五.サンドイッチ事件
〈城下町・ウルベリオン商店通り〉
長い階段を降りた先には活気のある城下町。色々な種族の人間? が闊歩し、彩りのある店が建ち並ぶ。まるで祭りのような賑やかさだ。
「わぁ……すごいですね、イシハラさん。こんな文明の栄えた星なんて……見るのも初めてです」
パイロット少女が何か言っているが周りがうるさいのでスルーして、俺は露店の商人に尋ねた。
「すみません、ハンバーガーショップってどこにありますか?」
「??? ∂∂∽∝∇∮∑∟Å∬∬∬∫⊿??」
何て?
何か聞き取れない言語を商人が話し始める、何だこいつ。
「『兄ちゃん異界人か? 何言ってるかわからねぇよ』って言ってますけど……」
何言ってるかわからないのはこっちだ。それよりもパイロット少女は何で言葉がわかるんだろうか?
「あ……もしかしたらこれのおかげかもしれません。私……色々な惑星を旅する職業なので……翻訳機能のついた埋め込み式のイヤホンをつけてるんです」
パイロット少女は耳たぶを指先でつまむ。ロボットアニメのパイロットみたいな全身タイツみたいのスーツを着てるから適当にパイロット少女と呼んでいたが本物のパイロット少女だった。
ふむ、だから美人神官(つうやく)が近くにいなくても俺と会話ができてたんだな。
「なるほど、じゃあハンバーガーショップの場所を聞いてくれ」
「は、はい」
パイロット少女は商人と話始める。
「……すみません、『ハンバーガーって何だ?』って言ってますけど……」
「肉と野菜をパンで挟んだ食べ物だ」
「……………「『パンズ』の事か? それならこの先噴水広場の裏路地にあるぜ」って言ってます」
パンズ。『バ』じゃなくて『パ』? バンズの間違いじゃないか?
しかし異界人にそんな事聞いても超面倒くさいすれ違いコントみたいになりそうだったので適当にお礼を言ってそこへ向かう事にした。
「OKOK、thanks」
「???」
英語も通じないのかよこの商人。やる気あんのかこいつ。
----------------------------
〈城下・噴水広場〉
「わぁ……広くて綺麗な場所ですね。大きな建物が色々あります」
確かにそうだがどうでもいい。俺は死ぬ寸前だ、時間はわからないがもうオヤツの時間くらいになってしまってるんじゃなかろうか、ヤバい。
そういえばスマホがあったんだ、見るの忘れてた。
俺はスマホをポケットから取り出した。
『異界アイテム【スマートフォン】を使用しますか?』
なんか目の前に文字が出てきた、何だこれ。
「イシハラさん、何ですかその機械?」
パイロット少女がマジマジとスマホを見るが、どうやら目の前に出てきた文字は見えてないらしい。
そんな事より使用しますかも何も持ち主は俺だ、何で確認を取られなきゃならないんだ、と俺は気にせず時間を確認するためホームボタンを押した。
すると何かスマホが空から光が差し込むような効果音を出しながら光はじめた、爆発か?
『アイテム使用により新たな『技術』を習得しました』
------------------------------------------
◇
『技術』・異世界マップLV1 ・異世界言語翻訳
・地球体感 ・脳内メモ ・視覚時間確認
・目覚まし etc………
------------------------------------------
【地球時間 14:32】
また視界に文字が出てきた、腹がへってるから何かイライラする。
何か視界の端に時間が映ってるし、幻覚も見えてきたようだ。とりあえず俺は文字を全て無視する事にした。
「バーガーショップはその裏だ、行こう」
「え?は、はい………何故場所がすぐにわかったのでしょうか……」
俺達は大きな建物の裏手の細い路地に向かった。
------------------------------------------
それらしき店を見つけた俺達はレトロな扉を開く。まるで地球の喫茶店のような鐘みたいな音を立てた扉をくぐり入店した。
〈軽食屋・『皿の裏』〉
「はーい、いらっしゃーい。何人ですか?」
「二人だ、ハンバーガーをくれ」
「あ、あれ? イシハラさん、言葉わかるんですか?」
何言ってんだこのパイロットは。同じ人間なんだからわかるに決まってるだろう。
「また変な格好のお客さんだねぇ……それよりも『ハンバーガー』なんてもんうちにはないよ」
「じゃあバンズだ、それをくれ」
「バンズ?……あぁパンズね、はいよー。座って待ってて」
ようやくだ。ようやくハンバーガーが食える、冷静に考えてみると異世界にハンバーガーがあるってのはおかしな話だ。何だこの異世界。
「落ち着いた雰囲気のお店ですね、お客さん誰もいないですけど……」
「関係ない、俺、腹へった」
「……イシハラさんさっきからそればかりですよ……」
「食ってから、全てはそれから」
「………」
「お待たせしましたー、はい、『パンズ』ね」
目の前に置かれたのは『サンドイッチ』だった。
「サンドイッーーーーーーーーーーーーーーーーチッ!!!!」
「うひゃぁっ?!」
机を叩くとムセンが変な声を上げた。
違う、そうじゃない。サンドイッチに罪はないが、俺の頭は今ハンバーガーになってるんだ。それ以外受け付けないんだ、と俺は苦悶した。
「な、何だいお客さん! 急に大声出して……っ、騒ぐなら出てってもらうよ?!」
「す、すみませんすみません。イシハラさん落ち着いてください……これではないんですか? 美味しそうですよほらっ」
確かに。
背に腹は代えられないとか言うしな、とりあえず食べて落ち着こう。俺はサンドイッチを貪(むさぼ)った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます