第六話『始まりへの第一歩』

今回のアップデート。


それはこのゲームのやり方が少し変わるものだった。


まず


《生産職の性能調整》

これは、今まで生産系のスキルで物を作る際にゲームステータスと関係のない「器用さ」や「手順」、「知識」などに加えてゲーム内のステータスにはないが隠しパラメータでもある「運」の要素がとても多く関わってた事でそもそも2万人近くいるプレイヤーの中で100人も生産職を持ってる人がいないという事に対して運営が危機感を持ったための調整だった。

内容としては、生産職が生産した際に出る評価について、評価3〜6の間は確実に生産出来るように調整。さらに評価1〜2を失敗扱いとし低確率で生産されるように調整。評価7〜9は大成功として低確率で生産されるように調整。評価10のみある一定の条件を満たした時低確率で生産されるように調整。

最後に生産職のレシピシステムにも調整が入った。

今までにもあった10回生産でレシピ獲得のシステムは残し、レシピ習得済みの評価が更新されることによるレシピの更新を廃止する代わりにレシピ習得済みの物で評価10をさらに10回生産する事でレシピ更新が入る設定に変更された。

アップデート前にレシピを持っていて評価10を作っていた人には評価10のレシピのままとする対応も。


《生産職の重要性強化》

これは、2階層以降のNPCの露店や店舗が1階層と変わらないという設定に。

これはもともと運営が考えていた事でもあるが、あまりにも生産職が少なかった事から今回のアップデートと同時に公開されることとなった。


《上記に伴う一部特殊能力の生産職への切り替え対応》

上記の2つに伴い、データを削除し、再度キャラクタメイキングをする事を可能とするとともに、削除しなくても1つだけであれば生産職への転職を可能とする対応をした。


《レア度制の廃止》

今後の事を考え廃止としました。


《固有能力の追加》

特殊能力→キャラクターメイキングの際に選べる能力

能力→ゲーム内で誰でも得られる能力の事

固有能力→ゲーム内でその本人のみが得られる唯一の能力


《イベントの開催》

今回はイベントデータのダウンロードのみで後日内容の発表があるとの事


今回のアップデートでフウの存在がかなり大きくなる事になった。


そんな事を知らないふうは家でゲームにログインする準備をしているのであった。


………


昨日は用事があったからログインできなくて結局アップデート後になっちゃった…


早く

マイホーム兼 店舗兼 ギルドホーム

の我が家に行きたいなぁー…


1,000坪ってどのくらいあるんだろ?


想像つかないなー…


何はともあれ早くやりたいしログインしちゃおう!


って、最近こんな調子なんだよなー…


私も随分とハマったよね…


よし、準備も終わったしログインしよ!


………


ふぁー、伸びすると気持ちいいね!


1日ログインしなかっただけなのにずいぶん久々な感じがするよ…


「ライムー、おはよー!」


『あ、ごしゅじん。おはようなのー』


あ、レイナさんログインしてる!


チャット送っとこー!


『装備出来てるから、レイナの都合いい時声かけてー!』


っと。私は役所に行ってこの間の弓の売り上げ回収行ってから…


いざ!マイホームへ!


って、まずは役所だねー。


………


「こんにちはー」


「おー、フウじゃねーか!」


「ガゼルさん私が来る時ほとんど居ますよね」


「そんな冷たいこと言うなってー!」


よくわらうなー、この人。


「それで今日はどうしたんだ?」


「あ、えっと。この間のオークションの売り上げ回収に来ました」


「おー、そうかそうか。ちょっとまってな!」


………


「待たせたな!ほれ、今回は32万Gだったぜ!」


「意外と行きましたね、強化しただけだったのに」


「まあ、そんなもんだと思うがな?まず鍛治と木工両方とってるやつなんていないからな!」


「そういうことでしたか」


「もう店には行ったのか?」


「これからです!」


「おう、早く行ってきな!フウの要望通りすげーいいもん出来たからよ!」


「ありがとうございます!」


「まあ、ギャラリーには注意しときな…」


ガゼルがそんな事をボソッと言った事にフウは気付かず役所を立ち去った。


どんな感じになったかなー!


