4月1日 -1-
学校まで行く道は桜の木があり、もうじき満開宣言が出そうな蕾であった。
そんな桜並木の道を歩いていた。
鬱陶しいぐらい明るい太陽とは裏腹に学校の制服をほんの少し着込まないといけない肌寒さであった。
億劫でいつも見ている町並みだ。
左手は向かいから車が来て僕の横を通ってくる。
そしてそこからほんの少し右に歩道があり右手には住宅街が並んでいて、中が見えないように塀になっている。
そんな飽き飽きした道をひたすら背中を少し曲げて歩いていた。
そこをしばらく歩くと車が2台ずつ横に並んで走る交差点に出た。
その交差点を右に曲がったところで後ろから聞き覚えのある男の声が聞こえた。
「よっ、おはよっ!」
僕の肩をポンっと叩いた。
普段の僕とは違って明るい声は友人の悠真(ゆうま)だった。
「おはよ」
僕はだるそうに返した。
悠真は僕の横に並んで歩いてきた。
「春休み何してた?」
「家に引きこもって小説を読み更けてた」
「相変わらず、勿体ない春休みだな」
「本の中が一番楽しい」
なんてとめどない話をした後、悠真はちぇっと言わんばかりに頭の後ろに両手を置いて歩いていた。
僕は黙って歩いた。
悠真は学校ではまあまあ人気で女子からもよく告白されるそうだ。
確かに、あまり人とは接しない僕でも見たらわかる顔の整ったイケメンって部類だった。
目はキリッとしてて頰は丁度良い感じの肉の付き方、本人曰く、人気の俳優の'間宮祥太朗'に似てるとよく言っている。
「毎朝、会うけど悠真は僕以外に友達いるでしょ?」
そんな言葉を聞いた悠真は町道に並んでる木を見ながら
「はっ!お前さん以外には友達なんていねぇの」
「僕ら友達だったんだ。」
そんな冗談を僕はだるそうに言った。
「そりゃな、あの時から俺はそうだぜ。」
「そう」
僕はため息混じりに言った。
僕の頭の中にちょっと昔の事を思い出した。
あの時の事…
僕は桜の雨の中を歩いていた。
別に、当時は薔薇色の日々を期待してたわけでもなく普通の高校生活を送れればそれで良かった。
桜の雨が降りしきりる歩道で僕は僕より年上の金髪のお兄さん、世間一般ではヤンキーって奴だ。
そんな人に何かの腹いせか僕は金をせがまれた。
無視しようとしたら、怒鳴られその場から動けなくなってしまった。
顔を真っ赤にして怒鳴ってくるヤンキーは僕を殴った。
自分が思ってたより身体は良く飛び、良く転がった。
殴り飛ばされたのは歩道だったので車道には出なかった。
大の字になっていた。
顔は痛く、身体も痛かった。
桜の散るところを真下から見ていた。
最悪だ…そんな事を思っていた時だった。
「お前さ…、こんな弱っちい奴からしか金をせがめないの?」
同じ高校の制服を着ていた。
片方の手はポッケに入れていてもう片方は、学校指定の黒いカバンが肩の後ろに来るように持っていた。
顔は確かに見惚れるほどに整っていた。
でもその目は、今でも人を殺しそうだった。
その男は一回り大きいであろう男に睨みを利かせながら近づいた。
ヤンキーは
「なんだと?じゃあ兄ちゃんが金出してくれるのか??」
「金が欲しいなら、くれてやるさ。でも弱い奴から金を巻き上げるの何て言うか知ってる??」
「あ〜?知るかそんなもん」
「カツアゲって言うんだぜ!」
そんな言葉を言った瞬間だった。
同じ高校の制服の男は一回り大きいヤンキーを下から上に鼻を殴った。
ヤンキーは浮いた。
僕はその姿を体を起こして目で追うことしかできなかった。
何が起きてるかわからない。そんな言葉を使っても良いほどの事だ。
ヤンキーは背中から落ちた。
そんな姿を見てると
「なにを固まる事があるんだ。学校始まんぞ」
男は僕に手を伸ばした
僕はその手を掴み立ち上がった。
「ありがとう」
僕はそう言って早足でその場から去ろうとした。
「同じクラスの○○だよなぁ?いつも本を読んでる」
僕の身体は止まった。
何で知ってるんだ?むしろ僕は君の事を知らないんだけどと思った。
ゆっくり下を向きながら後ろを向き
「そうだけど、今日以外に僕は会話したことがあった?」
「話した事は無いけど、俺には無いもん持ってるから少し気になってた。」
「そう…」
僕はその場を後にした。
あれから約一年だ。
学校ある日は毎朝、悠真と一緒だ。
「おーい!ボーッとしてんぞっ!」
肩をトンっとされた。
僕は、はっと昔の回想から覚めたようになった。
いつみても懐かしさのない校門の前まで来ていた。
門の前には教師が挨拶していたり、生徒達がきゃっきゃっと喧騒したようにざわめいていた。
だだっ広い入り口を抜けてまっすぐ歩き、玄関に向かう。
そこで靴を脱ぎ自分の靴箱に靴を入れて指定の靴に履き直した。
そこから左に向かって歩き突き当たったところを右にさらに突き当たりにある階段で三階まで登った。
登り切って右に曲がり最奥まで歩いた。
ここが僕の教室だ。
入って一番奥の一番端っこで黒板より程遠く、でも窓の近くだ。
そこに僕の机はある。
その机に荷物を置いて、体育館に向かった。
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