餅は餅屋
日頃インドア過激派を自称している身としては恥ずべきことであるが、ここ2週間のうちに、2度も旅行に行ってきた。一方は、遊びに来てくれた大学時代の同期と宮城県内を回る旅行であり、もう一方は大学院時代の同期と、オーストラリアのケアンズへ遊びに行く旅行である。
すごく楽しかった。すごくすごく、楽しかった。昼間は友人たちと目一杯遊び、夜寝る前には、その日特に心に残ったことをスマホのメモアプリに書き付け、撮った写真と一緒にこのブログにアップしようと企んだ。
しかし旅行から帰って数日、何度もそのときのことを書き起こそうと努力したのだが、いまいち上手くいかない。旅行中に撮ったおいしい食べ物や綺麗な景色の写真を見返したりして、感動を再体験しつつ書こうとしたのだが、そうして出来た文章がどうにも気に入らないのだ。
ただこれは、「あの感動を言葉にできない」みたいな、小田和正的な現象ではない。
何ヶ月か前にアップした新たなる門出という記事の中で私は、このブログの内容に関する「旅行記とか書いた方が閲覧数を稼げるのでは?」という自問に対し、『(私には)美しい景色を見て深く感動できるほど鋭い感性が備わっていないので、たとえば松島に行ったとしてその感想は「和風な海岸って感じで、よかった」の15文字で終了し、あとは延々と道中で視聴したYoutube動画の紹介をしていることだろう』と答えたことがある。
もちろん記事を書いているときは冗談のつもりだったのだが、これが意外なことに、わりと本当だったのである。
蔵王キツネ村について書こうとすると、「SNSの写真で見るより数が多くて、かわいかった」の23字で終わり、カンガルー肉の味について書こうとすると、「チーズをかけると美味しかった」の14字で終わり、グレートバリアリーフについて書こうとすると、「海が青くて広くてすごくキレイで、私の上半身くらいデカい魚がいた。あと亀も」の36字で終わってしまう。一応自身の心の内を言葉にすることはできているのだが、そもそもその心の内が薄っぺらすぎて話にならないのである。
子ども包丁並に切れ味の鈍い我が感性については、まぁ、多少の落胆を覚えないでもないが、それは言ってもどうしようもないことである。人には得手不得手があるものだ。人生は短いのだから、不得手なことにそう長くかかずらうこともない。それで、『食レポ』と『旅行ルポ』が不得手な私がこのあと何を話すのかというと、言ったはずである。『道中で視聴したYoutube動画の紹介』だ。とはいえ最近ハマっているYoutube動画は前回紹介したばかりなので、今回は『飛行機内で視聴した映画』を紹介させてもらおう。
①名探偵コナン ゼロの執行人
2018年4月の公開以来、 “ゼロシコ” の愛称でおなじみの劇場版名探偵コナンシリーズ22作目、『ゼロの執行人』である。私は往路の飛行機に搭乗してすぐに、この映画の視聴を始めたのだが、これには合理的な理由がある。
安室透という人物をご存じだろうか?上に載せた画像の右上に、デカデカと描かれている、金髪の彼のことである。この安室透は、映画ゼロシコ内ではもちろんのこと、週刊少年サンデーで連載中の原作でも物語の鍵を握る重要人物として描かれているのだが、そんなことより注目すべきは彼の持つその人気である。私は名探偵コナンの漫画もアニメも別に見ていないのだが、そんな私のところにも伝わってくるくらい、安室透の人気は凄まじいのだ。ここ一年くらいずーっと、pixivの小説デイリーランキングの上位に安室透が出てくるコナン二次創作が上っている……と言ってもみんなにはピンと来ないと思うが、彼のあまりの人気ぶりから、安室透が主人公のスピンオフ漫画『ゼロの日常(ティータイム)』が誕生した、と言ったら少しはわかってもらえるだろうか。
それでこの安室透と、私が搭乗1発目にこの映画を選んだことにどういう関係があるのかという話だが、この安室透のファンにはガチ恋勢が多いのである。ガチ恋勢とはつまり、アイドルやアニメのキャラクタなどに本気で恋い焦がれている人々のことを指すのだが、見目が良く優秀でミステリアスでユーモアもあるみたいな、いわゆるスーパーダーリン設定の安室透には、このガチ恋勢がめっちゃ多くついているのだ。
