怪奇!汲み取り便所の中に死体!?(元ネタ:福島女性教員宅便槽内怪死事件より)

おバカは、今日なら国語の授業は

その担当である妙齢の美人教諭のはずなのに、

代行の女性教諭はブヨブヨした体形で男子から「ジ・O」という

あだ名で呼ばれた女である。


当然、その授業内容も壊滅的なくらい面白くなく

誰が見ても聞いててタメになるとはとても思えない結果だ。

それが終わった後、おバカはゆうじを訪ねた。

「やはり、面白くは無かったか。」

ゆうじは心配そうに言った。

「ああ、まったくジ・Oのヤツは聞いててくだらねーよ。

そういや、桜野は何で今日に限って休んでんだ?」

おバカが不服そうに言うとそこでゆうじは言う。

「実はな?コレはネリーから聞いた話だが、その桜野先生は

今朝、トイレで用を足そうとしたらその便層に何やら人と思われる

一部があってな?それで警察を呼んだのでそれに立ち会ってて

今日は来れないみたいだ。」

「そっか。そういや清丸のヤツも、この前の選挙運動の

ボランティアしていた男が選挙後から行方不明になってると聞いたが

何か関係でもあるんかな?」

「何?そいつが行方不明だと?それは妙だ。」

「お前、何か知ってるのか?」

「いや、詳しくは知らないが桜野先生とその男は

以前から親しかった間柄ではあったが。」

「そうだよな。もしかして、そいつ桜野の事が好き過ぎて

トイレの排尿する姿が見たくなって汲み取り口から入ってたりして?」

おバカがそう言うと横から女子生徒の一部が口を挟む。

「あのねえ、おバカじゃないんだから大広さんが

そんな事する訳ないでしょが!?」

「そーよそーよ!世界中で女の排尿を見ようとするなんて

それはおバカ、アンタだけよ!?」

「ああ、そーかよそーかよ?(チッ。このクソ女どもが犯したろーか。)」

非難されたおバカは面白く無さそうに不貞腐れている。

(おバカにそんな性的趣味ってあったかな?)

ゆうじは不思議そうに思った。

アレの奇行癖は以前から知っては居たけど、

ゆうじの知る限りではおバカが女子の排尿や排便を見て

それに欲情するっていう話は聞いた事も無ければ

その疑惑を思わせるだけの片鱗もまったく知らない。

どちらかというと女子のテニス部やチアリーディングや

バトントワリングなど、短いプリーツスカートから出る

白のアンダースコートや生パンを覗き見るとか、

夏場の海水浴で前日の女子更衣室にカメラを仕掛けて

盗撮するとかなどの行為に近い。

そう考えあぐねていると、その美人教諭の居る

教員住宅においてそのトイレの排便口に人の頭があるという

報せがあり警察がその汲み取り口を調べているという。

(何なんだ、それは!?)

かの昔、戦国時代において

かわや(現在で言う汲み取り式トイレのこと)の

排便口から便層に入り込み、汲み取り口から外へ出て

まんまと敵方の城から逃げ出したという

武将が居たという話があるが、今時の便層は

明治時代以前の様な人間一人が排便口に入り込み、

汲み取り口から外へ出られる様な広さってあるのだろうか?

そう思っていると昼休みになって更に新たな情報が出て来た。


それというのも、警察が調べていた

その便層の中で死んでいたというのが若い男性であり

その男性というのが清丸がおバカとゆうじに報せてくれた

この街で行われた市議選挙後に行方不明となってた

その選挙ボランティアしていた男性である事。

そしてその男性は桜野という美人教諭とは、

近い将来、婚約までしていた程の親しい間柄であった事。

それが何故か桜野先生の居る教員住宅の

桜野先生のトイレの排便を見上げて窺う形で死んでいた事。


更に時間を経過してその日の学校が終わった午後になると

警察の方では自殺でも無ければ他殺でも無く、

その男が桜野先生が好き過ぎる余り、彼女の住む教員宅へ

赴きそこで全裸となって便層の蓋を開けてそこから侵入し

彼女の排便を窺おうとしていたらやがて抜けられなくなり

そこで糞尿から発生したメタンガスによる中毒と

寒さによる低体温症が原因で死亡したという見解に

落ち着いた。だが、ゆうじやおバカとしてはどうも信じられない。

それというのも、あの教員宅の便層のコンクリート製の

汲み取り口は、蓋からしても直径が36センチしか無く

便器の排便口も正味20センチしか無い。

実際にゆうじは館の自室において、ステラに頼んで

ダンボール紙に便層の蓋のサイズと便器の排便口のサイズを

それぞれ36cmX36cm、20cmX20cmの円形を描いて

穴を開けて貰い、その中心から自分の身体を通して見た。

だが何度やってもダメだった。

上からやろうとしても肩部や胸部に引っかかるし

下からやれば腰部の辺りで、つっかえてしまう。

どうしても警察の発表した見解どおりにならない。


10代前半に満たぬ自分からしてこうなのだから

ましてや20代も半ばの成人がどこをどうやって

あの便層から中に入れたのかどうしても説明がつかない。

考えれば考えるほど、調べれば調べるほど

あの事態はとてもじゃないが素人の常識じゃ手に負えない。

その日の夕暮れ時に、結局は重機を使って

桜野先生の便層自体を破壊し中から死体を取り出す結果となった。

その糞便塗れの死体は余りにも異様で、見ていた面々も

思わず顔を背けてしまうくらい酷い有様であった。


折角の婚約者の男性のあまりの変わり果てた姿に

アレで百年の恋が冷めてしまわないか?

ゆうじとしては思わず桜野先生が気落ちしたりは

しないか心配したくらいだ。

だがそれは子供のゆうじには杞憂であった。

死んだ彼の両親は元より、当の桜野先生も

彼の事を信じていたのか、多くの街の人々と共に

警察に対し再捜査を請願する署名活動が起こり、

1ヶ月あまりで集まった8000人を遥かに超過した

署名が警察署に提出された。だがそれでも警察は

それを黙殺し当初の発表を覆す意思は無いとした。

多くの人々は警察の傲慢で無関心な態度に失望し憤怒した。

これを知ったゆうじは心の中で憤った。

(何を愚かな!ここでキチンと再捜査して物事の

白黒をハッキリさせないと街の人々は、

彼が選挙ボランティア活動のおかげで

現在、当選して市議に納まっている男と警察との間に

何らかの密約が存在し、彼はそのために邪魔になって

葬り去ったと街の人々はその様に見做してしまうぞ!?

アンタらはそれでいいのか!?特に市議よ、アンタは

彼の恩を仇で返してまでその3期目の立場を守りたいか!?)

ゆうじはその大人たちのその利権と保身のために

狡くて卑怯で無責任なやり方が憎くて堪らなかった。

そして憤りは警察にも向けた。

(日本の警察は庶民に対しその様な横柄さを

出来るほど偉くなったッ!?)

警察はいつもこうだ。

冤罪事件は簡単に引き起こすし、

未解決事件を量産するし、取調べにおいても

太平洋戦争中における諸外国でいう秘密警察における

特別高等警察の様に著しい人権侵害をやらかしてあやまたない。

そのくせ外国人犯罪者に対して、どうも先進国の捜査機関らしからぬ

精彩を欠いた初動捜査の誤りが目立っている。

何やら相手がかつての戦勝国や日本の軍事行動による被害国の

出身者であるが故の遠慮から来ているとしか思えない。

こんなのじゃ、日本とは犯罪人引渡し条約を結んでいるのが

米国と韓国だけというのを改善出来ないのも無理からぬ事だ。

こんなお寒い限りだから今回のあの女性教員宅の便層での

怪死事件をまともに捜査出来ず記者会見で適当な事を

言ってお茶を濁す程度に留めてしまうのだろう。


桜野先生と相思相愛にありながら哀れな最期を遂げた

彼の死を悼み報われざる彼のして来た事をに思いを馳せつつ

ゆうじは街の夜景と夜空の星を見上げながら、

この忌々しく後味の悪い事件の顛末を

苦々しく思い続けたのである。

この事件で一番得をしたであろう者の存在を考えつつ。

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