って、え…?


なにこのギャラリー…?


どういう事…!?


「すみませーん、通してください!」


「お、あれが噂のフウさんじゃないか!?」


「え、本物!?」


「まじか!フウが来てるのか!?」


なになになになになに!?


なんで私こんな事になってるの!?


私そんな芸能人とかアイドルじゃないんだけど…


「あの!私をギルドに…!」


「販売はまだなのか!?」


「新しい武具に相談を…」


………


はあぁー…とりあえず敷地内まで来たからいいけど…


ひとまず叫びたい気分だよね…


「なっんじゃこりゃーーーーー!!!」


ピコンッ


うわっ!びっくしした…


『ごめんなさい、返信遅くなったわ。これから待ち合わせたいのだけれどどこがいいかしら?』


レイナの返信だったのか…


『私のお店に来てくれると嬉しいかも…地図送っとくから!』


『わかったわ、あの人だかりの場所ね!』


レイナ知ってたんだ…


知ってるならレイナに事情聞いてみよ!


その前に建物の確認だね!


さっきは人だかりで確認できなかったから敷地の内側から確認しよう!


まずは敷地の外側に2メートル弱くらいの焦げ茶色の柵が少し隙間を開けてぎっしりと。


正面入り口には柵と同じ色でできたいかにもお金持ちの家風の門。


正面の門から入ると大小様々な石で出来た道。


石の道の周りには少し広めに植えられた満開の八重桜。


桜と桜の間に灯籠を3本ずつ置いた。


ちなみにこの桜はレイナのおすすめ。


その桜と灯籠の奥に広がるのは石庭と松の木を合わせて日本っぽく。


右側には渓流とこの街のイメージが水って事もあって小さいけど滝と池、川を作って、その周りに苔とか紅葉の木を植えてみた。


この2つがちゃんと見られるように桜の感覚を広めにした。


奥の方まで行くと本命の建物。


外見は窓を多くつけて壁は白、柱などは焦げ茶に揃えて両端には縁側を設置。


ちなみにこの縁側は私と私が許可した人しか入れない仕組みだよ?


その仕組みは後で説明するね。


建物は約500坪で建てられた地上5階建+αで、階毎の振り分けはガゼルさんのおすすめ。


地上1階は店舗。

地上2階はギルドホーム。

地上3階は一応ギルドマスターの仕事場兼応接室。

地上4階はフウ専用工房。

地上5階は私室、つまりマイホーム!

屋上には露天風呂!ちゃんと外から見えないようにしてあるよ?


ってな感じになってるんだよね。


ちなみにこの各階の設定はガゼルさんにこの方がいいと言われてそうした。


だいぶゴリ押しされたよ…


あと、なんでわざわざ地上ってつけるの?って思った人も居るんじゃないかな?


そう、地下もあるんだよこれが…


地下は800坪くらい使ってる。


これはアヤカに絶対作っとけって言われたから作ったもの。


地下1階は鍛冶部屋。

地下2階は木工部屋。

地下3階は裁縫部屋。

地下4階は錬金部屋。

地下5階は薬剤部屋。

地下6階は彫金部屋。


って感じになってるの。


1部屋3坪くらいの部屋が200部屋くらいぎっしりとある感じ。


なんでこんなに必要なのかな?


まあいいや!


そうそう、さっき言ってた仕組みについて話すね!


ほとんどの階に階段がない代わりに転移門があってね、


屋上の露天風呂は私室から階段で。

地上5階の私室は私と私が許可した人だけ。

地上4階の私専用工房は私と私が許可した人だけ。

地上3階の仕事場兼応接室は私とサブマスターそのどちらかが居る時はギルドメンバー。いない場合はどちらかが許可した人だけ。

地上2階のギルドホームはギルドメンバーのみ。

地上1階の店舗は誰でも。

地上1階の縁側は私と私が許可した人だけ。

地下1階の鍛冶部屋はギルドメンバーだけ。

地下2階の木工部屋はギルドメンバーだけ。

地下3階の裁縫部屋はギルドメンバーだけ。

地下4階の錬金部屋はギルドメンバーだけ。

地下5階の薬剤部屋はギルドメンバーだけ。

地下6階の彫金部屋はギルドメンバーだけ。


転移門がこんな感じの設定になってるの。


なかなかだよね…


なによ、この大豪邸。


そうそう、内装は外装と同じ感じで、それに加えて地上階は草木がちらほらあって、ライトも暖色にしてゆったり出来る感じにしてあるよ!