一方私は、前にも言ったが飛行機が怖い。搭乗を待つ間、胃の捩れるような恐怖と戦っていた。そして座席についてすぐ、その恐怖を紛らわせるのに一番良い映画を探していた私は、『ゼロの執行人』のサムネイルとそこに描かれた安室透の顔を見て思ったのだ。
「今すぐ安室透にガチ恋すれば、この恐怖を忘れられるかもしれない!!」
思うに私は恋愛に対し向精神薬的な期待をかけがちなところがあるが、それはさておき、恋愛時に脳内で分泌されるドーパミンの働きによって、飛行機に対する恐怖を軽減させようとしたわけである。我がことながら、見事と言わざるを得ない合理的思考だ。感服に値する。
それで結果であるが、意外にも序盤から中盤にかけては安室透の出番が少なく、一番怖い離陸のタイミングでは期待した効果を得ることは出来なかった。が、ラスト15分の怒濤のたたみ掛けは、すごかった。その部分の安室透があまりに格好良かったので、ラスト15分のところだけ繰り返し5回観たほどだ。安室透ガチ恋勢になったか?と訊かれると微妙なところであるが、とりあえず帰国後すぐ、『ゼロの日常(ティータイム)』をAmazonで購入した。
②ベンジャミン・バトン 数奇な人生
2008年公開の有名な映画なのだが、観たことがなかったので観た。
主人公ベンジャミンの人生のどこが数奇なのかというと、生き物は全て若い状態で生まれて、死ぬまで老いてゆくものであるはずだが、彼はその逆で、老いた状態で生まれ、死ぬまでどんどん若返っていくのである。
この映画を観て思ったのは、赤ん坊と老人には意外と共通点が多いのだな、ということである。生まれたときのベンジャミンは重度の白内障で目が見えず、耳もほとんど聞こえず、体中が関節炎でシワだらけという状態だったので、他人とのコミュニケーションはほぼ取れず身の回りの世話も全て人にやってもらわなければならなかったのだが、これは通常の赤ちゃんとあまり変わらないように思える。そして晩年の彼は、目も耳も聞こえているし体も動くのだが、重度の痴呆症で会話ができなくなって、また体が赤ちゃんなので身の回りの世話はやはり人にしてもらっていた。これも通常の介護老人と(介護にかかるコスト以外)そんなに変わらないように思える。
劇中では若い(けど体は老いている)ベンジャミンが船乗りとして働いたり、売春宿に通ったり、戦争で仲間を失ったり、恋をしたり、子どもを作ったり、しかし持って生まれた体質故に別れなければならなかったりなど色んな事がある。個人的には、ロシアの港で人妻と不倫するパートが、エモーショナルで好きだった。
③ボヘミアン・ラプソディ
2018年10月23日に公開され、未だ人気放映中のフレディ・マーキュリーの伝記映画である。座席の背もたれにへばりついた小さな画面からでも伝わってくるくらい、迫力のある映画だった。鑑賞後、いろいろ思うところはあったが、とにかくこういう生きるのが下手というか、愛したり愛されたりするのが下手な人ってやっぱりいるんだなぁと感じた。
あとこの映画で一番好きなところは、若い頃のフレディがちょくちょく他人をふざけて「ダーリン!」と呼ぶところである。挑発的で、周囲の気を引きたい気持ちが表れている気がして、かわいい。ぜひ私も真似したいところであるのだが、あいにく私の周りには恋人はおろか友人もいない。まさか職場の人間に「これ後でコピーお願いします、ダーリン!」とか言うわけにもいかないので、とりあえずは、自宅で育てている観葉植物に毎朝呼びかけることにしている。
追伸
先日、「スープに入れるプチトマトを切ると良い」というアドバイスをくださった方、ありがとうございます。プチトマトを丸ごと入れると、噛み潰したときに突然酸っぱいのが気になるのであんまり美味しくなかったのですが、先週、半分に切ったプチトマトを使って改めて作ったところ、おっしゃる通りトマトの酸味がまろやかに分散されて美味しく食べることができました。HNも、とても嬉しいです。これからもよろしくお願いします。
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