となり
美春繭
第1話 と
「もう同じ間違いはしないよ」
心配する母に見送られながら、僕はこれから通う事になる学校へと向かった。
この土地には、先日父の転勤で引っ越してきたばかり。
新しい学校は徒歩で行ける場所にある。
僕が困らないよう、学校の周辺に新しく住む家を探してくれたみたいだ。
赤信号で足が止まる度に、ジャケットのポケットに入れていた鏡を取り出しては髪型を入念にチェックする。
・・・・初日だし。
見た目は大事だから・・・・・っと。
カットは二日前にしたばかり。
クラスの子達に馬鹿にされないよう、雑誌の切り抜きを片手に美容室で切ってもらった。
モテたい訳じゃないけど、見た目も大事。
ダサい格好していたら、バカにされてしまう。
「1人で来たのかい?初日位ご両親のどちらかがついてきても良かったのに」
そう声をかけてきたのは、僕のクラスの担任である丸山先生。
「仕事が忙しくて予定が合わなかったみたいです」
と軽く笑ってごまかしたけど、それは嘘。
父は本当に仕事が休めなかったけど、母は心配性だから連れて来たくなかった。
昨日までは学校へついていく気満々だった母だけど、
「大丈夫。僕はこの学校では素敵な学園生活を送れるから、家で待っていて」
そう言い、付いていくる事を断った。
教室まで続く廊下では、先生と他愛のない話を続けた。
教師と良好な関係を築く事も、僕にとっては大切な事なんだ。
「受験や就職を控えた高校三年生の大事な時期に転校って大変だね。
以前いた学校は偏差値が高かったみたいだけどー・・・・・」
「別に大変じゃないです。どこにいたって本人次第なんじゃないですか?
本人が頑張れば何処に居たってー・・・・」
「そうだな。ごめんごめん。折角やる気があるのに変な事言っちゃって」
「いえ僕もムキになってしまってすみません」
マズイ!先生とは良好な関係を築くことは大切って心に誓っていたはずなのに、何やっているんだ僕は。
苦笑いを浮かべながらペコペコ頭を下げると、先生は笑いながら流してくれた。
高校三年生。
もうすぐ成人!大人の仲間入り!・・・・・とは言っても、やはりまだ子供か。
やっぱり先生って存在は、子供の扱いに慣れているんだな。
・・・・・・他愛のない会話だったはずなのに。
どうして俺は今声を挙げてムキになって反論した・・・?
「丸山です。一年間よろしくお願いします」
先生と共に教室へ入り、そつなく最初の挨拶を済ませた。
クラス全体を見回す。
派手な子。大人しそうな子。賢そうな子。
色んなタイプの子が居た。
そんな教室で僕の席は、転校生といえば定番の一番後ろの端の席。
そこまでスタスタ歩き、となりの席に座る子に挨拶をしようと顔を覗く。
となりの席はまた女の子みたいだ。
髪の毛が長くて伏せ目がち、外見は昔ホラー映画で観たような、なんとなくクラスのカーストの中でも底辺っぽい雰囲気がある子。
でも僕は外見なんて一切気にしない。
だってこの学校では毎日楽しくすごしたいから!
カーストが上だろうが下だろうが、僕は誰に対しても平等に接するって決めたんだ。
「初めまして。僕丸山って言います。よろしく」
「・・・・・」
挨拶をするが返事はない。
無口な子なんだろうか?それともー・・・・・・。
朝礼が終わり担任が教室から出て行った途端、数名の女子が僕の席へやってくると腕を掴み無言で廊下へと引っ張っていった。
派手な見た目。
恐らくこの子達はこのクラスの中で、カースト上位に居る子達だろう。
「えっ?!何???!!!」
「いいから!!」
廊下へ出て教室の扉を閉めると、女子達は互いの目を見合わせ何か合図をする。
しばらくそれが続いた後、1人の女子が口を開いた。
「早川とは関わらない方がいいよ。アイツまじヤバイから」
「折角丸山君カッコイイのに、あんなのと関わったら皆から仲間はずれにされちゃう」
・・・・なるほど。
となりの席に座る子の名前は 早川さん っていうんだ。
そして今早川さんは仲間はずれにされている・・・っと。
「わからない事があったら、うちらに何でも聞いて!」
「もう先生来ちゃうから戻らないと・・・・!」
女子たちは自分達の言いたいことをいうと教室へと戻っていった。
うちらに何でも聞いて!・・・・・ねぇ・・・・。
そうやって外堀を埋めて、皆で早川さんを仲間はずれにしていった・・・・・?
僕も教室へ戻った。
クラス全員が僕の事を見る。
転校生で初日だと皆からの注目度半端ね~。
ん?早川さんも僕の事見てた・・・・?
すぐにそらされたけど、目があった気がする。
気のせいか?
それとも廊下での僕たちの会話が聞こえていた・・・・?
まだ僕はこのクラスについて何も知らないしわからない。
だけど決めているんだ。
僕はこの学校生活を楽しく充実した物のするって。
誰かから聞いた情報なんていらない。
僕は自分の目と耳で 真実 がみたい。
流されるだけの弱い俺なんて、もういらないんだ。
後悔したくないから。
くだらない 仲間はずれ も カースト制度 も僕には不要な物なんだ。
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