私室にはちょっとした水が流れる場所も作ったしね!


そういえば、最初は建物だけのはずだったんだけど、ガゼルさんと相談して内装も作る事になってプラスで400万G支払ったからこうなった。


施設とか家具の変更とかグレードアップはその都度システム通りお金がかかるみたい。


ちなみにこれは後でわかった事なんだけど、アヤカとガゼルさん実は裏で組んでたらしい。


あと、2人はリアルでも知り合いでガゼルさんは運営の人で生産職広めたくてアヤカに相談に乗ってもらってたとか色々あった………


とにかくまあ確認はこんな感じかな!


「おまたせ…!なによ、あの人だかりの…昨日より多くなってるじゃない…」


「え!?そうだったの!?今はフレンド限定で敷地内に入れるようにしてあるからみんな入ってこれないけど、お店始まったら大変な事になりそう…」


「そうね、でもその話は後でしましょう。とりあえず防具見せてもらってもいいかしら?楽しみすぎて現実で寝付けなかったくらいなんだから!」


え、修学旅行行く前の学生みたいで可愛い。


「そしたら応接室がいい?私の私室がいい?」


「私室に行ってみたいわ!応接室ならいつでも入れそうだし」


「わかったー。じゃあ、一緒に転移門入ろっか!」


(え、階段じゃなくて転移門なのね…)


「すごい!ナチュラルな感じで住みやすそうな家ね!私もマイホーム作ろうかしら…」


「いいでしょ!がっつり私の好みだけどね…笑 マイホームいいと思う!好みで作れるし宿屋と同じ扱いになるし!」


「今度考えとくわ。建てたら招待するわね!」


「ありがと!それで約束のこれ」


………


「想像以上の完成度だわ!武器まで作ってくれるなんて思いもしなかったわよ!」


「私はもともと作るつもりで考えてたんだけどね!」


「ありがとう!しばらくはこの装備だけでやって行けそうよ!」


ピコンッ


『フウ、久しぶりだな!レイナだけ入れるなんてズルいんじゃないか?俺も入れてくれよ!』


「あ、ファイスだ」


「え!?フウ、ファイスと知り合いだったの!?」


「うん、この間のダンジョン攻略の日噴水の方に向かってたら露店の前で声かけられてフレンド登録だけした感じだけどね」


「ファイスらしいわね…出会いはそんな感じだったかもしれないけど、すごいいい奴だから優しくしてあげてね」


「わかった、そしたら応接室で対応したいから一緒に来てもらっていい?」


「わかったわ」


『入ってきていいよ。フレンドだから入れると思う。1階で待ってるから』


ピコンッ


返信はやっ…


『おう!』


「じゃあ転移しよっか」


………


「ごめん、レイナ。迎えに行ってくるから待っててもらってもいい?」


「大丈夫よ」


「ありがと」


………


「おう!久しぶりだな!」


「久しぶり、じゃあ応接室に行こ。こっち」


(おいおい、階段じゃないのかよ…)


「レイナ、おまたせ!」


「すげーな!って……姉あねさん!?なんでここにいるんだ!?」


「その呼び方はやめてって言ってるでしょ!?私が先客なのよ」


レイナが姉さんって呼ばれてる…


「お茶入れてくるね」


………


(な、なんで姉さんがいるんだ!?)


(ファイス、フウに何の用なのかしら…?)


………


「おまたせー」


「ありがとう」


「さんきゅーな」


「それでファイスは今日はどうしたの?」


「おう、この間露店で買った時に新規武具の依頼し損ねて、この間も急いでる感じだったから出来なくてな」


「なるほどね。でもファイスにこの完成度に対してちゃんと報酬支払えるかしら?」


レイナ、そんな当てつけみたいに装備切り替えなくても…


でもすごい似合ってる!レイナにぴったりでよかったよ!


