星屑の祈りに託して

ヒツジノ

第1話   ハートに火を点けて

親鳥は落ちてしまったヒナにピーピーと鳴きましたが、次の日には他のヒナたちにせっせとエサを運びました

親鳥はヒナのためにがんばります

ヒナたちも落ちてしまった兄妹のことを忘れてピーピーと鳴いています

落ちたヒナはうす黒くなって冷たい色をしていました

その次の日には落ちたヒナはいなくなっていました

もう世界からそのヒナは消えてしまったのです


子供の頃、夏休みの自由研究を先生に怒られたことがある。

親は私に無関心だったから宿題なんて見なかったし、私も同じように先生に無関心でいて欲しかった。書き直すようにも言われたけれど何故か納得いかずそのまま提出した。

私の名前が「ヒナコ」というからか、はたまた兄が優秀で妹の私はクラスでも孤立気味の問題児だったからなのか。

なんにせよ、その作品と私を取り巻く環境はどうにも先生にとって具合が悪かったようだ。


落ちたヒナのように

私は無関心でいて欲しかった


種の優越が世界の法則なら私は淘汰されても良いと思った。

なのに世界はなかなか私を消してはくれなかった。家では無いように扱われ、学校では無いようにあって欲しいと願われてる気がして。

ならば淘汰されてもいいのに生ぬるい社会が、道徳が、私の命を保証した。

私を過ぎ去る世界はどこか他人行儀に満ちていて、つまらない映画を観させられている。

終わりの来ない駄作。

それを終わらせることが唯一許されている気がして。

目を瞑り、惰眠を貪り続けるよりも、なかなか現れないこの映画監督を引っ張り出してやろうと思って。


今日、住み慣れた家に火を放った。

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