夜明けの街の駐車場に死体を見た!?(元ネタ:西那須野女子大生刺殺事件より)

季節は夏になろうとしていたとは言え、街は未明なのか辺りは非常に暗い。

そこへ自転車で新聞配達をしている青年があった。

その男性の年齢はどうも働きながら大学に通う苦学生というべきだろう。

幾ら高校生の頃から始めていたバイトで毎朝の事で慣れてたとはいえ

冬は寒いが、夏になろうという時期のこの時間帯は意外と快適に思えた。

それというのも宵の口から深夜にかけての時間帯は熱帯夜という表現が

相応しい程の蒸し暑さだが、午前3時から5時に到るまでの時間帯は

案外と過ごしやすいモノだ。何故なら深夜にかけて

あれ程の暑さを示していた道路も地面に溜まっていた熱が雲ひとつない

晴れ上がっていた星空に放射冷却で吸われたのか手で触っても熱くないからだ。

彼は数日前に一度やって見た。無論、時には路面に頬を当てて見た。

するとその路面は案外冷たかったからだ。だがそんな快適さも

午前3時から朝日に照らされそれに伴って蒸し暑さが見込まれる

午前6時以降になるまでの、その短い間の時だけだ。


その午前3時台に新聞店から配達する分を手渡され、

それを愛車である自転車の前籠まえかごに乗せて出発し

それで各家の郵便受けに入れたり、その時起床して

玄関を開けて玄関前に居た住人に直接手渡してたりをした。

そんなこんな感じで新聞配達の仕事を開始してから

1時間余りの午前5時前になろうという頃。残る新聞紙も

数える程にまで減って来た。配達する新聞紙の数が昔と比べて

減って来たみたいだ。それというのもインターネットの発達で

紙の新聞を読む者が減って来たし、ネット掲示板の発達で

ニュースをそっちから得る者も増えて来たのだろう。

高校生の頃だったら、朝の6時を迎えてもまだ配達すべき新聞が

まだ多く残っていてそれが原因で店長に叱られた事も

珍しくは無かったのに、今では店長としては紙の新聞を読んでくれる

世帯が減っていてこのままでは販売店の仕事としての体を成してるのか

心配する姿を見るにつけ、今の仕事がある内に卒業式を迎えるまでに

何処か就職先を内定させねばと現在、新聞を配達している彼としては

焦りがあるというものだろう。最早、卒業して就職させられるまでに

今のバイト先が保てるのかの時間との勝負になっていた。

そう内心の懸念を抱えながら今朝も仕事に集中しようと

次の配達先のとある民家の駐車場にさしかかった。

するとその駐車場で見た所、若いと思われる女性が

薄い青色のアスファルト地面の駐車場で仰向けになっている。

一見、何でそこで大の字になってるのだろうか?

もしかして深夜の蒸し暑さに堪えかねて、周りに遮蔽物が無く

快適な駐車場で一夜を明かしたのだろうか?

否、常識的にそんな訳は無かろう。


いずれにせよ、これは怪しいと思った新聞配達の青年は

自転車を降りて、ゆっくりと近づいた。

その仰向けになってる女性をよくよく見ると、首と胸と腹部が血で染まっている。

それを見て驚いた青年は、腰を抜かしてしまい懐から

スマホを取り出して警察に電話した。

そして暫くしてパトカーが多くその駐車場に集結した。

それと前後して近場から野次馬が集まってきた。

新聞配達の青年は、警察に半ば興奮気味ながら聞き込みに答える。


警察が調べて見て判った所によると、この若い女性は

この駐車場の近くのマンションに住む医療福祉大学の4年生で

24歳の女性と判明した。

新聞配達の青年が死体を発見した場所は

役場の南側に位置する閑静な住宅街の一角の中にある

見晴らしのいい駐車場であった。


その後、警察によって新たに判明した所

遺体の刺し傷は首、胸、背中など約10カ所あり、

現場近くから凶器と見られる刃物も見つかった。

また現場の民家1階のガラス窓は割れており、

遺体の手の甲に傷があった。

事件の発生時刻は午前3時頃とみられており、

被害者の女性は自室で襲われて外へと逃げ出した後、

現場の民家に駆け込み、助けを求める前に現場で殺害されたと考えられている。

民家は事件時は留守であった。


警察が判明した所によると、こうだ。


前日の午後4時頃 大学の講義が終了後にアルバイト先に出勤

同日の午後11時頃 アルバイトの仕事が終わり

しばらくアルバイト先の同僚と一緒にいた。

翌日の未明においては、

午前0時頃 1人で車で帰宅。

午前1時頃 コンビニエンスストアで夜食を購入。

午前1時30分頃 帰宅したと思われる。

午前3時頃 周辺の住民が10回以上の悲鳴を聞く

午前4時頃 遺体が発見される。


以上が、警察が記者一同に発表した結果である。


その後、目撃情報や物証に乏しいため捜査は難航し、

警察では必死に捜査を根強くすすめ

事件から10年以上が経過した後も定期的に

チラシを配布して市民からの情報提供を呼びかけているが、

実らず、現在において未解決となっている。


だが今の生活と将来を確保のために

大学生活とバイトを維持するのが精一杯の

この新聞配達の青年にとってはどうにもならない事であり

その事件を気にかけては居るものの、

何かしてやれる事など何も無さそうであった。

ただ彼が出来る事とは、一日も早い事件の解決する事を

願いながら翌未明も新聞配達をこなすだけである。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る