「お、おい…それがフウの作ったやつか…?」


「そうよ?」


「わりぃ、出せないとかじゃなくだいぶ甘く見てた…ゴールドならあるんだが、こんな良いもの作れるならもっといい素材が欲しいところだな…」


「普通の素材でも出来るから大丈夫だよ?」


「いや、一生物にも出来そうなくらいだ、もっといいやつ作ってもらいてー」


「正しい判断ね。ただでさえこれからどんどん付加価値が付くだろうからそれまでに素材を集める事ね」


「ああ、間違いねぇ…」


「どういう事?」


「フウはもっと自覚すべきよ。今日のアップデートの内容見たでしょ?」


「うん…?」


「ただでさえ掲示板なんかでいい意味で目を付けられてたフウなのに、こんな建物を建てた上にギルドと店舗を作ったらそれはこうなるわよ…今はもうファイブトップギルドを差し置いて一番の有名人なんだから!」


「え!?」


「加えてアップデートで評価4以上の物と中級以上のポーションやその他諸々も値上がりしてるって話だ」


「あれってそういう事だったんだ…」


「とりあえず今後売値とか転売には気をつけた方がいいわよ。絶対にそういう人達が出てくるから」


「あぁ、間違いねぇ。付け加えるならギルドメンバーの募集と店舗経営なんかのためのNPCも雇った方がいいと思うぜ。絶対1人じゃ回らないからな…」


「あとは、新規装備ね。一週間に………」


そんな感じで話し合ってこういう事が決まった。


1、今後新しい物はフウのお店が相場になる事を予想して、しっかりとフウが値段を決める事。わからなければオークションに出してから決める事。


2、新規装備の依頼は落ち着くまで日曜日から土曜日までの1週間で先着10名まで(装備の修理を除く)。依頼内容などは素材持ち込み限定で値段は前金含めフウ側が決める事。


3、転売対策をする事、ブランド化?


4、量産用の素材はレイナとファイス、アヤカが調達する。


5、レシピ習得済みのものは素材持ち込みで生産可能に。


6、素材売買も可能に。


7、ギルドメンバーで施設を使ってる人は現実の1週間につき1部屋2万Gの使用料を設定。


こんな感じになったよ!


ちなみにギルド名はこの地にちなんで《アトラテスト》にしたよ!


それでそれにちなんでお店の名前が《フウ・アトラテスト商会》になった。


この名前は2人にこれ以外ありえないと言われてそうなった。


そんな感じで一旦この場は解散になって私は役所に諸々の登録と転売防止のブランド化の相談に行く事にした。


………


「こんにちはー、ガゼルさんいますか?」


「おう、さっきぶりだな!どうした?」


「えっと、ギルド名アトラテストと店舗名フウ・アトラテストの登録、あと転売対策のためにブランド化みたいなものをしたいんですけど、なんかありますか?」


「おう、そういうと思って用意はしておいたぜ!ギルドカード貸してみな」


「どうぞ」


………


「これで大丈夫だぜ!フウが作った物には店舗名にちなんで《フウ・アトラテスト》って名前が入るようになったぜ!」


「なんですか!?その恥ずかしい仕様は!?」


「まあまあ、これが一番効力あると思うぜ!ブランド化されるから恐らく相場の一回り上を行くだろうがな!」


「他人事みたいに笑わないでください…でも、ありがとうございます」


「おう!」


さて、恥ずかしいけど対策は出来たし開店準備でもしようかな。


そういえば、名前が入ったって事は今までの物は売れないんじゃない!?


どうしよ…


あ、1階層に行って露店で全部売り払っちゃお!


それがいいよ!


………


さて、店ができたからかな?こっちは人が少ないね!


よし、こんなもんかな!


さて開店っと!


………


最初の30分全く売れなかったけど、後半の勢いは凄まじかったなー…


結局1時間で完売して売り上げは約150万G。


さて、売り終わったし店に戻って今日はもう寝ようかな。


疲れちゃったし!


明日はいよいよお店の開店とメンバー集めだね!


大変そうだ…


それじゃあ今日はこの辺でおやすみ!

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