第10話 イタズラ
次の講義からも、ユキは講師にイタズラを仕掛け続ける。
どの講師も、ユキがやったことだとは気付きはしない。
印刷されたプリントが綺麗に紙飛行機型に折り畳まれて飛んで行ったり、黒板消しがダンスを始めたり、明らかに不自然なことがあっても。
誰もがそれをよくあることだと、ユキの仕業だと気付かない程度に、あまりにもこの世界は魔術に満ち溢れていた。魔力が満ち溢れていたのだ。現代日本で言う『心霊現象』のようなものだと思って、スルーされていたのだ。
だが、一週間が経って、陰陽五行の2回目の講義のときに、講師は気付いた。一連のおかしなことがユキのイタズラだ、と。
「あなた、真面目に聞いている様子がありませんが、一体ブツブツと何をしているんですか?」
講師が静かに怒る。
静かな怒りというのは、恐ろしいものだ。感情にまかせて怒られる方がいっそ何も怖くない。ユキはすっかり萎縮してしまい、本当のことを洗いざらい話した。
「――それで、あなたはイタズラのために魔法を組み立てていたというわけなのね?」
「そうです、でも、悪いことをするつもりはなくて――」
ただの知的好奇心からのことだった、と言い訳するユキに、講師はそれ以上怒ることはなかった。どころか――魔術専門の自分の研究室の方に入れ、1年生の講義を受けるに相応しくない、と科学者志望のユキにはある意味ありがた迷惑かもしれない言葉を投げつけたのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます