確か四面楚歌って言うんだったよね…


これもうギリギリのタイミングで転移するしかないね…


来る!3、2、1…えいっ!


そのまま全部ファセリアに直撃したんだけどまだ少しHPバーが残ってたの。


これはまずいって思って跳躍使って一気に距離を縮めよう。


それから転移ですぐさまファセリアの後ろに移動して…


最後にファセリアの首元に鎌を当てたの。


「はぁ、はぁ…これで、私の勝ちだね…」


「そう。ふふふ、もっと遊びましょ?」


今まで表情を変えなかったファセリアが急に楽しそうに笑い始めたと思ったら急に魔法が発動したの。


「これ。使うの初めて」


「な、なにこれ…」


なにがやばいって動きが遅くなってるんだけどたぶんそんな簡単な話じゃない!


「説明。欲しい?これ。エネルギー凍結結界。ヘル・コキュートス」


やばいやばい、なんかHPもじわじわ減ってるしこれは早く決着つけなくっちゃ!


「これで。今度こそ」


まずいってまた多重詠唱始めちゃったよ、転移で後ろに…


えっ…?転移できない!?


これもこの結界のせいなの?


これはもう打つ手なしかな…


「さようなら。トラッキング・ダンス」


流石に諦めちゃって、思わず目を閉じちゃったの。


なにも考えられなくなってたんだけど、なんかおかしいと思って目を開けたら目の前にはライムとライムから伸びた手の先に、私とライムを庇ったであろうバキバキに崩れ落ちた卵の殻の破片が残ってたの。


「え…?ライム!?なんでここにライムがいるの!?っていうかなんで卵持って…それってあの時の神鳥の卵じゃないの!?」


「フウ、だいじょうぶだよー?うえにいるよー!」


ライムがそう言ってすぐ私は上を見たの。


そこにはその卵から出てきたのかと疑うような大きな影があったの。


私が気づいたのに気づくとその大きな影は急降下してきたの。


降りてきた影はたちまち姿を変えちゃって人型みたいになってたの!


「ままーーー!!!」


「ま、まま!?っていうかもう人型になれるの!?」


急降下して私に抱きついてきた少女は体格は小学生高学年くらいかな?


白から青へとグラデーションされたサラサラの長い髪を靡かせて、サファイアみたいに真っ青で綺麗な瞳を輝かせながら私に話しかけてきたの。


《『神鳥の卵』よりエンシェント・エルニクスが生誕した為、従魔契約が成立しました》


「ねぇ!ままー!名前は?私の名前!」


「え!?えっとー…」


今思い出したけど、私戦ってる途中なんだよね…


えーーっとー…


エンシェント・エルニクスだよねー。


うーん…エルク?エルス?違うなー。


いっその事エルとか?


なんかライムの時も名前から取ってたけど大丈夫だよね?


「じゃあエルでどう?」


「うん!エル、エル…私はエルだよー!」


喜んでもらえたみたいでよかった!


って、服服!!


とりあえず初期装備だけど裸よりは全然マシだよ!


「エルとりあえずこれ着れる?」


「わかったー!えへへ、ままの匂いがするー」


私の初期装備に顔を埋めた後安心した表情で私ににっこり笑ったの。


「か、かわいい…」


思わず声に出ちゃった…って!


「悠長に名前決めてる場合じゃなかったよ!?」


ってあれ?まだ一瞬すぎて周りの煙晴れてなかった…


「エル、この煙吹き飛ばせる?」


「できるよー!えーーーいっ!」



………



「はぁ、はぁ、はぁ…」


あれで…倒れて…もう…MPが…


「なっ影!?」


消えた?なんだったの。今の。


まだ。生きてるの?あ、煙が…



………



「なんで。子供が二人…?」


(もう。HPも。MPも。ほとんど。ないのに…あんなの。勝てない、よ。)


「あ、二人戻しておくの忘れてた…」


「二人ともごめんね。私今あそこにいる子と戦ってるから一回戻っててもらってもいい?」


「わかったのー!」


「えぇー。せっかくままと会えたのにー…」


「フウの言うこと聞かないとダメなのー」


「はーい…」


「ごめんね。また後でいっぱいお話ししようね!」


(消えた。人じゃない。従魔なの?)


「ごめん。お待たせ!」


「構わない。あの子達。従魔なの?」


「そうだよ。それより、試合再開しよっか!」


「その必要は。ないわ。MPの尽きた魔法使い。なにも出来ないから。時間もないわ。早く。トドメを」


「う、うん。わかった」


「次は。本気のあなたと。戦ってみたいわ」


「ん?私本気で戦ったよ?」


「違う。従魔師は。従魔も参加できるのよ」


え?今なんて言った?従魔も参加できるの!?


