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あるまたく

。目覚めと取り込み

 フォン


 暗い室内。中央台座に置かれた立方体の金属箱から高い音が鳴った。連動して音を鳴らし始めた他の箱もある。壁面に設置されているモニター類は、球状の物体の状態を映し出した。


『おはようございます、今日は記念日です。資源の残りは1000、廃材は50と報告します。行動を選択してください。』


 機械音声で残存資源の報告がなされた。何をするべきか、を示してくれるらしい。

 モニターに映し出された選択には、実験場ちきゅう開発コロニー、そして探索と表示されていた。画面上部にはホームと書かれていた。

 隣のモニターには、球状の物体わたしが映し出されている。


 主砲:92式試作砲台 1門

 副砲:アーム(壊れかけ) 2本

 力炉:原子炉A

 状態:正常



 ふむ、状態は正常らしい。アームを動かしてみると、違和感を覚えるが致命的な問題では無いだろう。モニター内の球状の物体も私と同じように動いた。

 主砲は目標を補足次第、撃つようだ。着弾させようにも標的が無いな、と考えた時、選択肢の実験場の項に三角形の矢印 ▷ が現れた。選べ、という事らしい。移動することにした。


『実験場へようこそ。ここでは探索データから危険な存在を模倣し、実力に応じた再戦闘シミュレートをする事が出来ます。少量の廃材も入手可能です。』


 危険だそうだ。一番弱い存在であれば問題ないだろうか。実験場と言っても、モニター画面内で移動が終わるらしい。私は全く動いていない。

 選択肢は戦闘開始と戻る、の2つだった。戦闘開始を選ぶと、確認するかのように機械音声が聞こえ、選択肢が出た。


『戦闘を開始します。戦闘経過を表示しますか?』


 YES、NOの二択らしい。初回なのでYESを選ぶ。


『戦闘経過を表示します。実験生物N1を配置しました。主砲で撃破可能です。』


 画面が切り替わった時、「肌色の柔らかそうな外皮の生物じっけんせいぶつ」が立っていた。

 球状の物体が主砲を旋回させ、標的に向ける。N1は何かを喚いているが、逃げようとしないようだ。武器を持っていないようだが、勝てると思っているのだろうか。

 主砲から発射された砲弾は、N1を四散させた。ピロン、という軽い音とともに廃材1を獲得した旨が知らされた。これで終わりらしい。


『戦闘が終了しました。次の戦闘を開始しますか?』


 行けるところまで行ってみよう。再度、戦闘経過を問うてきたのでNOを選択した。

 廃材2を獲得したらしい。


『勝利可能な戦闘を終了しました。次の戦闘を開始するには、開発を進めてください。』


 数回、結果を見ていると、次の戦闘に進まなくなった。どうやら開発が必要らしい。

 実験場の選択肢から戻るを選び、ホームから開発を選択する。






 画面が切り替わり、製造工場らしき建物が表示された。選択肢は製造、強化、分解の3つ。

 とりあえず一つ一つ押してみる事にした。製造、っと。


『ここは製造部門です。主砲、副砲、力炉の製造および保管を行います。修理や強化、合成については強化を選択してください。製造可能武器を表示しますか?』


 製造可能武器があるのか。表示させてみよう。



 主砲:92式試作砲台

 副砲:アーム




 主砲は、何がなのだろう。小さな文字で、集弾性の向上を試みた、とだけ書かれていた。詳しいレビューを頼む。まぁ、上がっているのだろう。

 副砲はアームだ。壊れかけではないのか。造っておこう。


「―――!」

『副砲:アーム を製造しました。交換後、アーム(壊れかけ)を分解しますか?』


 保管しておくのは無駄なのかな? と考えると、機械音声が『いつでも分解可能です。保管上限は1000、現在0です。』と説明してくれた。保管しておこう。



『資源が少なくなっています。探索し、補充してください。』


 資源が減っている? あ、950になっているな。アームを作ったからか。

 探索すると、資源が手に入るのかな?


『行先により、獲得可能な資源が異なります。安定した場所では、比較的多く獲得できます。』


 少し、はぐらかされているような言い方だが、他に出来る事も無い。

 ホームに戻って、探索を選んでみよう。





『探索を行います。現在2カ所の探索が可能です。行先を選んでください。』


 画面が切り替わり、黒い画面に青色と白色の球ちきゅう灰色の球つきが映っている。

 現在地は、青と白の球の近くだ。灰球の上に三角形 ▽ が表示されている。ここでも選べ、と言いたいらしい。


『経過を表示しますか? 探索場所により、表示に時間を要する場合があります。』


 他に選択する項目が無いだろうに、っと。

 軽い気持ちで選択すると、警告音とともに赤い囲いのメッセージが表示された。




――――――――――――――――――――――――


         ※ 警告 ※


 過度な描写が表示されます。よろしいですか?


――――――――――――――――――――――――



 ご丁寧にもYES(1/5)と表示されている。あと4回押すらしい。

 私は、ゆっくりと押していった。

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