双雷、闘幻郷ニ轟ク
たけのしいたけ
プロローグ
「俺よりも低い実力ながら此処まで張り合った貴殿らに敬意を示す」
決闘に満足してはいるのだが、この戦いが終わりに近づくことに少し不満げな表情を見せ、男――スーラジは言った。ふと笑みを溢し、警戒を解かずに相対する男に穏やかな視線を送る。
「貴殿らのおかげで久々に満足のいく戦いができた。今回の決闘に感謝する」
スーラジの言葉を受け、男は身体の警戒は解かず表情だけを緩めると、こう返した。
「ふ、それは光栄だよ。こっちとしては楽しむ暇すらなかったんだけどな」
感謝の言葉に対し、皮肉で答えるその男の顔からは余裕が見えない。
事実、男の全身からは血がとめどなく溢れ、息もかなりあがっている。
「とはいえ、時間内に貴殿を倒さなければ、俺の勝利にはならんのでな」
男の言葉にさらりと返答したスーラジの細面には、微笑が残っていた。突如、スーラジの表情が一変し、身体から放たれる気配そのものが変化する。
「
直後、スーラジは熱気を真下へ放ち高く飛翔した。その強烈な余波に男――陽は飛ばされないように堪えるが、直ぐに警戒を強くする。
(予想通り制限時間ギリギリで最後の勝負を決めにきたか)
そう陽が思っていることなど知る由もないスーラジは、空中で槍を構えた。
「〈この槍は炎、全てを消し去る根絶の炎〉」
そう唱えると、スーラジの纏っていた黄金の鎧と耳飾りは消失し、代わりに黄金の槍は太陽の如き炎を纏い、彼の体躯の倍以上の長さに達した。
「灰と化せ、【
その刹那、槍の先端には破壊の塊が凝縮し、耳をつんざくような爆音が轟き、陽だけでなく観戦者諸共の視界を紅蓮の光が埋め尽くす。
誰もが、闘技場を燃え盛る炎が埋め尽くすのを目にした。
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