聞いてないよ〜…


あ、でもよく考えればそうしなきゃ従魔師のスキル以外で戦闘できない人が参加出来ないもんね。


「そうだったんだ…」


「うん。それより。時間ない」


「あ、ごめん!それじゃあ楽しかったよ!」


「私もよ…」


そう言って消滅エフェクトと共に消えたファセリアを追いかけるように私も控え室に転移したの。


そういえば後で知ったんだけど、あのヘル・コキュートスって技、ファセリアのHPが10%を切ると発動するスキルらしいの。


なんでも、

 自身に全ステータス30%アップ

 相手に全ステータスが30秒で10%減少

があってバフ、デバフ関係は、あらゆるエネルギーが凍って

 相手に光が届きにくくなる関係で自身に認識阻害効果

 相手に対して移動阻害

 絶対零度が発生して毎秒1%のHP減少効果

なんかががあるらしいよ。


しかもレベルがあってまだまだ強くなるんだとか…


どう考えてもおかしいでしょ…


そんなこんなで控え室に戻った私たちだったんだけど、待ってたのは本戦じゃなくてエンディングムービーだったの!


『えー、おほんっ。盛り上がってる所申し訳ない。本来ここから本戦だーっ!っとなる所だったんですが。あれ、結果出ている試合を再戦する意味が無いなと気づきました為、私どもでまとめさせていただいた見所映像総集編とエンディングムービーをもって終了とさせていただきたい次第です』


「ま、まあそうだよな…」


「あんなの厄災みたいなものよね…」


「ああ、また死神と戦うのはちょっとな…」


なんていう声が聞こえたけど死神なんていたかなーとしか思ってなかったの。


この時の声がまさかあんな結末にするなんて思ってもいなかったよ…


それからまとめ映像が流れた後、エンディングムービーでランキングと報酬が発表されたの。


結果だけ言うと、1位が私、2位がファセリア、3位がアヤカ、4位がレイナ、ファイスが13位でジュっくんが21位って結果になったよ。


『それではみなさんお待ちかね!報酬タイムだーーー!』


流石に今までで一番大きい歓声だね!


もういっそうるさいよ…


『下から順番に発表していきまーす!!!』


  順位 100位〜76位

  報酬 称号『ファイタークラス』

     闘技コイン『1枚』 ゴールド『1万G』


  順位 75位〜51位

  報酬 称号『グラディエータークラス』

     闘技コイン『3枚』 ゴールド『3万G』


  順位 50位〜26位

  報酬 称号『レンジャークラス』

     闘技コイン『5枚』 ゴールド『5万G』


  順位 25位〜11位

  報酬 称号『チャレンジャークラス』

     闘技コイン『10枚』 ゴールド『10万G』


  順位 10位〜4位

  報酬 称号『マスタークラス』

     闘技コイン『30枚』 ゴールド『30万G』


  順位 3位

  報酬 個人称号 『   』 称号『闘技ノ龍王』

     闘技コイン『50枚』 ゴールド『50万G』


  順位 2位

  報酬 個人称号 『   』 称号『闘技ノ霊王』

     闘技コイン『100枚』 ゴールド『100万G』


  順位 1位

  報酬 個人称号 『   』 称号『闘技ノ神王』

     闘技コイン『500枚』 ゴールド『500万G』


『そして更になんと!1位の方には限定称号に付随した限定装備が贈られます!それではまずは限定称号の発表から参りましょー!まずは第3位のアヤカさん。空を支配して天候を操り天災を生むその姿を讃え『空の支配者』を進呈します!続きまして第2位のファセリアさん!ニブルヘイムや氷の武器の操作など氷に特化した戦いが素晴らしかったですね!極め付けは最後のヘル・コキュートス。あれはやばいですね、文字の如くまさしく地獄そのもの!そんな姿を讃え『氷獄の大魔女』を進呈します!最後は、第1位のフウさん。まあ、みなさんご存知の通り化け物でしたね。純粋な力もなのですが、可愛らしい装備からは想像もつかない攻撃とそれを補う数々のスキル!装備から取って巫女や天使なんかの名前を組み込もうかとも思ったのですが、プレイヤーの方々から厄災という言葉や死神という言葉が数多く聞こえてきたので『厄災の死神』を進呈させていただくこととなりました!』


「なんでそうなっちゃうの!?」

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