第59話 何も変わらない
「……今、何時なんだろう……?
まだ、夜の九時か……」
(人間って、本当に欲望に忠実だな……。
高嶺さんを泣かせてしまったくせに、自分が悲しくなると疲れて眠ってしまうんだから……)
「……高嶺さんに謝りたい……。でも、なんて謝ればいいのか分からない……。調べよう……」
(【カップル ケンカ 謝り方】……。
検索にかけたらいっぱい出てくる。やっぱり、どこのカップルもケンカはするんだ……。
え~っと……――
『高価な物を送って精一杯謝りましょう!』
『どこかへ、デートに行き、謝りましょう』
『豪華な食事でもして謝りましょう』
『土下座しましょう』
『もう、その恋は諦めて次の恋へ進みましょう』
……ダメだ、どれもこれも使えない……)
「……っ、本当に使えないな……この、クソスマホが――」
(……ううん、違う。本当にクソなのは僕自身だ。自分じゃ分からない答えをネットに頼って、自分ではなんにもしようとしない。そんな謝り方で高嶺さんが喜ぶと思ってるのか……?
いい加減にしろ……。僕は、自分でどうしたい? 高嶺さんに謝りたいんじゃないのか? 僕のせいで、傷つけてしまった高嶺さんに謝りたいんじゃないのか?
だったら、考えろ……。自分がどうするべきなのかを。どうしたら、高嶺さんに謝れるのかを……。
変わるしかない……。ネットにはない答えを自分が見つけないといけないんだ。だから、変われ。誰も僕の代わりをしてくれる人なんていない。高嶺さんに嫌われたって構わない。何もしないよりは全然良い。自分が動いて変わらないと何も変わらないんだ……!)
「僕は変わる……。高嶺さんに謝るために……。だから、先ずは――」
「あ、お、お兄ちゃん……もう、大丈夫なの?」
「……うん。ゴメンね、珠、お母さん。心配かけて」
「良いのよ。心配かけられるのが親だもの」
「お兄ちゃん……元気出して、ね?」
「うん、ありがとう」
「ご飯、食べるでしょ? 今、温めなおすわね」
「その前に二人に聞いてほしいことがあるんだ……」
「「どうしたの?」」
「僕は高嶺さんを傷つけてしまった……」
「「な、何をしたの!?」」
「まさか、相手の親にまで謝りに行った方がいいようなことなの……?」
「そ、そこまで大袈裟じゃないよ……これは、僕が一方的に高嶺さんを悲しませてしまったことだから。だから、僕は高嶺さんに謝りたい……。けど、今のままじゃダメだと思うんだ。高嶺さんに謝る資格が……今の僕には、ない」
「……お兄ちゃん、大丈夫? 苦しそうだよ……?」
「大丈夫……大丈夫だよ……。僕には苦しんでる暇なんてないから……」
「それで、立衣はどうするつもりなの? 高嶺さんに謝るためにどうする気なの?」
「僕、変わろうと思うんだ。高嶺さんに謝るためには今のままの僕じゃダメなんだ。だから、僕は――」
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