第30話 高嶺さんの話し方
「じゃ、じゃあ、次、高嶺さん。高嶺さんはどうして敬語なの?」
(笠井さん。なんだか、足をモジモジとさせながら高嶺さんへ話題を変えたぞ……。僕の話し方はどうだったの?)
「どうしてと言われましても……気がつけばこうやって話していたので理由なんてありません」
「はぁ~じゃあ、やっぱり、お嬢様って噂はホントだったんだ」
「いえ、私はお嬢様ではありません」
「え、そ、そうなの!? 皆、お嬢様って噂してたからそうだと思っちゃった」
「その噂は誰かが口にしたデタラメですよ」
「え~、じゃあ、家でも敬語なの?」
「はい。お母さんとお父さんにはですけどね。お姉ちゃんに対してだけは普通に話してます」
「え、逆になんで、お姉さんには普通に話してるの!?」
「……さぁ? ただ、なんとなくというか……お姉ちゃんだからですかね?」
(……まぁ、あのお姉さんに対してだもんな……)
「そっか~。姉妹の絆か~。それじゃ、高嶺さんは仕方ないね~」
「仕方もなにも、私は元から変えるつもりがありません」
「……あの、僕は――」
(う……高嶺さんと笠井さん顔を見合わせて――これは、また怒られ――)
「……ふふふふ」
「……アハハハ」
(あれ、怒られない? それどころか、高嶺さんはクスクスと、笠井さんは元気よく笑ってる)
「思井くんの話し方は新鮮だと思いました。私は嫌いではありませんよ」
「うんうん、私も嫌いじゃないよ。違和感は感じるけどね。あと、えっちなんだってことがよく分かったよ」
「はぁ……」
「ま、だから、徐々に変えていけばいいんじゃない? 私達にはもう敬語じゃなくて大丈夫でしょ。ね、高嶺さん」
(高嶺さんと付き合い始めて、ずっと敬語で話してたけど……僕が敬語で話さないことを高嶺さんはどう思うんだろう? 嫌いじゃないとは言ってくれたけど――)
「ん、どうしたの、高嶺さん。思井くんのことじっと見つめて」
「そうですね。思井くん、私にも敬語じゃなくていいですよ」
「そう、です……そ、そう? じゃあ、頑張ってそうしようかな……」
「そうしなよ~。あ、いつの間にか、これで最後だね。やっぱり、楽しみながら作業すると早く終わるね。よっし、これで終わりっと」
「あとは、職員室に持っていくだけだけど……結構、重いし僕が持っていくよ」
「お、流石、男の子だね」
「失礼しますよ~」
「「「先生」」」
「あ、ちょうど終わったようですね。量が多いにも関わらず、手伝ってくれてありがとうございます。職員室には私が持っていくので三人はもう帰っていいですよ」
「本当!?」
「はい、お疲れ様でした。高嶺さんも日直じゃないのにありがとうございます」
「いえ、私がやるべきだと思っただけですから」
「高嶺さんがそう言ってくれる生徒で良かったです。それじゃ、さようなら~」
「「「さようなら」」」
(……先生、よろよろと戻っていったけど大丈夫かな? まぁ、大人だし大丈夫か。それに、これくらいは手伝ってもらっていいだろ)
「それじゃ、私達も帰ろっか!」
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