不老の女子と年確男子
どるとん
第1話 俺、見えるんです
「いらっしゃいませ〜、こんにちは〜」
(いつも通り、決められたセリフを言い淡々とこなすだけ。まったくスーパーのレジの仕事は楽ったりゃありゃしない。)
ロボットのようにレジを打っている
一見、普通の高校生となんら変わらない快星には他の人には見えないものが見えていた。
俺だって『他の人には見えてないものが見える』なんて聞いたら、奇妙な冒険が待ってそうなス○ンドとか、ミステリーな展開が期待される霊的な何かとか考えます。でも、俺が見えているものは……年齢なんです。
……
俺だって見えるようになるならス○ンド見たかったですよ!!なんですか年齢って!しかも見えると言っても頭の上にレベルみたいに出たりとか、そんなRPGみたいなこともないです。左胸のところに俺にしか見えない名札のようなものがくっついていてそこに年齢が書いてあるだけ。
ご想像できる通り、この能力を持ってても大した得なんか今まででしたことはありません。強いて言うならバイト途中の暇つぶしに役立ったりするだけです。
例えば、ハゲてるおっさんだと思って年齢をちらっと見たら、20代前半で「(うわ〜かわいそうに、お勤めご苦労様です。)」とか、童顔少女がきて「(かわいいなぁさては俺この歳にしてロリに目覚めたか!)」と思って年齢見たら……30歳……「魔女なの?!」とか……せいぜいこんなしょうもないことだけですが。
能力を持ちながらも何も得をせず、気づけば快星は17歳──高校最後の年を迎えようとしていた。
◇◇◇◇◇◇
「今日から3年かぁ……緊張するなぁ……。」
そうつぶやきながら、快星は2年間通った
『進路内定クラス──3−5』
になるのはわかっていた。ただ、あまり友達の多くない快星にとって新しい環境というのは腹痛が伴うほど、緊張するものであった。
ぐぅぅぅううう……
「お腹痛い……あぁ緊張する……」
なんども呪文のように唱えながらも快星は3-5の教室まで重い足を運んだ。教室に着き緊張のあまり吐きそうになりながらも扉を開けた。
「オー!カイカイ!ひさしぶり!」
大きな声で挨拶したのは、快星の親友──
「ダイダイぃー(泣)お前がいてくれて本当に助かったよ……ってそれにしても座席少ないな。」
教室前方に偏った机と椅子を見て快星は言った。
それもそのはず。3−5は進路内定クラスともあって人数は通常のクラスの半分にも満たないほどであった。
「まあ俺ら優秀だからな!」
「俺らって、お前は勉強においては学年で見ても中の下くらいだろ、まあそれでも2年にしてサッカーの推薦もらっちゃったんだもんなぁ……そう考えたらお前優秀だな」
「カイカイだって勉強ができる上に、絵うまくて美大から直々のオファーきたんでしょ?それはすげーよ、うん。」
「いやいやあれはたまたま中学の時に描いた絵が美大の人に気に入られただけだよ」
快星は中学の時に公園で描いた『桜の木と高校生』という作品で全国規模のコンクールで大賞を受賞していた。その作品に心を奪われた美大の教師が是非と2年の秋に快星にオファーしたのである。
「あの時モデルにした人に未だにお礼言えてないんだよなぁ、そもそもあれ以来見てないな……あの人、俺の初恋の人なのに……。」
ガラガラガラ
前方の扉が開くやいなや、黒くて長い髪が教室の窓から入った風になびいた。風は一瞬で止み、止んだと同時に少女のあまりにも美しくあまりにも眩しい顔が快星の目を奪った。
「「か、か、かわいぃぃいいい!!」」
快星と大那は見ている方向は違ったが、声を揃えた。それと同時に快星は仰天した。
「あれ?あの時の人だ!」
そう、『桜の木と高校生』のモデルにした高校生が目の前にいたのである。
「でもあれは……3年前……」
快星はまさかとは思いながらも自然な流れで年齢に目を向けた。
「2……26歳ぃぃぃぃいいいいいいい?!?!?!」
快星は一人の少女の知ってはいけない秘密を知ってしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます