世にも奇妙な青春譚

うつ

動画遊戯(元ネタ:マックス・ヘッドルーム事件より)

ゆうじは、その日は何気なくアニメを視聴していた。

テレビも最近、あまり面白い番組が無さそうだったからだ。

そこでネットで何かアニメは無いかを探していた。

するとタイトル名に"美少女戦士セーラームーン"と

表記されているアニメ作品があった。

「まあ、これでも何も無いよりはマシか?」

そう考えながら最初から見る。

主人公のセーラームーンがピンチのときに

突如、出現するタキシード仮面を見て

女の子ってピンチになったら出てくる

ああいうヒーローが好きなのだろうか?

そう思いながら本編が終り、エンディングへと移行しようとすると

突如、画面がおよそ十五秒ほど暗くなった。

「あれ?おかしいな?」

このノートパソコンは三ヶ月前に買い換えたばかりだ。

しかも買ったときの価格は五万円や十万円のような安物じゃない。

二十五万以上はする、メーカーの仕様としても

他のメーカーの価格帯のモノと比較しても平均以上の性能のはずだ。

どう考えても、簡単にこんな事になるなんてあまりにも考えにくい。

やがて画面が戻ったかと思った瞬間、

ゆうじはとんでもないモノを見る事になった。

それというのも、周囲が緩やかに波打ってる背景の

その画面に映っていたのが、あろう事か

あのタキシード仮面を模した格好の若い男性だ。

音声は、いささか耳障りな音とガヤガヤした音の混じった

如何にも不快な事この上ないものである。

ゆうじは、すぐさまサイトからエスケープして

ノートパソコンの電源を切り、その場はやり過ごす事にした。


そしてお昼になると、ゆうじはファミレスに場を移し

飲食した後、ノートパソコンを開き電源を入れ回線を繋ぐ。

そして動画投稿サイトの中からお気に入りの動画を視聴している。

だが視聴を始めて五分経過した所、異変が突如起きた。

いきなりネット動画がジャックされたかと思うと

画面に登場したのがあろう事かあのタキシード仮面を模した格好の男だ。

これだけでも唖然とするのに、この映像の男は

独り合点な持論を展開し始める。

アニメ「巨人の星」の主人公の事に関し

「僕はあんなヤツと違ってエレガントだ。」と述べ

彼に電話する仕草をするなり

「この泥臭い脳筋野郎!」と声を荒げ、唸り喚き散らしたかと思うと

突如ゲラゲラと馬鹿笑いした。そして今度は

リアルゴールドを取り出し、これを一気飲みするなり

「コレの良さが判らんバカは首を吊って死ねよ!?」と暴言を吐き毒づいた。

次にその容器を投げ捨てて、カメラに対して前のめりになり、

性具を着けた中指を立ててファックサインをして見せた。

ゆうじにはこれをどうしようも出来ない。

そのゆうじを周りの店員や客が囲む様にノートパソコンに映った光景を窺う。

そんなのお構いなしとばかりにパソコンの動画内の男は、半ばやりたい放題だ。

散々好き勝手し捲った後、しばらくして

腸にガスが溜まる音がするかと思うと、悲痛に唸り始めた。

そして今度は自分自身の患っている痔について語り出した。


やがて警官が到着するとゆうじに

「コレ、ネット回線のジャックでは無いのか?」と問う。

「そうかも知れないし、実はウイルスかも知れない。」

ゆうじはそういう風にしか返答しようが無かった。

画像が一度カットされ、ふたたび映ったかと思うと

そのタキシードの男がズボンと下着を下ろした下半身が晒された。

そして彼の口には性具が咥えさせられてる。それをカメラに向けつつ

「アイツらは僕をパクリ(逮捕し)に来るだろう。それでもいいんだけどね?」

とおどけて見せているみたいだ。するとタキシードの男の居る位置の反対側の

画面の端に居るゴシック&ロリータスタイルの若い女性が

「身をかがめなさい!このド変態、おバカッ!!」

そう言って、竹を加工して作った孫の手でタキシードの男の尻を

ぺシンぺシンと叩いた。それにしたがって男は大きな声で悶絶した。

そしてそこで動画は終わった。

やがてこの話はちょっとした話題となった。

警察もゆうじのパソコンを調べ上げたが、大したモノは

何も得られなかった。そしてあの動画の男の事を警察は捜し捲ったものの、

遂にその正体を特定する事は叶わなかった。

結局あの出来事はゆうじにとっても周りの店員や他の飲食客にとっても

後味の悪い顛末として終わった。

もう二度と現れないとしてもゆうじとしては、願わくば思い出したくは無い。



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