まるでインスタントラーメン
中学12年生
第1話
蓋を開け、お湯を注ぎ、出来上がるまで時間を潰す。3分あるいは5分経った後、蓋を再び開けて、中身を食べる。それがインスタントラーメン。
あくまで、サブ。それは主食にはなりえない。あくまでサブ、だったはずだ。
ブラウザを開け、目を通し、次回が更新されるまで時間を潰す。それが更新されれば、再びブラウザを開き、文字を目で追う。それはまるで、インスタントラーメン。
あくまで、サブ。それは主食にはなりえない。あくまで……。
これも時代の潮流が。あるいは技術の暴走か。それとも、これが人間本来の姿だったか。
それを作るものは、材料を集めて加工し完成させるものは、人ではなく機械なのか。所詮、それらは大量生産品のうちの1つなのか。
生活習慣の変化による価値観の推移。需要の偏りによる生産の偏り。目の前の抽象化された数字から得ることができるのは、一体どのような快楽だというのか。
蓋を開け、お湯を注ぎ、出来上がるまで時間を潰す。それはまるでインスタントラーメン。
あぁ、価値とはそれほど高尚なものか。そこまでして追い求めなければならないものか。競争の渦中で溺れる我々は、ただ見物人の気まぐれで優劣を測られるだけの玩具なのか。
あぁ、カップラーメン。君は、君のために生きるべきだ。君の安さ、手軽さ、そ
して手に入りやすさは、君の兄弟のためのものなのだろう。自らチープになることによって、仲間の相対的価値を上昇させているのだろう。
そして、主食に侵食する形で、我々をサブの連鎖へと引きずり込んでいく。しかし、実はそれは、君の望んだ事じゃない。僕は知ってるよ。本当は、君も立派な主食に生まれ変わりたいのだということ。そしてそのためには、眼前の報酬や名誉を捨てなければならないということも。
僕は、君の事が好きなんだ。確かに、君はグルメ評論家を唸らせる美味さを持ち合わせてい無い。しかし、君には人をグルメに引っ張っていける強さがある。弱き者や初学者を導き、その道へと覚醒させるほどの強さがあるんだよ。
蓋を開け、お湯を注ぎ、出来上がるまで時間を潰す。そんなカップラーメンは、食料供給が届かない被災地の人々を、心と体双方から温めた立派な文化食さ。
まるでインスタントラーメン 中学12年生 @juuninennsei
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