十二.マカロニvsマカロン


「はぁ……はぁ……はぁ……」

「どうした!! この程度でへばっているのか貴様!! 女だからと優しくしてもらえると思ったのなら大間違いだ!! 生半可な気分で参加するな!! ここは着飾るような場所ではないんだ! 甘ったれるな!」

「はぁ……はぁっ……はぁ……」


 ムセンは汗だくになりながらハゲに説教を受けている。体調が悪そうだな、昨日の酒でも残ってるのか。だから言ったのに、甘く見るなって。まぁ酒屋に連れてったのは俺だし多少なり責任はあったからアドバイスしてやったが。

 後の事は知らん、たかが二時間程度でへばるならどちらにせよ警備には向いてない。この職業に就くべきじゃない、もっと適職があるはずだ。何をそんなに意固地になってるかは知らないが神官とやらをやればいいのに。


 というわけで助けはしない、どっちにしろ助けらんないし。後はムセンの問題だ。俺は脳内小説の続きでも読んでいるか。


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◇脳内小説 【マカロニvsマカロン】 137話


「マカロン……どうやら俺はここまでのようだ……」

「バカっ!! あんたがいなくて……あたしはどうすればいいのよっ……!?」


 マカロンは今にも息絶えそうなマカロニに激を飛ばす。早茹で3分のマカロニは17分もの茹で時間により、今にも身体が消滅寸前だった。それを理解していたマカロンも最早諦めるしかなかったが……敵だったマカロニを死なせないために取ったその行動の真意はマカロンにもわからなかった。


「あたし……あんたがいたからここまで来れたのに……」

「バカ野郎……俺のせいにすんな……それは紛れもないお前自身の力だ……自信を持て……」

「ダメ……だって……あたしは一過性のもの………自分でもわかってるの……だからあんたがいなかったら……やっぱりあたしは……」


 マカロンには判っていた。自分の寿命はほんの5日ほどーー冷蔵されていなければもっと短くなる。保存の効くマカロニとは違う。

 先祖や両親も寿命は伸びなかった。どれだけ試行錯誤して改良を加えても。

 そんな先代達の生きざまを目の当たりにしてきたマカロンには、達観した諦め癖がついていたのだ。


 それを知る相棒ーーマカロニは一言、死の際に、愛したマカロンに花を添えるかのように、呟く。

 

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「そうやってすぐ諦めるから何もできないだけだ」

「!!」


 なんだ? ムセンが何かビックリしてこちらを見ている。他の奴等も、ハゲも俺を凝視していた。


「おい! ナンバー55!! 貴様誰と話している!? 何だ今の言葉は!」

「あ、また声に出てたのか。何でもないハゲ、俺の脳内で繰り広げられる笑いあり涙ありの感動大作『マカロニvsマカロン』の名台詞だ、気にするな」

「っ!? な、何だそれは! 貴様ふざけているのか!?」

「ふざけてるのはお前だろハゲ。会話っていうのは対話する人間がいて初めて会話というんだ。今のはただの一人言だ、いつ一人言が禁止なんてルールができたのか言ってみろ」

「~~~~~っ!!!」


 ハゲが悔しそうな顔をしている、まったく、いいところで中断されて怒りたいのはこっちだ。

 脳内小説に戻ろうとすると、ムセンの身体が光輝いていた。何やってんだあいつ? 変身でもするつもりだろうか?


 まぁ気にしても仕方ないので全てを無視した。

 苦しそうにしていたムセンの表情が晴れやかになってはいたが、そんな事よりマカロンだ。











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