第84話 逆ナン

「ありました。ここです」


「ここ……」


(高嶺さんの誘導で駅から十分ほど歩いて目的地には着いたけど……お、大き過ぎない!?)


「お、大きいね」


「何やら……人気施設のひとつにするために大金をかけて建設されたとかで」


「へぇ~、高嶺さんそんなことよく知ってたね。僕、全然知らなかったよ」


「い、いえ、私もチラシを見て知っていただけですので」


「僕の家にも入ってたのかなぁ……?」


(せっかく、高嶺さんはチラシとかで行き先を選んでくれてたのに僕はチラシの存在なんて知りもしないで……これからは、よく見てみよう)


「……それにしても、やっぱり、出来立てだからか人、多いね」


(こうして、入り口付近で話してる間にもどんどん人が入っていく)


「わ、私達も早速入りましょう!」


「う、うん!」



(高嶺さんよりも随分と早く着替え終わっちゃったから、更衣室を出た所で待ってるけど……心臓が……静まってくれない。うるさいくらいに高鳴ってる……!

 ……って、ダメダメ。余計なことは考えない……。何か、違うことを……!

 ……にしても、こうして待ってる間にもどんどん人がプールにやってくる。家族、友達同士、恋人同士……まぁ、千円で屋内と屋外のプール両方で遊べるんだから安いもんね)


「ね~ね~」


「はい……っ!?」


(め、目の前に二十歳くらいのお姉さんが二人!?)


「さっきから、ずっとそこにいるけど誰か待ってるの?」

「良かったら、私達と一緒に遊ばない?」


(……っ、こ、これって、逆ナン!? 逆ナンってやつですか!?)


「いえ、あの……と、友達を待ってるので……」


「友達か~。じゃあ、私たちも一緒に待つから遊ぼうよ!」


(……っ、お、大きなた、谷間が……目の前に……)


「い、いえ……困ります……」


「あ、目を逸らした~」

「照れてるんだ~可愛いねぇ~」


(しょ、しょうがないでしょ……! 現実でこんなの見たことないんだから……!)


「あ、あの、僕なんかよりもっと良い遊び相手がいると思うので……ご、ごめんなさい……!」


「そんなことないよ~私達は君と遊びたいんだよ」

「そうそう。それに、君なら誠実そうだから変なことしないと思うしね」


(そんなこと言われても……僕は、見ず知らずの女性となんて一緒に遊べないよ……!

 怖い……怖い……このお姉さん達の目が怖い……)


「あの、やっぱり――」


「――お、思井くん! お待たせしました……!」


「……っ、高嶺さ――」


(グハァァァアアァァァ――!

 振り向いた瞬間に目が……目がぁぁ――!

 た、高嶺さんの水着姿……可愛い……!)


「ムッ……思井くん、この方達は?」


「あ、いや……なんでか知らないけど一緒に遊ぼうって誘われて……」


「へぇぇ~……一緒に遊ぼう、ですか……?」


「あ、いや、私達は別に……ねぇ?」

「う、うん。二人だと寂しいからちょっと、遊び相手が欲しかっただけで――じゃ、じゃあ、またね」


(あれ、なんでだろう? 高嶺さんが現れた途端、お姉さん達が一瞬にして帰っていっちゃった……。

 確かに、高嶺さんと一緒にいると自分の容姿と比べちゃうのかも知れないけど……遊び相手が欲しかったはずじゃないの?

 やっぱり、僕には逆ナンしてくるような人の考えなんて分からないよ……!)

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