第14話 彼女の姉は重度のシスコン
「まぁ、私の氷華にあんなことをされて、手を出さなかったことは認めてあげましょう」
(……いえ、あの時はドキドキし過ぎでして……と言うか、めちゃくちゃファーストキッス貰ってほしいと思っちゃいました!)
「あ、ありがとうございます……?」
「ところで、あなたは誰なのですか? いったい、氷華とどういうご関係で?」
(ゲッ……! こ、ここで、この質問がくるのか!? なんて、答えたらいいんだ!?
『高嶺さんの彼氏です!』……なんて、言ったらそれこそ僕は殺される……!)
「いや、あの、その……」
「どうしたのですか? 答えにくいのですか?
……はっ。も、もしかして、いたいけな氷華を騙して食べてしまおうと思っていた狼さんなのですか!? だとしたら、私は――」
「ち、違います! 違いますから、落ち着いてください!」
(ゴゴゴゴ――って、高嶺さんのお姉さんの後ろに炎が見える気がする……!
こ、ここは、無難に友達って……)
「本当ですね?
でも、まぁ、どんなご関係でも許す気はないのですけどね。そうですね――せいぜい『友達』……なら、考えてあげてもよいのですがね。何しろ、今日は可愛い妹が初めてお家に友達を連れてきた記念日なのですから!」
「お、お姉ちゃん! もういいから、黙ってて!」
「な、何をするのですか? スキンシップは嬉しいのですが、少々激しいですよ――ムグググ」
(高嶺さん……恥ずかしそうに必死でお姉さんの口を手で抑えて……でも、大丈夫ですよ。デブボッチの僕の家には誰も遊びになんてきたことないですから!
……あ、高嶺さんのお姉さん……めっちゃ嬉しそう……)
「あの、お姉さん。僕は高嶺さんの友達――」
「お姉ちゃん。そのままでよく聞いて。思井くんは私の……か、かか、彼氏、なの!」
(た、高嶺さーーーん!? 何を堂々と言っちゃってくれたんですか!? 僕、殺されちゃうんですよ!?)
「分かったら、お姉ちゃんはもう出ていって――え、な、何!? お姉ちゃん、熱いよ!?」
「彼氏……彼氏……? 氷華の彼氏……? 私はなれないのに氷華の彼氏……?」
「お姉ちゃん、何をぶつぶつ言って……消えた!?」
(高嶺さんが反応できない速度で空中へ!? どこで習った舞空術ですか!?)
「キィィィヤァァァ――ぶっ殺してやる」
(クッ……あの拳、僕の肉で受け止めきれるか!?)
「もう、お姉ちゃん! いい加減にしないと怒るよ!」
(な、なんだ? 急に降りてピタッと止まった……?)
「そ、そんなこと言わないでください、氷華……私はただ、恨めしいこの不届き者を――」
「思井くんは私の彼氏なの! 思井くんを傷つけたら、お姉ちゃんなんて大っ嫌いになるんだから!」
「だ、大っ嫌い……ガハァァッ――!」
(た、高嶺さんのお姉さん……血を吐いて、倒れましたよ!? 大丈夫なんですか!?)
「す、すいません、思井くん……お姉ちゃんが色々と迷惑を……」
「い、いえ……あの、お姉さん大丈夫なんですか……?」
「さぁ……でも、ほっといてください。しばらく、お仕置きです!」
(プクーってしてる高嶺さん……可愛い……。って、お姉さん立ち上がりましたよ!?)
「氷華……申し訳ありません……。だから、嫌いにならないでほしいのです! もう、氷華の彼氏さんに何もしないので、お願いしますのです!」
「本当に?」
「本当なのです! だから、嫌いにはぁぁぁ~~グスグス……」
「わ、分かったから泣かないで……。そのかわり、もう思井くんに迷惑掛けることは本当になしだよ?」
「はい、なのです」
「じゃあ、許してあげる」
(クゥゥ~ッ、これが、姉妹の愛、か……。美しき世界――皆が幸せになれる世界、最高ォォォ――!)
「じゃあ、彼氏さん。今から私の部屋に着てください。二人っきりで話しましょう。ね?」
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