私は今日も喫茶「MOON」に通う

桃もちみいか

第1話 喫茶「MOON」

 私は今日も喫茶「MOON」に通う。

 昔から町にあり景色に馴染む喫茶店だ。


 一人暮らしの私。

 その日は特に一人で食べるご飯が味気なく感じていた。

(ランチは外で食べてみようかな?)

 人見知りで臆病な私は勇気を振り絞って、住まいから歩いて8分ほどの距離の喫茶店に恐る恐る入ってみた。

 

 それが去年の今頃だ。

 桜が満開になるかならないかのあの日に私は喫茶店に初めて足を踏み入れてから、毎週土曜日と日曜日のご飯のいずれかはここに食べに来る。


 朝八時から五時までは喫茶店で、夕方五時から九時まではバーのようでお酒が楽しめた。

 喫茶店は二十代後半ぐらいと思われる双子が店主だった。

 双子の兄が朝から昼のマスターで、夜の方は双子の弟がマスターになっている。

 夕方のあいだの時間は夜の仕込みをしながら、双子のマスターは二人でカウンターにいることが多かった。


 私はこの喫茶「MOON」のロイヤルミルクティーと卵サンドの虜になった。

 私は珈琲も好きだが紅茶も好きだ。

 喫茶「MOON」の飲み物も料理もどんな味なのか色々と試したいとは思っていたが、初めに食べた卵サンドがあまりにも美味しくてついついいつも頼んでしまう。


 そして。

 いつも一人で窓際の二人用のテーブルの同じ場所に座るお客が気になっていた。

 歳は三十代後半から四十代前半ってとこかな〜?

 茶色い眼鏡をかけていて服装はスーツが多かった。

 彼はグラタンやナポリタンや会う日毎に違う食べ物を頼み、違う飲み物を飲んでいた。


(メニュー全制覇でもするつもりかな?)


 なん、だろう?

 彼の仕草ひとつ一つが気になってしまう。

 私が喫茶「MOON」に来店する時間はまちまちなのに彼は同じ時間に偶然にも居る。

 私は話したこともないその人に親近感を覚えてしまっていた。


 同じ時間に居合わせている。

 ただ、それだけなのに。

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