出表壱
朝野花子
第1話 入社式
じゃあ花ちゃんて呼ばれてたんだろ、ここは大学じゃないからなそんな呼び方はしないからな。
聞いてんのか、朝野!?
ハッはい、聞いてます。
入社式の後、上司から個別に呼ばれ入社式の4時間後私は上司の机の横で姿勢を正しながら立っていた。
朝野、お前は2流大か3流大か?
パソコンの中を覗きながら上司は言った。
なんだ、お前高卒か?しかも工業って?
どうゆう事だよ?
高卒採用は、うちの会社で初めてだぞ。
変な1番取って来たな!
そんなに人手不足かね?
上司の話は止まらない。もはや独り言のレベルだ。
まあいい、数合わせで採用されたんだろうな。
とにかく俺の言う事を聞いて、仕事真面目にやれよ。
高卒で何が出来んのか知らんけど。
上司は、唾でも吐き捨てるように言った。
もういい、行っていいぞ。
と言う上司対して私は、あの‥‥とてもいいにくい事なのですが‥‥私‥‥
そう私が言うと、
何だか、もう辞めたいか?早すぎだよ。
それも1番かよ。
「高卒が 入社四時間 もう辞めた」
上手いね〜
そんなご機嫌な上司に私は勇気を振り絞って話の続きを始めた。
あの、先程の話の続きなのですが、私は、父から大学には行かず会社で学ぶ様に言われまして、工業高校も工場がメインの会社だからそこで基礎を学んで来いと言われまして‥‥
私の話に少し反応した上司は、
ん?なんだお前の親父はうちの会社の人間か?どういう事だ?もっと分かりやすく言え。うちの工場長の朝野さんの娘か?
私は小さく頭を横に振り、工場長の朝野勉さんは叔父でして‥‥
その瞬間上司の顔が固まり、引きつったのが分かった。
まさか無いよな、まさか、まさかありませんよね。
朝野さん、朝野花子さん?
上司は恐る恐る私の名前を呼ぶ。
そこへカメラを持って父がやって来て、花ちゃん記念撮影しよぉ〜。
花ちゃんの入社決まってからカメラ買ったんだよぉ〜。一眼ってヤツね。全然分かんないけど、電源入れて、ここ押せば‥‥
父は、まるで初めてオモチャもらった子どもの様に、一眼レフカメラのシャッターボタン私の方に見せながら、はしゃいでいた。
しゃしゃ、社長。入社式のカメラマン呼んでますから大丈夫ですよ。
そんな上司の声は全く父には届かず、父は笑顔で私を見ていた。
その横で上司は、何度も頷きながら
それでいい、それでいい、全部それでいい、そう、それでいいんだ。
と、独り言の様に呟き、真剣な目で私を見てこう言った。
朝野さん、朝野花子さん、学歴ではありません、現場で学ぶ事こそが大切です。
一緒に頑張って行きましょ。
いえ、頑張って行きます、宜しくお願いします。
もうその時には、私は父には手を引かれ、その場から離れていた。
上司方を振り返ると、上司は、これでいい、これでいいんだ‥‥と小さな声で呟いていた。
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