第24話 テレビが消えた世界

This Message From NIRASAKI N-TOKYO JAPAN

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 どうもVRゴーグルの具合が悪い。やけに目が痛む。ちょっとドクに見てもらうことにして、今、ドクがVRゴーグルを分解しているのを眺めながら、この文章を入力している。

 VR機器の発展は、令和における最大の進歩だけど、これはつまり、テレビ、正確には液晶モニターの消滅を意味しているんだ。最初期のVR機器は、まだ違和感があったし、液晶モニターの解像度には追いついていなかった。でもそれも十年ほどで、埋めることが可能な溝だった。VR機器は瞬く間にその溝を埋め立てて、液晶モニターをそのまま飲み込んだ。

 そんな展開になる前に、液晶モニターは半ば、テレビという立場での役割を終えていた。液晶モニターはコンピュータの出力装置の一部で、その時点でも動画配信サイトという言葉が当たり前で、しかし令和では、テレビ、という単語が、動画、に置き換わった。これはどこが仕掛けたのかは、はっきりしない。だって、テレビという言葉自体を破壊することは、テレビという文化を時代遅れにする、時代から取り残されるように仕向けることを、意味していると思わない? まぁ、テレビ局自体が動画配信会社に切り替わるわけで、この流れは止めようもなかった、ということだろうか。なんにせよ、まずはテレビという単語が白い目で見られた、ということになる。

 動画配信が当たり前になった時、映画館という場所はいよいよ肩身の狭い施設に変化した。前段階として、自宅で高解像度モニターに、映画のネット配信版を映して見る、という状況があった。映画館では平成の時にはもうフィルムは電子化されていたけど、方式の関係で、解像度が上がらない。映画ファンは真っ先に、自宅で映画をチェックするようになった。大音響を売りにする映画館もあったけど、音響関係の機器も進歩していて、映画館でしか味わえない、という要素は切り崩されたことになる。

 そんなわけで、令和の映画館は、苦境の中からどうにか立ち上がり、不自然な悪あがきに終始する。最初は超大型の高解像度モニターを作ったけど、これはウケなかった。入館料が高すぎた。次に、立体音響を進歩させたけど、これも僅かな抵抗に過ぎない。そうこうしているうちに、映画離れは決定的になったけど、この事象を正確に表現すれば、映画離れ、ではなく、映画館離れ、だった。映画自体は、専門の動画配信サイトがいくつも並び立っていて、映画製作はまだ続けられていたし、今もまだまだ作られている。

 ちょっと脱線するけど、映画はVR機器の登場と同時に、極論を言ってしまえば、役者さえいらなくなっている。つまり、アニメってことになる。現実の人間のように見えるアニメーションが、ものすごく進歩して、これはそもそもは、VR空間で撮影する技術が事前にあり、それはセットと呼ばれた大道具や小道具、舞台さえも、全部をVRで作成しよう、というところから始まっている。VRセットが成立した時には、役者を映像で作れない技術的ハードルはなかった。今では、声優という職業もやや後退している。人工知能の音声は滑らかで、人間の発声と言われても気づかないし、ちょっとした癖さえも表現する。

 そんなわけで、VR機器がいよいよ極まると、もう誰もモニターを見る必要がない。どんな映像でも強烈な臨場感の中で体験できる。僕が好きな二次元映像モードは、昔の映画と同じ方式で映像を見るやり方で、いくつかの仕様があって、僕が中でも多用しているのは、映画館スタイル、などと呼ばれる方式だ。ちょっと離れたところに、ほぼ視界を埋める巨大なモニターがある、というような設定なんだ。まるで映画館にいるような気持ちになれる。もっとも、僕は実際の映画館に行ったことは、一回だけで、中学生の時の社会見学の時だ。なんの映画が上映されていたか、忘れてしまった。古いアメリカの映画だったけど、なんだったのかな?

 現在のVRゴーグルは、音声認識機能が組み込まれているし、視線感知機能もある。なので、モニターの隅の方のアイコンを見つめたり、まばたきしたり、それぞれのやり方で、両手を使わずに操作できる。僕のVRゴーグルは無理だけど、中にはARゴーグルとしても使えるタイプもある。街を歩いていると、そんな若者と何人もすれ違う。ARゴーグルは、まさに伊藤計劃の世界だけど、それ単体で利用する機会が多くて、ゴーグルではなくメガネに近い。コンタクトレンズ化はまだ伊藤計劃には追いついてないため、存在しないよ。ただ、たまにARゴーグルをつけて街を歩くと、本当に様々な広告で溢れていて、びっくりする。

 VR機器の発展が、各家庭からモニターを消しつつある。ドクの家や作業室、ガレージには、これも宝の山だけど、無数の液晶モニターが確保されている。一度、このドクの様々なコレクションを整理したいと思っているけど、機械だけでも膨大な数になるので、すぐには無理だろう。そう、ドクのコレクションの中には、映写機も含まれている。一台、頻繁に使われているね。ドクの趣味の一つが、荒い画質で古い映画を見る、というのがある。僕も数え切れないほど付き合っていて、好きなシチュエーションだ。

 どうやら僕のVRゴーグルが直ったらしい。さすがドク!

 では、今回のメッセージはこれくらいで。






This Message is END.

Reply - Impossible.

Machine Number - 099

Massage Number - 038


P.S. Your World Is Real World? Television World Is Real World?


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