第六話 犠牲

犠牲 第一章

 わたしはせきをおこす。

 これは皆川恵子のせきの物語だ。

 かくやくたるきゆう窿りゆうのもとで幼稚園の園庭にしようしゆしたてんしんらんまんなる少女とめいぼうこうの少年および陰陰滅滅たる少年がボールあそびをしている。サッカーでもドッジボールでもない。てんしんらんまんなるおともだちがはんぶんじよくれいの遊戯をしているなか規則もしゆえいもないただのボールあそびをしているわけだ。少女は〈宮内くんかっこいー〉〈城田くんきもーい〉といってボールを玩弄していたが宮内と呼称された少年がボールを全身全霊でほうてきして園庭のそとの道路にころがせた。〈宮内くんすごーい〉といって少女が道路にボールをろうだんしにゆくとせんぱくかいてんしてきたスポーツカーがばくしんしてきた。スポーツカーと少女が激突する刹那少女は背中の制服を掌握されて背後へとてんした。事故をまぬかれたスポーツカーの運転手は〈野郎〉と絶叫してしやりようばくしんさせてゆく。かいわいはるかすと宮内くんが少女に肉薄してくる。〈大丈夫〉ときかれて〈宮内くんがたすけてくれたんだありがとう〉という。宮内くんがしゆうしようろうばいしていると〈宮内くんと結婚する〉と盟約した。

 幼稚園最後の一年はしゆうえんした。

 会場にて卒園式を完遂されると卒園アルバムを両手で抱擁したまま少女は片戀の少年をへいげいした。めいぼうこうの少年は両親にきようどうされて園庭から帰宅するだったので絶叫する。〈宮内くん結婚するよ〉と。両親からでんされていたとおり少女と少年は二百メートル程度のせきしようりつする元来一校であった二棟の小学校にけつべつすることになった。きようこうせきはつづいた。小学校時代には三階の教室のせんじよう中窓枠から墜落せんとしたなにがしかにひっぱられるようにきゆうじゆつされた。中学生時代には出会い系サイトでかいこうしただいがく生たちのしやりようきようどうされごうかんされそうになったがなにがしかがしやりようの窓がらを金属バッドでこつぱいにしたらしくいんの間隙にとんざんできた。高校生時代にはたまゆら不良少女となりかけた時期がありきようあいなるライブハウスでやくを譲渡されんとしたなにがしかがやく密売人をちようちやくして少女をライブハウスからくりげさせてくれた。

 少女はおとなになった。

 受験競争にもがいせんして故郷の新潟県からりよし高偏差値の東北のだいがくに入学することとなる。のうより不彀本ぽこぺんなところがあったためにろくしんけんぞくふくげきじようの学生寮を推奨したが女性は〈大丈夫だよわたし結構大丈夫なほうだから〉と鮸にべもなくひんせきしてかいわいのアパートに一人暮らしすることとなった。ぎようこうにも裕福だった両親からの仕送りでしようしやなるアパートにてできたわけだ。より女性はきゆうちようたる不気味さにひようされてゆく。ほうはくたるだいがくかいこうしたほうばいともいえぬほうばいから〈だれかが皆川さんのことつけてるよだいがくのなかのひとみたいだけど〉といわれた。疑心暗鬼を生じてきようこうみずからの安全をかえりみるにたしかにひとりふたりさんくさい人物がかいられた。屡しばしばアパートに奇妙なる手紙がほうちやくするようになる。〈あなたと結婚できたらしあわせです〉という内容であり切手も添付されていないのでかいわいの変質者からの代物だとおくそくされた。ストーカーだ。裕福なる両親にきゆうしてほうていたるアパートに転居するがまた手紙がとどいた。〈あなたと結婚できたらしあわせです〉と。

 すがこくそくとした。

 ストーカーはだいがく関係者かもしれないしだいがく内にまでちんにゆうしてきた変質者かもしれない。いずれにせよちらは相手を認識あたわないし相手はちらしつしている。にんじよう沙汰になってもおかしくない。めんの一人暮らしにじゆつてきそくいんした女性は安全のため大学寮で学生たちと共同生活することにした。せきがおこった。学生寮にほうふつとすべき人物がいる。〈宮内くん〉とこえをかけるとり宮内氏であった。おなじだいがくの相違する学部にいたわけだ。いちいちじゆうでんされた宮内はいった。〈おまえはむかしっから危険なところがあったからなあ〉と。女性はいう。〈大丈夫だったんだよわたし大丈夫なところあるから〉と。ほうふつとしていった。〈わたし宮内くんと結婚するって約束してたよね〉と。宮内は〈一方的にだろ〉という。〈じゃあこれからつきあおうよ〉といいふたりでのどうせいきゆうした。〈どうせ結婚する約束だったでしょ〉と。〈わかったよおまえあぶないやつだからな〉と宮内がいいふたりはアパートで同居することになる。

 ストーカーはいなくなった。

 ふたりの交際がらんしようする。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る