第45話 デート開始

「ど、どこへ行きましょうか……?」


「う~ん……高嶺さん、一度家に戻らなくても大丈夫? その、今日はテストだけで早く帰れる訳だけど誰か家には……」


「だ、大丈夫です。今日もま……お、お母さん達は仕事ですし、お姉ちゃんもいません。それに、お金も持ってきているので……」


「そっか。じゃあ……アリオヤにでも行きますか? あそこなら、色々と入ってるし」


「は、はい!

 じゃ、じゃあ……で、デート、開始ですね……!」


「う、うん……!」


(……っ、デートだって意識すると……妙な気分になるというか……高嶺さんも赤くなってるし、僕も熱い……!)



「うわぁ……やっぱり、平日だっていっても人、結構いるね……」


(僕達がいるのはアリオヤから少し離れた信号機の前。赤信号で止まらされている。少し離れたこの場所からでも、アリオヤの人気は一目で分かる……流石、僕も何度もお世話になってる場所だ!)


「そう、ですね。あ、思井くん、信号、青になりましたよ」


「じゃあ、行こっか」


(アリオヤは超がつくほどの大型ショッピングモール。飲食店や買い物店、映画館やカラオケ、ゲームセンター……等、ここだけで一日中満喫できるような場所。僕だって、一人ででも家族ででも何度も来たことがある)


「高嶺さんはアリオヤに行くこととかあるの?」


「さ、流石にありますよ。まぁ、何度かですけど……でも、ここは私にとってとても大切な場所なんです……!」


「そうなんだね」


(確かに、ここは凄い立派な場所だし、なくなったら困るけど……そんなに、大切そうにしてまで言うほどの場所、なのかな……? それとも、何か大事な思い出がある、とかなのかな?)


「身近な場所にこんな大きなショッピングモールがあって良かったよね」


「はい。数回ほどしか来たことはないですけど、その度に驚かされます。それに、ここは初めて……――」


(なんだろう? さっきから、やたらとチラチラって高嶺さんに見られてる気がするんだけど……僕が意識してるだけなのかな?)


「高嶺さん、普段は買い物とかどうしてるの?」


「近場のスーパーで、ですかね。あとは、ネットです」


「基本、家から出ないの?」


「……まぁ、その、はい……。基本、遊びに行ったりもしないので……引き込もってます……。お、思井くんはどうなんですか?」


「そうだねぇ~……僕も、まぁ、引き込もってるよ……。何か欲しいものがあれば、それこそここまで来たりするけど……結構、距離があるから……」


「そうですよね……。ここは、凄く大きいけど……それなりに場所もとりますからね」


(アリオヤは高嶺さん達が住む高級住宅街をさらに奥に行った所に建ってある。僕達は今日、学校からの帰り、いつもとは違う道を歩いてここまで来たけど……普段は、バスにでも乗らないと来る気はそうそう起きない。そこだけが、問題っちゃ問題――)


「つ、着きましたね……まず、どこへ行きましょうか? 色々あって悩みます……。思井くんの行きたい場所やオススメのお店などはありますか?」


「う~ん……」


(入り口にあるアリオヤの全体図を見てもやっぱり、悩むな……。

 それに、デートデートって意気込んでたけど……僕、これ初お外デートだよ!? 何をどうしたらいいの!? 全っ然、分かんない! デートプランとかも決めてないし……どーしよぉぉぉ――!)


「と、とりあえず、お昼も過ぎてるし何かまず食べようか……?」


「そうしましょう!」


(ヤバい……とりあえず、後でトイレに行ってデートプランについて調べないと……!)

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